このシンポジウムは日本人の野菜や果物の摂取量が減少するなか、とくに10〜20代の摂取量が低いことから、学生に国産青果物の消費を促すことをねらい、今年で4回目を迎える。参加したのは生物資源学類の1年生を中心に約250人。
JA全農園芸農産部総合課の神林幸宏課長は「日本人の青果物の1日あたりの摂取量は約280gなのに対して韓国は580g。食生活を見直すきっかけになっていただければ」とあいさつした。
◆食生活を見直す第一歩に
シンポジウムでは「考えよう、私たちの“食と農”の現在と未来」をテーマにパネルディスカッションを行い、自らの食生活のことから食料自給率、TPPといった農業が抱える課題についてまで幅広く考える場となった。
パネラーには生物資源学類の学生を代表し、斉藤奈央子さん(1年)、宅見秋穂さん(1年)、原理紗さん(1年)、宮崎裕貴さん(2年)の4人と県内の女性生産者2人、JA全農の神林課長、吉田滋樹生命環境系准教授、医学博士の林芙美氏の9人が登壇。学生には○×プレートが配られ、投げかけられた質問に○×で答える学生参加型ですすめられた。
前半の話題の中心は自らの食生活について。「食生活に自信がある」という質問に「○」と答えた学生はまばら。特に1人暮らしの学生は「野菜を調理する手間から出来合いのものを買ってしまう。食べたいものを食べてしまう」など、環境も要因にあるようだ。
一方で、自宅通いの学生は「野菜を毎日摂っている」、「しっかりバランスがとれていると実感している」といった声が多かった。
また、1日に必要とする野菜摂取目標量は350gとされているが、それがどのくらいなのかを実感しにくいとの声も。これに対し林氏は、学食の小鉢5つ分が1日に必要な野菜の量の目安とアドバイスし、「今は食生活に対しての優先順位は低いかもしれないが今の積み重ねが将来につながる。自分の力でバランスよい食生活を送るために、野菜を全く食べていない人は野菜ジュースやミカン一個から、などできることから工夫してみてほしい」と述べた。
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上:このシンポは「生物資源の現代の課題」をテーマとした講座の一環。学期末最後の講義でもあった
下:「食生活に自信があるか」という質問に×を挙げる学生が圧倒的に多かった
◆農業問題についても意見交換
後半は農業が直面する課題をテーマに考えた。
食料自給率に対して説明できるという学生は少なかったが、自給率が低いと起きる問題について「他国から輸出が止められてしまった場合どうするのかという課題がある」「外交に気を使わないといけない」といった発言があった。ふだんの買い物でも「新鮮で安心だから国産を選ぶ」(宅見さん)、「地産地消の概念を中学で学び共感。日本経済に還元する意味でも国産野菜を選ぶ」(原さん)という意見も。
昨年のシンポジウムをきっかけに農業に興味を持ち、同学類の農業サークル「のうりんむら」に参加したという宮崎さんは「農家とふれあうなかで愛情を持って育てていることを知った」と国産を選ぶ理由を話した。神林課長は自給率の低下がもたらすリスクは「食べたいものが好きに食べられなくなるだけでなく、日本の田園風景や水利機能を失うことにもなる」と多面的機能への影響を学生に強調した。
TPPについても「説明できる」という学生は少なかったが、「今でさえ農作物は安いものが入って国産品が押されている状況。それ以外にサービスや政府調達など他産業へも影響し、地元密着型の企業が潰れてしまうと思う」と反対意見を述べる学生もいた。
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パネラーとして参加した生物資源学類の学生4人
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