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新たな協同の創造とJA共済事業
JA共済事業特集

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【JA共済大賞に輝く3JAに聞く】
地域密着を基本に信頼関係で実績をあげる

JA遠州中央

◆共済は農協らしさ発揮の事業 JA遠州中央本店(静岡県磐田市)  平成4年に静岡...

◆共済は農協らしさ発揮の事業

JA遠州中央本店(静岡県磐田市)
JA遠州中央本店
(静岡県磐田市)

 平成4年に静岡県の磐周地域12JAが合併したJA遠州中央は東西20km、南北80kmと遠州灘から長野県境の山間部までが管内だ。JAでは事業を磐田、袋井、天竜の3地域に区分けをして展開している。
 なかでも天竜は中山間地域で人口減少も進む。大賞受賞について長谷川鍵一経営管理委員会会長は「過疎化の進む地域を抱えるなか、従来型の一斉推進ではなく地域密着のLA中心の恒常推進の成果だと思います」と語る。
 藤原登臣夫代表理事理事長によると、3地域それぞれの統括本部長が中心となって地域特性をふまえた事業戦略を立て組合員・利用者の期待に応える取り組みをしてきているが、共済事業で今回、輝かしい実績を上げたのは「JA共済の良さを理解していただいたからではないか。熾烈な競争のなか、身近なLAによる相談機能の発揮など、JAらしい事業だという評価が実績に結びついたと思う」と話す。
 管内は米を中心にお茶、トマト、イチゴ、メロンなどのほか、チンゲンサイなど中国野菜の施設園芸やレタス栽培も盛んだ。農産物価格の低迷でJAの販売高は減少しているが、最近はファーマーズ・マーケット「いわた南部どっさり市」と6つの直売所で年間11億円を売り上げるなど、地産地消で地域農業振興を図る。今年も新たな出店が予定されている。
 村松多加次常務理事は「JAの役割は組合員の営農と生活の支援だが、生活設計や保障体制がなければ営農を支えられない。共済事業はそれを相互扶助の精神で行うもっとも農協らしい事業だという位置づけはJAとしても基本に据えている」と強調する。
 そのうえで3Q訪問活動については「まさに組合員の営農と生活を成り立たせるよう支援するもの。LAが中心となってひと・いえ・くるまの保障点検と提案、相談機能を発揮することは今後の基本となる」と話す。

◆事業全体に目配りするLA専任管理者

長谷川鍵一 経営管理委員会会長
長谷川鍵一
経営管理委員会会長
藤原登臣夫 代表理事理事長
藤原登臣夫
代表理事理事長
石川美恵子 代表理事専務
石川美恵子
代表理事専務
村松多加次 常務理事
村松多加次
常務理事

 推進体制はLAと共済クラブ員を中心とした恒常推進。
 共済クラブ員は金融共済係長・主任、金融渉外担当者と自主的に申し出た職員で構成する。LAは94名、共済クラブ員は133名の体制だ。
 LAは48の支店に配属されているが11地区を単位として地区ごとにLA推進リーダーを選定し目標管理など他のLAの支援、指導の役割も果たす。
 LAのほとんどは専任LAだが、中山間地域の6支店に配属された9人のLAは金融渉外も兼ねる複合LAとし効率化を図っている。
 一方、共済クラブ員は基本的に推進リーダーとして位置づけられ、自ら契約を締結するだけでなくLAへの支援、同行推進も行う。
 また、営農経済職員など共済事業以外の職員も部門別、キャリア別に情報紹介目標を設定し、LAや共済クラブ員のサポートによって推進を図ることにしている。専任LA、複合LA、共済クラブ員もそれぞれ目標設定基準は異なるが、このように基本的には全職員が共済推進目標を持つ。LA、共済クラブ員以外の職員が挙げる実績は全体の8%程度を占め決して少なくはない。
 毎年度の推進目標は3ブロックに振り分けられそこから「取りまとめ支店」、「一般支店」へと調整のうえ目標が提示される。進捗管理は支店ごとに行う支店完結型。この方式で10年連続全支店目標を達成してきた。山本忍共済部長は「支店長のリーダーシップが期待されている」と話す。
 もっとも本店のバックアップはもちろんある。そのキーマンが共済推進課に所属する5人のLA専任管理者だ。
 1人約20人のLAを目標達成のために支援、指導するが高田敏久共済推進課長は「単に推進を働きかけるだけでなく、JAとしての共済事業の方向性を現場に伝えるという重要な役割も求められる」という。
 たとえば、次世代対策、ニューパートナーの獲得も共済事業の大きな課題だ。同JAでは純新規契約が締結できた場合には、保障額とは別の基準で推進者の取り組みを評価するなどの工夫をしたほか、事故処理担当者やスマイルサポーターによる自動車共済のカウンターセールスにも力を入れた。こうした課題への取り組みを研修などを通じてLAに周知していくこともLA専任管理者の役割だという。

◆日頃の信頼関係あってこそ

 もちろん3Q訪問活動も積極的に進めている。
 「3Q訪問活動によって間違いなくLAの活動量は増えた。推進ではなく『JAの職員が来てくれた』と思ってもらえればそれがCSのベースになる。まずはどれだけ足を運んでいるか。そしてそこから何をするかがLAの実力ということになると思う」と高田共済推進課長。
 同JAでも初年度は手探りで始め、2年目にLAと共済クラブ員が本格的に取り組みをし、20年度にはスマイルサポーターの窓口での情報把握も3Q訪問活動と同様の位置づけとしようというまでにグレードアップしてきた。「最初から長い期間での取り組みとして全国的に提唱されたことはわれわれ現場にとっても取り組みやすかった」という。
 山本共済部長は「自分たちに合った3Q訪問活動を考える時期に来たと考えている。たとえば12月までは推進活動を行い、その後に時間をかけて3Q訪問に取り組みそれを次年度の推進対策にもつなげるなど、それぞれに工夫があっていい。要は渉外活動のいちばんの基本と考えるということです」と話す。
 石川美惠子代表理事専務は「JAの事業は地域密着型。店舗でも顔見知りの職員がいつもいれば自分たちの店だと感じてもらえる。共済事業はまさに常日頃の信頼関係があってこそ成り立つものと考えています」と話している。

JAの概要(平成20年度末現在)

●地域の特徴:都市・中山間地混在地帯
●組合員数(正+准):4万3238人
●職員数:978人(内正職員787人)
●推進形態:LA・クラブ員を中心とした恒常推進[共済部担当職員数237名、うちLA94名(うち金融複合9名)]
●共済事業実績:○保有契約高15万547件 /2兆1593億円○生命共済新契約高6419件/996億円○建物更生共済新契約高7662件/1059億円○自動車共済新契約高4万1024件/17億9727万円○自賠責共済新契約高1万8369件/3億4936万円
●信用事業:貯金5019億円/貸付金1246億円
●購買事業:58億円
●販売事業:98億円
●主な農産物:米、お茶、園芸、中国野菜

(2009.05.18)