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日欧EPAは格差を拡大する2017年7月10日

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【森島 賢】

 政府は先週、酪農家をはじめ農業者の要求を裏切って、日欧EPAを大筋合意した。そうして、自動車を輸出するために、農業を犠牲にしようとしている。
 多くの解説者は、この合意は、自由貿易の前進で、保護貿易の後退だ、といって、農業者の苦悩をよそに凱歌をあげている。
 彼らは、自由貿易が格差を拡大し、経済的弱者の怨嗟の的になっている、という認識がない。自由貿易による格差の拡大に反対する弱者が、英国ではEU離脱を決め、米国ではトランプ大統領を誕生させた、という事実の認識がない。
 かくして、彼らは弱者に敵対し、強者のポチに成り下がっている。

 ニワトリは3歩あるけば忘れる、というが、日本の自由貿易論者も忘れっぽい。昨年行われた英国のEU離脱や米国のトランプ大統領の誕生を、もう忘れたようだ。日本の自由貿易論者の脳みその大きさは、人間よりもニワトリに近いのだろう。
 英国でも米国でも、弱者が自由貿易論者を打ち破ったのである。自由貿易が格差を拡大し、弱者を痛めつけているからである。こうした弱者の反乱は、世界の潮流になっている。
 だが、日本のマスコミは、この点の認識がない。そして自由貿易への賛歌で埋め尽くしている。自由貿易は善で、それへの反対は悪だ、という信仰が脳みそに深く刷り込まれていて、それだけは忘れない。この信仰をメシのタネにしているからだろう。つまり、自動車業界などの大企業の広告費である。そうして、民主主義の守護神が、カネにまみれて民主主義を破壊している。
 彼らはニワトリと同じように、エサ場だけは忘れないようだ。

 テレビを見ていて驚いた。日欧EPAでチーズが安くなる、という一部の国民の喜びの声を、くり返し流している。
 マスコミは経済学の初歩である「賃金鉄則」を知らないようだ。つまり、労働力も普通の商品と同じで、労働力の価格である賃金は、労働力の生産費である生活費で決まるという鉄則である。
 マスコミと、チーズが安くなって生活費が安くなることを喜ぶような一部の労働者は、賃金は下がるし、失業の危機にさらされることを知らないようだ。
 このことを、身をもって知っている英国や米国の労働者など、多くの弱者が、反乱を起こしたことを、日本のマスコミは、もう忘れたのだろう。
 だが日本でも、多くの弱者は知っている。そうして、東京の議会選挙で弱者の力を示した。

 もう1つ、テレビを見ていて驚いた。元農水相で自民党農林族の重鎮が、日欧EPAで日本のコメが1俵5万円で輸出できる、と言っていた。対談の相手は、元農水相がいうことだから本当だろう、という顔をしていた。
 だが、それは虚言に限りなく近い。いまの国際米価は1俵1500円程度である。日本米が旨いからといって33倍の価格で売れる筈がない。
 反論したいのなら、たとい10俵でもいいから欧州で実際に売ってもらいたい。万一、売れたとしても、市価との差額は偽装献金として摘発されるだろう。
 こうした自民党の重鎮が、農政を取り仕切っている。自民党のたそがれは近い。
 今朝の新聞(朝日)は、安倍内閣の支持率が下がり続け、ついに33%になったことを伝えている。日欧EPAの合意で、さらに下がるだろう。

 今日から、国会で閉会中審査が始まる。
 野党は、日欧EPAが格差を拡大し、国民の99%という多数の弱者を、さらに困窮に陥れることの不正義を、暴露しなければならない。
 そうすれば、弱者は拍手喝采を送るだろう。
(2017.07.10)

(前回 加計問題の核心は安倍首相の公私混同

(前々回 東京に新しい政治の息吹き

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