農業・農協攻撃の命令系統を潰せ2017年2月20日
TPPが崩壊したと思ったら、さっそく、農業・農協攻撃が始まった。その攻撃が、どこを司令部にしているのか、考えてみよう。的確に反撃するためである。
当面する司令部は、規制改革推進会議である。だが、それは前線司令部にすぎない。その上に、最高司令部がある。日米の財界を代弁する両国の政府である。規制改革推進会議は、この最高司令部から権威づけられ、その下働きをする組織にすぎない。
しかし、だからといって軽視するわけにはいかない。火の粉が降りかかってくる火元は、ここだからである。
上の図は、農業・農協攻撃の命令系統図である。
最高司令部は、日米両国の財界を代弁する政府である。規制改革推進会議(以前は規制改革会議)は、ここから権威づけられている。そのことは、TPPの交渉過程で日本政府から米国政府へ宛てた文書(サイドレター、2016.02.04)で、つぎのように明記されている。
「日本国政府は、外国投資家その他...から意見及び提言を求め...定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる。」
これは、残念なことだが、最高司令部のなかの上官である米国政府に対する、部下である日本政府の誓約書である。だから、図のなかで米国政府が日本政府の上に位置している。この位置関係は、4月から始まる「日米経済対話」でも踏襲されるだろう。
つまりこの図は、規制改革推進会議は両国政府が後ろ盾になっている前線司令部であることを示している。
図の中で、いちばん下の農林水産業・地域の活力創造本部は、規制改革推進会議の実質的な命令を受けた実戦部隊である。その戦果を規制会議が進捗管理(フォローアップ)することは、閣議(2016.06.02)で決定している。安倍晋三首相は、念をおすように、つぎのように言っている。(2016.11.28)
「規制改革会議としても...改革の進捗をしっかりとフォローアップしていただきたい」
◇
最高司令部は、日米の両政府だが、それは、両国の財界の利益を代弁している。両国の財界は、市場原理主義にまみれ、私利私欲だけがあって、愛国心はない。だから、無国籍といってもいいし、多国籍といってもいい。政府は、国益などといって愛国心があるように振舞うが、財界の利益だけを追求する代理人にすぎない。
安倍首相も、せめてトランプ大統領のように、自国の労働者の利益が第1、つまりアメリカ第1と言ってもらいたいが、あいまいに、国益としか言わない。
◇
前線司令部の規制会議は、首相官邸が事務局になっていて、その言いなりになっている。つまり、最高司令部の忠実な下僕になっている。農業の現場の実情も知らないし、協同組合の知識もない。協同組合と企業の違いも分からないし、農協と行政組織との違いも分からない。ただのイエスマンだけで組織されている。だが、見せかけの虎の威だけはある。
創造本部は、最前線の戦闘部隊だが、事務局は首相官邸である。だから、ここも現場の実態を知らない。上の司令部だけを向いている。したがって、ここから出てくる政策では農業・農協は改革できない。
◇
そもそも、最高司令部の作戦目的は、農業・農協を改革しようとするものではない。日本の農業を日米の大企業が乗っ取るのが目的である。そうして、市場原理主義をふりかざして、資本による搾取のフロンティアを日本農業にまで押し広げようとしている。そのために、農協を潰し、農業者を追い出して、日本農業を資本の草刈り場にしようとしている。そんな企みが成功するはずがない。
農業者と農協は、この攻撃に対して徹底的に反撃するだろう。そのためには、農業・農協攻撃の最高司令部を潰すしかない。それは簡単だ。いまの政府を、農業・農協を正当に評価する新しい政府に代えればいい。そうするしかない。そうすれば、あの忌まわしい規制会議も創造本部も胡散霧消する。
◇
いま世界は、英国のEU離脱、トランプ現象にみられるように、農業者、労働者、中小企業者などの経済的弱者が、市場原理主義に立ち向かう奔流のなかにあって、政権がつぎつぎに交代している。
日本も、いまの政府のように、農業者などの弱者と、弱者が強者に抵抗するために作った協同組合に対して非難中傷を浴びせるのではなく、アメリカのように、弱者を第1に考える政府に交代するだろう。
(2017.02.20)
(前回 トランプの対日貿易政策は雇用政策だ)
(前々回 トランプ報道にみる民主主義の危機)
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