民進党は地方組織を強化せよ2017年9月4日
民進党は先週末、前原誠司氏を新代表に決めた。新代表は、敗退した枝野幸男氏にも協力を求め、ともに挙党体制を作りたい、という。だが、はたしてうまくゆくだろうか。
この選挙は、あまり盛り上がらなかった。その大きな理由の1つに、選挙制度の問題があった。それを象徴的に表したものがポイント制である。つまり、最も多くの支持票を得た候補が当選するのではなく、最も多くのポイントを得た候補が当選する。
そのポイントの数え方だが、国会議員は1人で2ポイント持っているのに、党員・サポーターは約千人で1ポイントしか持っていない。つまり、約2000分の1しかない。その結果、党員・サポーターは白けていて、投票率は40%と極めて低かった。
党員・サポーターが白けていたのは、代表選挙の制度に、このような欠陥があったからだ。党員は全て平等で、1人1票の議決権を持つのが民主主義の大原則ではないのか。代表選挙は、この大原則に明確に違反している。
この現場組織の軽視、地方組織の軽視は、代表選挙の選挙制度にとどまらない。各種の選挙に備えて、地方の現場組織を強化するのではなく、風まかせの選挙を行っている。これでは、全国各地の現場組織から熱気が沸き起こるような選挙にはならない。言葉を選ばずにいえば、党幹部が自分たちの生き残りだけを優先する選挙になってしまう。
ここに民進党の最大の課題がある。この課題の克服を、多くの国民が見守っている。期待は大きい。
◇
さて、新代表は今後、挙党体制をつくる、というが、前原、枝野の両氏の政見には大きな隔たりがある。分裂の危機さえもある。
今後、この隔たりを埋めて、分裂の危機を乗り越えるには、党幹部だけの談合や妥協ではだめだ。地方で有権者と日常的に直接向き合っている現場の党員・サポーターの意見を組織的にくみ取って、それに基づいて、両者の隔たりを埋めねばならぬ。
こうした地方組織の強化が、民進党の最大の課題だろう。
◇
両氏の政見の隔たりを、両氏が公約した政見などでみてみよう。
前原新代表の標語は、「All for All」である。これは、協同組合の標語である、「One for All ,All for One」をひねったものだろう。だが、これとは、まるで違う。後者には、経済的弱者との一体感があるが、前者の前原氏の標語には、弱者と強者の区別さえない。これでは、力の強い強者に利用されるだけだ。
これに対して、枝野氏の標語は「困ったときに...支え合う」というものだ。これは協同組合の標語に近い。ここには、弱者との一体感がある。
◇
前原新代表のこの標語は、消費増税の主張につながる。消費税は弱者も強者も公平に負担するものだ、だから公平な税だ、という主張である。これは、党幹部の一部だけの主張だ。
消費税の累進性を否定したこの主張を、弱者や現場の党員・サポーターは是認しないだろう。
これに対して、枝野氏は税制などの再分配政策ではなく、格差が発生する、そのおおもとになる当初の分配政策を取り上げる。いったん格差の発生を放置しておいて、その後で格差を縮める、などという再配分政策ではない。労働への当初の分配を増やす、という政策である。そのために、非正規雇用を減らし、長時間労働の規制を主張している。
この主張は、弱者の主張である。民進党が、弱者のための政党だ、ということがよく分かる。
◇
もう1つの大きな意見の隔たりは、他党との選挙協力にある。
前原新代表は、年内にも予想される衆院選は、政権選択の選挙だから、理念・政策が違う政党とは協力できない、という。理念と政策を同次元で並列する没論理的な主張だが、理念と基本政策に読み替えよう。理念と基本政策が同じなら合体すればいいのだ。
政党は思想集団ではない。だから、理念や基本政策が違っていても、安倍政権を倒して政権交代する、という大義で協力しあうことはできる。それを多くの弱者が求めている。
この点を、枝野氏はくり返し強調していて、前原新代表とは、大きな隔たりがある。
協力は、未来永劫にではなく、今後4年間に限定して、何を共通政策にできるかを協議して、妥結できる政策について、大義のために合意し、率先して選挙協力しあえばいい。野党第1党なのだから。それを地方の現場の党員・サポーターは求めている。この現場の声を基礎にして、他党との選挙協力を行うべきだ。この声を無視して、中央の幹部だけの没論理的思考で結論を出すべきではない。
◇
枝野氏の側にも、弱者からみて多くの問題がある。それは原発政策にみられる。民進党幹部の多くは、いまや強者の立場に立つ連合労組のくびきにはめられている。それを多くの弱者は、苦々しく思っている。
全党で挙党体制を作るばあいも、他党との協力関係を作るばあいも、連合のくびきの中で、党幹部が勝手に決めるのではだめだ。現場の党員・サポーターが組織的に集約した意見に基づいて決めるべきだろう。それが、民進党再生の第1歩になる。他党にも影響が及び、沈滞した政治が再び活性化して、政界再編へつながっていくだろう。
多くの弱者は、そこに期待をこめて、希望の目で見守っている。
(2017.09.04)
前原新代表の政見:
https://www.minshin.or.jp/assets/leadership-election/2017/candidates/pdf/maehara_seiken.pdf
枝野氏の政見:
https://www.minshin.or.jp/assets/leadership-election/2017/candidates/pdf/edano_seiken.pdf
(前回 民進党の土壇場)
(前々回 吉本隆明のドグマ的な日本農業論)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日
-
ウエストランドが謎解きでパフェ完食 岡山の希少いちご「晴苺」発表会開催 岡山県2025年1月23日
-
「農業でカーボンニュートラル社会を実現する」ライブセミナー配信 矢野経済研究所2025年1月23日
-
【執行役員人事】南海化学(4月1日付)2025年1月23日
-
【人事異動】クボタ(2月1日付)2025年1月23日
-
種籾消毒処理装置「SASTEMA(サスティマ)」新発売 サタケ2025年1月23日