私利私欲に基づく妄想の農業・農協攻撃2018年3月12日
雑誌「週刊ダイヤモンド」が2月24日号で、私利私欲の追及を至上原理とする考えに基づき、妄想をふくらませて農業・農協攻撃を行った。
農業者などは、またか、といって相手にせず、冷笑を浴びせている。
同誌は、自分の主張に都合のいいデータを勝手に作り、それを根拠にして妄想をくり広げ、農業を攻撃している。それに対して、まともに反論するほどヒマではない。また、農業も私利私欲をひたすら追求すべきだという。こうした議論に興味はない。しかし、ここでは真正面から取り上げて批判しておこう。
妄想とは、自分の主張に都合のいいデータをデッチあげ、それが現実の姿を写したものだ、と思い違いをしていることである。その妄想を根拠にして、同誌は農業を攻撃している。
また、私利私欲の追及は、社会の調和的発展に害を垂れ流さない、という範囲に限定して是認されるのであって、無条件で許容されるものではないが、しかし同誌は、このことを全く理解しないで、農業を攻撃している。
はじめに、妄想について批判しよう。
同誌の、この特集の目玉は、農協のランク付けである。それが同誌の表紙をかざっている。総合ランクと、健全度ランクと呼ぶ2つのランク付けである。このうち、総合ランクは「担い手農家アンケート」と呼ぶ調査の結果を使っている。
そこで、「担い手農家アンケート」なるものが重要になる。ここに致命的な妄想がある。いったい誰が農協を評価してランク付けをしたのか。
◇
農協を評価してランク付けをするのだから、評価する人は組合員の全員でなければならない。それが民主主義というものである。そうでなければ、農協は参考にできないし、余計な、おせっかいになる。
だから、評価する人は1000万人の全員の組合員でなければならない。全員調査をせよ、などと無理をいっているのではない。全組合員の評価を忠実に反映するものでなければならぬ、といっている。そのように回答者を選定しなければならない。だが、この調査は、そうしていない。
◇
この調査の回答者は、農地中間管理機構を利用した農家と、日本養豚協会の農家で、住所が分かる農家を主にして選定している。それに「インターネットなど公開情報から住所を取得した」というわけの分からぬ農家を加えたものだという。つまり、回答者がどんな特性を持った人なのか分からない。大規模農家らしいが、それも分からない。
こんな選定方法では、調査の結果は、どのようにでも都合のいいように操作できる。そして、それで実態を忠実に反映したようにいう。妄想というのは、このことを指している。
◇
この選定方法で、回答者になりうる人の人数は2万7944人だという。農協の1000万人の全組合員のわずか0.28%でしかない。これでは、偏った結果しか出てこない。
それに加えて、実際に回答した人は僅か1883人だという。回答率は6.7%である。そのことを恥ずかし気もなくシャーシャーと書いている。これほど回答率が少ないアンケート調査など、見たことも、聞いたこともない。
これでは、統計学を引き合いにだすまでもなく、デタラメに限りなく近い。デタラメな調査からは、デタラメな結果しか出てこない。
それに、さらに加えて、「担い手農家アンケート」で、回答者が5人未満の回答者しかいない農協は、総合ランクから外したという。ここにもランク付けの恣意性、つまりデタラメさが見てとれる。
◇
もう1つは、私利私欲についてである。
同誌は農協が協同組合であることが分かっていないようだ。敵意をもっているようにも思える。だから、株式会社を模範にして、農協は利益、つまり私利私欲の追及のために、全てを犠牲にすべきだ、という強迫観念に似た考えに取り付かれているようだ。市場原理主義である。
しかし、経済学の祖といわれるアダム・スミスも、私利私欲の追及を無条件に是認しているわけではない。社会全体の発展に寄与する限り、という限定づきで是認しているのである。
私利私欲の追及は、本来、軽蔑されることである。そういう歴史が、太古の昔から長いあいだ続いた。それが是認されるようになったのは、つい最近で、日本でいえば、数十年前からである。そしていま、それが格差社会を生みだす主因になっている。
◇
同誌は、恥も知らずに、あくなき私利私欲の追及を至上の原理と考えている。だから、農協もそのように考えねばならぬ、と独りよがりに、そして、おせっかいに考えて、押し付けようとしている。
しかし、そうではない。
利益の追求は農業の大事な目的だが、それだけが唯一無二の目的ではない。何もかも犠牲にして、ひたすら利益を追求することを目的にしてはいない。農業には食糧安保、食糧主権の堅持、また農村社会の安定と発展という重要な目的がある。
しかし、同誌は、利益の追求以外のための経費は無駄遣い、と考えている。つまり、介護活動などのための経費は無駄使いと考えている。だから、介護活動などは、農協のランク付けで、全く評価しない。同様に、農業に対する政府の財政支出は、全て税金の無駄使いと考えている。
◇
健全度ランキングなるものは、このような偏見に基づいた評価を集計して、各県の農協をランクづけしたものである。
当然、47の都道府県には、それぞれ最下位のランクの農協が1つずつ、合計47の農協がある。それらの農協は、同誌から最下位とされて、名誉を棄損された。また、購買事業や販売事業で風評被害を受け、営業を妨害されて、実害を被るだろう。
だから、もしも同誌が名誉棄損や営業妨害で47農協から損害補償の提訴をされたら、同誌は、とうてい勝訴できないだろう。
言論は自由、と抗弁するだろうが、それは、自由のはき違いである。言論にもデタラメで薄弱な根拠に基づく名誉棄損や営業妨害をする自由はない。
◇
同誌は、同様に偏った考えのもとで、コメ政策やトマト生産や大規模農家についての提言をしている。しかし、それらの全てが考え違いだし、実態とかけ離れた的外れの提言になっている。
もしも、これらの提言を受け入れれば、日本の農業は壊滅し、農地は全て荒れ果て、ムラは人間の住めない地域になるだろう。マチはひび割れたコンクリートのジャングルになり、空腹をかかえ、私利私欲で目をギラつかせた人びとで充満するだろう。
だから、大部分の農業者は同誌に対して、苦笑しているし、百害あって一利なしとして、冷笑を浴びせているのである。
そうして、名門「週刊ダイヤモンド」も、ここまで転落したか、と嘆いている。
(2018.03.12)
(前回 裁量労働制の破綻)
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