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【近藤康男・TPPから見える風景】"大筋合意"のTPP11はどこまで合意したのか?2017年12月7日

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【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

 ベトナム・ダナンで11月10日TPP11が名前もCPTPP=Comprehensive and Progressive Trans-Pacific Partnership 包括的及び先進的な環太平洋パートナ-シップ協定と改め、TPP12を置き去りにして、新たな協定として11ヶ国の閣僚により“大筋合意”された。
 翌日、関係国の首脳会合において“大筋合意”が確認されるはずだったが、報道されたようなドタバタ劇により、首脳会合も中止され、首脳による“大筋合意”もされないままとなった。異例なことだ。

◆恣意的な用語"大筋合意"
 
 これまで"大筋合意"は英文では一般的に"agreement in principle"、日EU・EPAで日本語が"大枠合意"と変わっても、英文は同じ"agreement in principle"とされてきた。
 ところが、今回は国内向けに"合意(大筋合意)"とし、閣僚の共同声明では英文が"(閣僚は)agreed on the core elements of the CPTPP"となり、日本文は"CPTPPの中核について合意に達した"となっている。ちなみに15年10月5日のTPP原協定の"大筋合意"については政府は一貫して"大筋合意"と説明、しかし当日の閣僚共同声明では日本文は"成功裏に妥結"、英文は"successfully concluded"となっている。
 つまり、政府が"大筋合意"と言ってもその合意の軽重、範囲が微妙に異なっているし、TPP原協定が一応法的精査を残すのみ、と言う点で合意に近いものの、他の2つの合意の実態には「?」が付いてしまう。

 

◆不親切なのか? 無内容なのか?
 政府公表資料その①:附属書Ⅰ

 今回日本政府は珍しく、"大筋合意"直後に、しかも主要な参加国と同じ資料を公表した。
 
 政府公表資料は⇒内閣官房のTPP首脳会合等について 

 内閣府の「TPP11協定の合意内容について」と閣僚の共同声明(日英)、附属書Ⅰ(TPP11協定の概要・日英)と附属書Ⅱ停止(凍結)される規定(日英)だ。
 問題は内容の詳細を明らかにする原資料たる2つの附属書だ(各国同じ)。附属書Ⅰは、
 ・前文、第1条TPP協定の組み込み、第2条特定の規定の適用停止(凍結)
 ・第3条効力の発生(6ヶ国での承認)、第4条脱退、第5条加入
 ・第6条本協定の見直し、第7条正文(英・仏・西語)

 
の7項目だが、第6条について「TPP原協定の発効が見込まれる場合又は見込まれない場合に、いずれかの締約国の要請があった時は、TPP11協定の改正等を考慮するため、この協定の見直しを行う」としているが、それ以外は文字通り上述のように項目名が記されているだけで、内容については知りようもない。
 TPP等政府対策本部の企画官も、最終段階まで公表はない、と電話での問い合わせに応えた(12月1日)。
 第6条は、乳製品の低関税輸入枠の数量と牛肉などのセ-フガ-ド発動基準数量が米国の離脱で実質的に過大となっている、という日本の懸念を潜在的に反映したものとされる。しかし協定条文以外の正式な文言は、閣僚声明の中に織り込まれた(6条についての)「見直しの範囲が、TPPの現状に関する状況を反映するためのCPTPP改正の提案に及ぶ可能性があるとの見解を共有した」だけだ。政府はこれを持って、日本の懸念は充分反映・共有されたと胸を張る? が、解釈をする段階でNZや豪州が果たして応じるだろうか? 後付け解釈において市場開放を後退させるような解釈が通用しないのが通商協定では一般的だ。

 
 
◆英文和訳は翻訳ではない?
 政府公表資料その②:附属書Ⅱ

 この間新聞を賑わせていた"凍結項目"一覧を記載した附属書Ⅱはどうか? 最終的には20の凍結項目と詳細を署名までに具体化すべき4項目だ。4項目は凍結とされた訳ではなく、今後の調整に残された火種でもある。
 これも附属書Ⅰと同様に簡単な言葉で項目名を付し、第〇章〇条、第〇省〇条〇項、脚注番号が付されているだけで、内容の説明は一切ない。
 4項目は、

(1)国有企業の非適合措置・附属書Ⅳ(マレ-シア)
(2)投資・サ-ビス貿易の非適合措置・附属書Ⅱ(ブルネイ)の14頁石炭産業のパラグラフ3
(3)28章紛争解決(貿易制裁)20条(ベトナム)
(4)文化例外(カナダ)

とされているだけで特に(4)文化例外は意味不明だ。
 結局、章全体、あるいは条全体、あるいは項全体、そして脚注を全て読まなければ何が凍結されたのかは理解できない。更に脚注の番号は、原協定の日本語訳と英文とでは整理の仕方が異なっており、英文でないと見つけられない。一応原協定に遡って読んだが、本年3月のチリでの閣僚会合以来7回もの交渉に値する果実だったのか、疑問が生じるのみだ。

※  ※  ※

 政府は早ければ18年2月にも合意署名式を日本で、と張り切っている。しかし、カナダ政府は「急がない」、メキシコ政府は「カナダが署名しないならメキシコも...」とNAFTA共闘、NZの貿易担当相も「署名前には国民に問う」と発言している。
 政府は12月11日に説明会を開催するが、どこまで説明らしい説明がされるだろうか?

 

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