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今年の農林水産研究成果10大トピックスを発表 セシウム除去技術など

 農水省の農林水産技術会議は12月13日、平成24年の農林水産研究成果10大トピックスを発表した。

 平成24年度の10大トピックスに選ばれた研究成果は畜産関連3件、イネ2件、農機2件で、そのほかはトマト、肥料、除染が1件ずつだった。研究機関は農研機構が7件で最多(共同研究含む)。
 それぞれの研究テーマと概要は次の通り。

◆イネ・高温での乳白粒発生原因を解明(農研機構、新潟大学、理化学研究所)

 イネの登熟期に高温になると発生する米の乳白粒の原因は、デンプン分解酵素αアミラーゼが高温だと活性化するためだと解明した。乳白粒の発生原因を遺伝子レベルで解明した研究で、今後の高温登熟耐性品種の開発につながると期待される。


◆イネ・低カドミウムコシヒカリの原因遺伝子を発見(農業環境技術研究所、東京大学)

 カドミウムをほとんど吸収しないコシヒカリを開発し、その原因が鉄、マンガン、カドミウムなどを土壌から吸収するタンパク質の遺伝子の変異であることを解明した。


◆トマト・全ゲノム解読に成功(かずさDNA研究所、農研機構)

 トマトのゲノム中には約3万5000個の遺伝子があるが、これをすべて解読した。世界で初めての研究成果。今後の品種改良や新しい栽培技術の開発が期待される。


◆豚・免疫不全ブタを開発(農業生物資源研究所、(株)プライムテック、理化学研究所)

 遺伝子組換えと体細胞クローン技術により、免疫機能がなくなったブタを開発。世界初の技術で、この「免疫不全ブタ」を活用して、ヒト組織や臓器の再生、新しい薬の研究が進むと期待される。


◆豚・ブタのゲノムと遺伝子配列を解読(農業生物資源研究所、農林水産・食品産業技術振興協会、国際ブタゲノム解読コンソーシアム)

 約25億塩基あるブタゲノムの塩基配列の9割以上を解読し、約2万5000個の遺伝子があることを解明した。ブタの肉質・抗病性・繁殖性などの改良を加速させ、臓器移植などブタを医療用モデル動物として利用することが進むと期待される。


◆牛・分娩後に胎盤を剥離排出するシグナル物質を発見(農研機構、北海道立総合研究機構、(株)共立製薬)

 牛の胎盤を剥離排出するシグナル物質を世界で初めて発見した。子牛生存率の向上、畜産農家の労働負担軽減につながると期待される。


◆除染・汚染された農地土壌からセシウムを99%除去(農研機構、国際農林水産業研究センター、太平洋セメント(株)、日揮(株)、東京電力(株))

 反応促進剤を加えた熱処理で、放射性セシウムによって汚染された土壌を土工資材に利用できるレベルまで除去する技術を開発した。


◆農機・青刈りトウモロコシ用高速不耕起播種機(農研機構、アグリテクノ矢崎(株))

 高速作業が可能な青刈りトウモロコシ用不耕起播種機を開発した。飼料用トウモロコシ栽培の省力化につながると期待される。平成24年度中に市販する予定。


◆農機・果樹用新型スピードスプレヤー(農研機構)

 棚面に近づけて散布できる昇降型ノズル管支持装置によって、エンジンや送風機の回転数を下げて薬剤散布ができる棚栽培果樹用の新型スピードスプレヤーを開発した。従来機より農薬のドリフトや騒音が少ないため、都市近郊型栽培向け。


◆肥料・有機質資源から無機肥料成分を回収(農研機構)

 食品残さや畜産廃棄物などの有機質資源から、微生物を使って短期間に無機肥料成分を回収する技術を開発した。製造時にエネルギーを使わない技術であるため、CO2抑制などに効果があるとしている。

 10大トピックスは、1年間に発表された大学や官民の研究機関による農林水産研究成果のうち、内容に優れ、社会的関心が高いものを、農業関係専門紙・誌29社などの協力の下、毎年選定している。


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