◆知識の習得から実践へ
農林中金の太田実常務はJAの信用事業担当役員に求められる能力として▽JAバンクを取り巻く環境変化を把握する「金融業務の専門知識」▽JAの強みと弱みを分析した「ビジョンと経営戦略を策定できるスキル」▽リーダーとして役職員を動機付けできる「組織内でのコミュニケーションスキル」、の3つを挙げた。
この研修ではこうした能力を養うために、銀行監督の考え方や経済の見方、コミュニケーション技術などのプログラムを重点的に用意した。
受講人数を1班(クラス)25名程度に絞ったことも特徴で1班ごとに3日間のプログラムを年に3回受講する。この日受講した第1班は、11月中旬に第2回、来年2月に第3回を受講することになっている。
講義中心ではなくグループ討議や実践に活かせるワークも取り入れており、受講した内容を自らのJAで実践し、そこから得られた課題を次回に提出し討議や指導の材料とするななど「知識の取得から実践へ、PDCAサイクルの導入を重視する」(太田常務)という研修だ。
◆事業発展には理念が重要
17日の研修ではJA伊達みらい(福島県)の舟山健一常務が講演した。
舟山常務はJAの役割は「組合員への最大の奉仕。生命・財産を守るのがJAであり、そのために良い商品と最高のサービスを提供することにJAの存在意義がある」と強調し、こうした理念と理想を「何回も語り続けることが大事だ」と述べた。 また▽数字だけを作ろうするから数字が上がらない。その前に組合員の何に貢献しようとするのかを考えることが大切、▽組合員の目の前に机を置いて仕事をする、▽30支店は昔の村の単位。JAの活動づくりの拠点である、など日頃から職員に強調していることを紹介した。
具体的な事業推進体制では▽毎日の店舗実績表作成(日々管理)、▽PDCAサイクル表の作成、▽月例検討会などを実践しているという。
舟山常務は「小さなことの積み重ねでしか変革はできない。自分の守備範囲でしっかり変革を起こすことが大事だと職員に言っています」などと話していた。
人づくりはJAグループの大きな課題。信用事業を含めJAは金融庁検査の対象となるなどの環境変化もある。今回の研修期間は合計で9日間となるが、太田常務よるとドイツの協同組合は金融事業の役員研修に14週間、フランスも10週間と時間をかけているという。地域に密着した金融機関としての役割発揮のための人材育成が期待される。
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