オランダの総選挙で弱者が勝った2017年3月21日
先週行われ、世界中から注目されたオランダの総選挙の結果が出た。
多くのマスコミと体制派の論者は、第1党の自由民主党が勝って、反EU、反移民を主張する極右の自由党が負けた、と印象づけようとしている。
だがそうではない。事実は全く逆である。自由民主党は議席を減らして負けたし、自由党は議席を増やして勝った。ここまで事実を捻じ曲げれば、情報操作というよりも情報の捏造に近い。
イギリスのEU離脱、トランプ現象に続いて、オランダでも格差拡大に対する経済的弱者の反乱が波及している。
しかし、体制派の彼らは、このことに目をそらしている。そして、覆い隠そうとしている。
上の表で示したように、与党第1党の自由民主党の現議席数は40議席だが、7議席減らして33議席になった。それに対して、自由党は12議席から8議席増やして20議席になり、第2党になった。
もう1つの与党で、社会民主主義を唱え、中道左派といわれる労働党に注目すると、35議席から9議席に激減した。
余談になるが、これは日本で与党寄りになっている民進党の将来の悪夢を連想させる。
この表へ戻ろう。与党全体の現議席は75議席である。定員は150議席だから、ぎりぎりの半数である。だが、今度の選挙の結果、半数を大きく割って42議席に減ってしまった。つまり、上の表で示した選挙結果を素直にみれば、与党の惨敗である。そして、自由党の第2党への躍進である。
新しい連立政権ができるまでには、かなりの期間がかかる、と予想されている。1月後には、フランスで大統領選があるが、それまでに組閣できそうもない。混迷は続く。
◇
こんどの選挙の争点は、EU問題と移民問題だという。そして、反EU、反移民を唱える自由党が躍進した。
だが、そのように捉えるのは、浅薄に過ぎる。EU問題は、公正な貿易問題だけではない。その深層には、市場原理主義に基づく経済的格差の拡大がある。自由党は、それに鋭く反対した。そして勝った。
また、移民問題は、紛争による避難民の受け入れ問題だけではない。その深層には、大量の低賃金労働者移民の受け入れによる、自国民の雇用の喪失と国内労働者の賃金低下がある。それによる経済的格差の拡大がある。自由党は、そのことに厳しく反対した。そして勝った。
つまり、こんどの選挙の争点は、農業者や労働者などの弱者の側に立って格差の拡大に反対するか、それとも強者である大資本の側に立って格差を容認するか、の1点にあった。そして、格差の拡大に反対する弱者が勝った。この点で、イギリスのEU離脱、トランプ現象に続くものである。この潮流は、来月のフランス大統領選、再来月の韓国大統領選、秋のドイツ総選挙へと続くだろう。
いま、世界の政治には、弱者による反格差の潮流が激しく渦巻いている。この流れは止められない。
◇
弱者の反乱は、いくつかの曲折があって進行するだろう。
そこには極右への傾斜もあるし、イスラム教への非人道的な弾圧や移民問題での反社会的な排外主義もあるだろう。これらを厳しく監視して矯正しなければならない。ゆき過ぎた孤立主義も批判すべきである。
こんどのオランダの総選挙での自由党の躍進には、このような教訓がある。そしてそれらは、イギリスのEU離脱問題やトランプ現象の中でもみられる。
それらを批判し矯正して、初心である弱者のための政治を貫かねばならない。そうすれば、悪しきポピュリズムなどという誹謗中傷も空疎に響くだろう。
道は屈折して遠い。だが、その先には正義がある。農業国オランダは、こんどの総選挙で大きく前進した。日本も続かねばならない。
(2017.03.21)
(前回 全農株式会社化の謀略)
(前々回 民進党の反原発政策を妨害する連合労組)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日