◆厳しい利用者の評価
農林中央金庫は平成22年から6県9JAでJAの貯金者を対象にしたCS(顧客満足度)調査を実施してきた。その結果をもとに課題を解決するための実践策として開発されたのがJAバンクCS改善プログラムである。
このCS調査で分かったことは▽高齢者はJAに対して「なじみ」があるから我慢しているが、正組合員といえども職員の接遇に対する評価は厳しい、▽JAに対して「なじみ」の薄い若年層をJAは十分に取り込めていない、▽員外利用者は職員の接遇について正組合員以上に厳しい評価。さらに「自分が気にかけてもらっていない。よく知ってもらっていない」という評価もある、などだという。
一方、職員への意識調査で明らかになったのは▽窓口、渉外担当者ともに顧客主義の意識は高い、▽しかし、商品セールスなどのスキル面や、人材育成面に課題意識を持っている、▽管理職も担当者との個別ミーティングや具体的な改善目標の合意など、部下のマネジメントに課題意識を持っている、▽一方で支店内の「横の壁(=窓口担当と渉外担当)」と「縦の壁(担当者と管理職)」がある、などだ。
◆CS向上を「本業」にする
説明会ではJAへのCS調査をもとにCS改善プログラムを開発したマッキンゼー・アンド・カンパニーの田中正朗氏がCS改善プログラム実践の必要性やこの取り組みがめざすことなどを説明した。 田中氏は組織基盤の高齢化が進むなか「現在、JAバンクを“なじみ”として利用している正組合員だけでなく、若い正組合員、准組合員、員外利用者を取り込んでいかなければ信用事業の収益源を失う」と話し、「顧客目線」で業務を見直す具体的な取り組みが不可欠だとした。
それがこのCS改善プログラムの実践だが、田中氏は「この活動はCS向上のための業務を既存業務に新たに加えたり、決められた活動をこなしていくことではない」と指摘し、めざす活動は▽CS向上をめざして既存業務のやり方を変える、▽自分たちで議論し決定した行動を実行する、▽職員同士、管理職、本支店のすべてが一体となって進める、ことだと強調した。
具体的には(1)渉外、窓口の職員全員が抱える課題を洗い出し具体的な改善策を議論する改善ミーティング、(2)管理職と職員が1対1で話し合うコーチング、(3)1日の対応事例など翌日に活かすための日次振り返りミーティング、(4)窓口と渉外との壁を取り払いコミュニケーションを円滑にするための窓口・渉外連絡ノートの4つが柱。
この取り組みをJAで定着させるためJAと信連、農林中金にCSサポーターを配置して支援を行う。
説明会で強調されたのはこのプログラムは「職員自身が自ら考え動き出すことをめざしたもの」だということ。 いち早く取り組みを始めているJAさがみの長嶋喜満組合長は紹介VTRのなかで「CS調査によって組合員の子供世代や准組合員はJAバンクと距離があることを突き付けられた。JAブランドへの甘えが原因。これからは自分たちで新たなブランドを創っていくんだ、という意識を持つことが重要」などと語っていた。
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