民進党の綱領が泣いている2016年4月11日
TPPの国会審議が、いよいよ本格的に始まった。だが、早速つまずいている。野党第1党である民進党は、どんな姿勢で審議するのだろうか。
山尾志桜里政調会長の、衆議院本会議での代表質問を聞いてみよう。
民進党は、TPPには総論として賛成だが、このTPPには反対だ、と言いたいようだ。これでは、TPPは夏の参院選で、2大政党の争点にならない。農村の人たちは、2大政党のどちらにも投票できない。第3党に投票するしかない。もしも、そうなれば自民党の1党多弱の政治が続き、農村の疲弊は深まるばかりだ。
しかし、そうはなるまい。TPPに対する農村の怒りは激しい。農村の実情を知っている民進党議員は、また、働く農業者の立場に立つ民進党議員は、党中央に対して、TPP反対の旗を鮮明に掲げるように要求するだろう。
山尾会長のTPPについての質問の冒頭部分を聞いてみよう。次のように言っている。
「TPPを含む高いレベルの経済連携を進めていくことは、日本の成長をさらに押し進めるため、必要な枠組みであることは否定いたしません。しかし、問題は中味、何が守られ、何を勝ち取ったか、ということであります。」(資料は本文の下)
この発言は前半で、TPPは日本の成長に必要な枠組みだ、と言っている。この考えは、政府の、したがって、自民党の考えと全く同じである。ここに大問題がある。
それに続く後半では、TPP交渉の結果、どれ程の妥協をしたか、を問題にしている。民進党の政権だったら、これ程の妥協はしなかった、と言いたいのだろう。
TPPに対する怒りに燃えている農業者が、これをどう聞くだろうか。
◇
TPPは高いレベルの経済連携だというが、それは何を意味するか。それは、物品の輸出入については、例外なき関税撤廃である。
22年前のガット合意では、関税以外の全ての輸入規制を撤廃し、関税だけが残った。こんどのTPPは、残っている全ての関税の、例外なき撤廃である。これで完全な輸入自由化になる。それがTPPの理念である。市場原理主義の極致である。
このTPPの理念を、日本の成長に必要、として肯定すれば、農産物の関税は、全て撤廃するまで執拗に要求される。
◇
輸入自由化は、戦後の日本農業を衰退させた根本原因だが、民進党は完全な輸入自由化によって、日本農業を再起できないまでに壊滅させようと考えているのだろうか。それが同党の綱領でいう働く者の立場に立った考えなのだろうか。それでは、自民党と同じだ。
この考えは、一部の大企業とその労組の立場に立って、日本の農業と、働く農業者を犠牲にする考えとしか思えない。大企業が儲かれば、その利益は働く者の上に自然に滴り落ちるという欺瞞の理論を、未だに信じているようだ。それでは、自民党と同じだ。立派な綱領が泣く。
◇
民進党が、自民党と口を揃えてTPPの理念を賛美するのは自由だ。
いっさいの輸入規制をなくした完全な自由貿易はいいことだ、と賛美するが、しかし、それは現実を見ない幻想にすぎない。
地球上に国家が存在するかぎり、完全な貿易自由化など、あり得ない。自国の国益のために、輸出規制もするし、輸入規制もする。輸出禁止もするし、輸入禁止もする。そうして、自国民が苦境に陥ることを阻止する。それは国家主権の重要な一部である。この主権を他国は侵害できない。
◇
民進党に期待するのは、先ず、自由貿易はいいことだ、という幻想を捨てることだ。そうして、現実を見据え、TPPが日本農業を壊滅させ、働く者、ことに働く農業者を苦境に陥れることに、きっぱりと反対することだ。
反TPPで野党を糾合し、TPPの批准に反対すれば、夏の参院選で圧勝できるだろう。その後、政権を奪還してTPP交渉から離脱し、市場原理主義農政から決別して、働く農業者の立場に立った農政に転換できるだろう。
民進党に期待するのは、このことである。
(2016.04.11)
山尾志桜里政調会長の代表質問の録画は...ココ (大きな音が出ます)
(前回 民進党のあいまいなTPP政策)
(前々回 飼料米倍増を邪魔するMA米)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】冬春ピーマン「斑点病」、冬春トマト「すすかび病」県内で多発 宮崎県2025年1月27日
-
鳥インフル 米バージニア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月27日
-
「農林水産業と食文化の発展は世界をもっと豊かにつなぐ」大阪・関西万博に出展 農水省2025年1月27日
-
「サステナアワード2024」各賞が決定 農水省2025年1月27日
-
選手と接する時間を増やす 常に目を配り対話を行う 柔道男子の鈴木桂治監督が語る人材育成【全中教育部・オンラインJAアカデミー】2025年1月27日
-
JA全農協賛「全日本卓球選手権大会」男女シングルス日本一が決定2025年1月27日
-
【今川直人・農協の核心】協同から協働へ2025年1月27日
-
三重県オリジナルイチゴ「うた乃」フェア みのるダイニング名古屋店で開催 JA全農2025年1月27日
-
JA全農協賛「全日本卓球選手権大会」ジュニアのシングルス日本一が決定2025年1月27日
-
「だいすきシリーズ」から使いやすい容量、保管しやすいサイズのmini(ミニサイズ)新発売 マルトモ2025年1月27日
-
農薬散布など最新ドローンとソフト紹介 無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2025年1月27日
-
農文協『みんなの有機農業技術大事典』発刊記念 セミナー「耕さない農業」開催2025年1月27日
-
横浜のいちごイベント&スイーツ紹介「いちご特集」公開 横浜市観光協会2025年1月27日
-
移動スーパーとくし丸 マイヤと提携 岩手県花巻市東部エリアで移動販売再開2025年1月27日
-
【人事異動】クボタ(2月1日付)2025年1月27日
-
豆乳の栄養素と鉄分が一緒にとれる「キッコーマン 豆乳+鉄分」新発売2025年1月27日
-
全国から382品が集合「第3回全国いちご選手権」開催 日本野菜ソムリエ協会2025年1月27日
-
神戸・元町の名店の味を再現「町中華 中華カレー」新発売 エスビー食品2025年1月27日
-
モスバーガー&カフェ限定 栃木県産「とちあいか」いちごソースに使用 春の定番ドリンク発売2025年1月27日
-
カーボンニュートラルに貢献する廃熱ソリューション「ENEX2025」に出展 ヤンマー2025年1月27日