◆食品伸びず苦戦をする量販店
図1は売上高の推移をまとめたもので、図2はそのうち食品売上高の推移をみたものだ。
図1の売上高を見てまず気がつくことは、1月、2月は各業態とも前年水準を上回る売上高を確保していることだろう。
3月から4月に百貨店と外食の売上が大きく前年を上回っているのは、前年(2011年)3月の東日本大震災と東電原発事故の影響をもっとも大きく受け、売上を大幅に落とした(3月の百貨店前年同月比85.3%、外食同89.7%)反動だといえる。しかし、5月には前年を1.5ポイント以上下回る結果となっている。
量販店も1月、2月は前年を上回る実績を上げたが3月以降は前年を下回り、図でみられるように、この5業態のなかでもっとも苦戦を強いられているといえる。
量販店の場合、図2のように全売上高の6割強を占める食料品の売上が伸び悩んでいることの影響が大きいのではないだろうか。
食料品のなかでも、「惣菜」が1〜3月は前年水準を上回っていたが、4月、5月はイベント日には売れたが、「イベント日以外」で伸びず前年を下回ったこと。原発事故による放射能問題で畜産品や水産品が低迷していることの影響が大きいと推測できる。
しかし、売上高の87〜88%を食料品に依存している食品スーパー(SM)は、3月はわずかに前年水準を下回ったが、それ以外は確実に前年水準を上回る実績を残している。
SMの食品部門別売上推移をみると、全売上の3分の1を占める生鮮3部門(青果、水産、畜産)の実績は、1月以降(前年同月比)、100.8%、103.5%、102.3%、101.4%、102.0%と確実に前年を上回っている。しかも、放射能問題で畜産が毎月前年割れをしているなかでだ。
さらに売上高の9%前後を占める「惣菜」も毎月確実に前年実績を上回る実績を上げていることも注目される。
この青果を中心とした生鮮食品と惣菜がSMの経営を支えているといえるのではないだろうか。
そして図1、図2をみてわかるように、もっとも着実に売上高を伸ばしているのがCVS(コンビニエンス・ストア)だ。
(CVSの「日配食品」は、おのぎりや弁当など「米飯類」、パン、惣菜、漬物、野菜、青果、調理麺、牛乳、生菓子、サラダ、デザートなどとなっている。また「加工食品」は、菓子類、飲料、調味料、嗜好品、乾物、缶・瓶詰類、レトルト食品、インスタント食品などとなっている)
すでにさまざまに報道もされているが、東日本大震災以降、いままで若い人たちの店と見られていたCVSが、その利便性・簡便性から主婦や高齢者層にも見直され、CVS側もそうした顧客ニーズに合わせた品揃えに力を入れるという相乗効果で大きく伸張している。
CVSの売上に占める食品の割合は、日配と加工を合わせて6割だが、なかでもおにぎりや弁当などの「米飯類」、パンや手ごろな価格で買える個食サラダや惣菜などの「日配食品」が、10%前後伸びていることが、その「相乗効果」の表れだといえるのではないだろうか。
またアルコール類やソフトドリンクやインスタント食品などの「加工食品」も確実に4〜5%の伸びを見せていることからも分かるように、日常的に必要なものは、「身近に」「すぐ側に」あるCVSへさらにシフトしていく傾向が強まっていくのではないだろうか。
地域に密着し地域住民のニーズに応えることで、支持を集めているSMと利便性・簡便性で主婦や高齢者にも支持を広げているCVSに、量販店などがどう対抗していくのか。小型店の出店をすすめたりしているが、これからの小売業界には一波乱も二波乱もあるのではないだろうか。
そうしたなかで、何をどう提供していくことが、産地としての活性化になるのか。それを見極めることがいままで以上に大事になってきていると思われる。
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