森友問題の闇にみる政治機構の劣化2018年3月19日
森友問題の暗部が、つぎつぎに明るみに出てきた。それは、政治の深い暗部とつながっている。
問題は、国有地の不当な廉価での売却である。不当でない、といいたいのなら、つぎつぎに暴露される疑問を晴らさねばならない。
いまは、だれが、この不当な廉売に責任があるか、という点に焦点を当てている。しかし、不当な廉売の背景には、安倍晋三首相と籠池泰典前理事長と間の、黒くて親密な関係がある。もしも両者が親密な関係でなかったら、この不当な廉売問題は起きなかっただろう。
両者の親密な関係の根底には、時代錯誤的な皇国史観と、反民主主義的な皇室観の共有がある。こうしたイデオロギーは、財界や政界の一部の有力者とも共有している。だから強い政治力をもっている。ここに森友問題の暗い闇がある。
首相も前理事長も、いまの政治体制を明治時代の体制に戻したい、と考えているのだろう。森友学園では、幼稚園児に明治天皇の教育勅語を暗唱させているという。首相夫妻は、こうした教育を称賛している。
ここでは、両者の親密な関係ではなく、この問題を防ぎきれなかった政治機構の劣化について考えよう。それは、農業政策でも見られる共通の問題である。
森友問題は、僅か8億円程度のささいな問題だ、という人がいる。だから、国会で騒ぎ立てるほどの重大な問題ではないという。しかしそうではない。この問題は、安倍一強政治の全面的な劣化、という重大な問題の象徴なのである。
重大な問題は、この不当行為を、売却交渉の途中で阻止できなかった行政機構、つまり政治機構にある。それは、政治主導という美名のもとに横行している政治権力の集中であり、政治権力の濫用であり、政治機構の劣化である。その最前線に、首相官邸という司令塔がある。
首相は、首相官邸に強大な権限を与え、そこを独裁体制の拠点にして、政治を簒奪している。官僚たちは、官邸の権力者に、ひれ伏している。そうして、諫言すれば官邸の権力者に、昇進の道を断たれる、という不安に怖れおののいている。官邸が広範な人事権を握っているからである。
ここに、政治機構の劣化の直接の原因がある。この劣化を食い止めるためには、官邸の解体的な刷新が必須である。
◇
それだけではすまない。劣化の根源的な原因は、安倍一強政治にある。官邸に、それほど強大な権限を与えた首相に、劣化の責任がある。そして、安倍一強政治をもたらしたものは、民意を歪める小選挙区制である。
昨年の総選挙の比例区をみると、自民党は僅か33%の支持しか得られなかったのに61%の議席を獲得した。この61%の議席を盾にして、一強政治を強行している。この機構を破壊しなければ、劣化を治すことはできない。
森友問題は、ここまで視野に入れることなしで、その闇を晴らすことはできない。
国有地の廉価販売は、その入口にすぎない。麻生太郎副総理兼財務大臣の辞職も、安倍内閣の総辞職も、1つの経過点にすぎない。その先に、政治機構の劣化からの回復と、安倍一強政治からの脱却を見据えておかねばならない。そうして、独裁的な首相官邸の解体的刷新と、民意を歪める小選挙区制の廃止を実現しなければならない。
◇
農業政策でも同様なことがある。首相官邸による農政の壟断と、安倍一強政治による農政の混迷である。いまや、農水省は、官邸の言いなりになっていて、諫言する官僚はいない。いても官邸が人事権をふるって、閑職に追いやる。
また、安倍一強政治のもとで、自民党の農林族は牙を抜かれたようで、官邸へ諫言する議員はいない。諫言すれば、つぎの選挙で公認されないという不安に、さいなまれている。小選挙区制だから、公認されなければ当選できない。そうなれば、政治生命を断たれる。そういう不安である。だから、諫言できない。
このように、農政の分野でも、首相官邸の強大な権力と、小選挙区制が、政治の劣化の原因になっている。この2つにメスを入れないかぎり、政治の劣化から脱出できないだろう。
◇
こうした政治から脱却するには、どうすればいいか。そうして、日本の政治は、今後どこへ向かうか。その鍵を握っているのは、6野党である。6野党の国会内での協力であり、つぎの選挙での協力である。そして、国会外での、労働者や農業者をはじめとする経済的弱者の支持の組織化である。
弱者の期待は大きい。
◇
最近のマスコミの発表によれば、下記のように安倍内閣の支持率が急落している。
NNN...30.3%(前回は44.0%)
朝日...31%(前回は44%)
毎日...33%(前回は45%)
共同...38.7%(前回は48.1%)
いよいよ安倍一強政治の終焉が近づいてきた。6野党の政権奪取による政治の刷新は近い。
(2018.03.19)
(前回 日本国溶融の危機)
(前々回 私利私欲に基づく妄想の農業・農協攻撃)
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