森友問題の中休み後の課題2018年4月2日
森友問題は、佐川宜寿前理財局長の証人喚問が終わり、予算が成立して、いまは中休みの状態に入った。マスコミは潮が引いたように、この問題を取り上げなくなった。
しかし、問題の全貌が明らかになったわけではない。むしろ疑惑は深まった。重要な点の証言を、佐川氏は全て拒否したからである。これで解明が進んだと思う人は、ほとんどいないだろう。
これでは、公文書を改竄した罪、改竄した公文書で国民と国会を1年間も騙し続けた罪などは、全て佐川氏が負うことになる。まさに忖度である。
忖度は、ヤミの世界なら、子分の一人が、犠牲になる危険を冒して親分を救ったとして、美談になるかも知れない。しかし、最高の道徳である政治の世界では、部下に責任を負わせたとして、責任逃れの卑劣な行為とされる。
佐川氏にとって、親分は忖度した政治家ではなく、国民なのである。同氏は、忖度を強制した、もちろん心理的に強制した、責任逃れの政治を告発し、事実を忠実に証言すべきだったのである。
このような醜い忖度政治は、農政の世界でも広く蔓延している。
上の表は、「選挙ドットコム」がまとめたもので、マスコミ11社の3月の世論調査による内閣支持率である。前月と比べて急落している。今月はどうなるだろうか。
◇
忖度政治の醜悪さは、悪事が露見したばあいに、罪を部下の行政官に負わせて、政治家が罪から逃げることにある。そこには、行政官の正義感を踏みにじる強権がある。強権とは、人事権である。忖度をしない行政官は閑職に落とされる。その人事権を首相官邸が握っている。その最高責任者は首相である。
このようにして、独裁体制が敷かれ、その体制のもとで独裁政治が横行する。つまり、忖度政治の根源は、首相が官邸に与えた強大な人事権である。
したがって、森友問題の追及は、当面は首相の専制を暴くことである。もしも、首相と森友学園の籠池泰典元理事長が世界観を共有する親しい友人どうしでなかったら、国有地をタダのような価額で売り払うことはなかっただろう。つまり、森友問題は起きなかっただろう。
しかし、それを暴くだけでは終わらない。その先に、官邸の横暴と、それを手段に使った安倍一強政治の打破を見据えておかねばならない。
森友問題は、8億円の税金、つまり国民1人当たり7円の税金のムダ使い、という矮小な問題では終わらない。安倍一強政治の暗部を暴く問題である。
いまは中休みだが、休みが終われば、この問題の追及は、今後も続く。
◇
本丸の安倍一強政治に攻め込むための攻め口には、とりあえず2つの攻め口がある。
1つの攻め口は、佐川氏が、はたして忖度の張本人なのか、という疑問を晴らすことである。
国会で首相は、「...首相だけでなく国会議員も辞める」とまで言い切った。それほど重大な問題にかかわる政府答弁を、1人の局長が独断で行ったと言い張っている。しかし、それが事実だとは、とうてい考えられない。首相が1局長に対して、直接に指示した、とは考えられないが、1局長の独断とも考えられない。首相と局長との間に、忖度の張本人がいる、と考えるしかない。それは誰か。
それは、局長の上司である財務省の官房長かもしれないし、その上の首相官房の誰かかもしれない。あるいは、首相の近辺にいる政治家かもしれない。
それを特定することで、何を忖度し、何を隠蔽したか、その責任を負うべき人物は誰か、が明らかになる。それは、隠蔽に責任を負う個人を制裁する為だけではない。何を隠蔽したかを明らかにし、隠蔽した事実を行った人物を制裁するためである。それと同時に、政治機構の問題点が浮き彫りになるだろう。もちろん、最終責任は安倍首相にある。
◇
もう1つの攻め口は、国会で首相が「...事務所も一切かかわっていない。もしかかわっていたら首相を辞める」とまで言い切ったことについての追及である。
いままでのところ、事務所の関わりについての野党の追及は、まだ充分でない。だからマスコミも、この点を取り上げない。これは、中休みが終わった今後の重要な攻め口である。
首相夫妻とも森友学園の教育方針に共鳴していたし、夫人は名誉校長にまでなっていた。その学園が国有地を買うことに、全く事務所が無関係という。それは事実か、という攻め口である。
たとえば、首相夫人付きの谷査恵子氏は事務所で公務をしていただろう。そして、国有地の払い下げについて、ファックスで財務省とのやりとりがあったようだ。これがニセのファックスでなければ、レッキとした「事務所のかかわり」ではないか。
これが、誰かの指示によるものか、忖度によるものか、は重要な問題ではない。首相は「...事務所がかかわっていたら首相を辞める」と国会で、はっきり言っているのだから、指示だろうが忖度だろうが、首相は辞めるしかない。
◇
さて、森友問題は今後どうなるのか。国会での野党の追及は、やがて再開されるだろう。
この追及は、国会内だけの追及であってはならない。それだけでは、圧倒的多数派の与党に負けてしまう。それを避けるために、何より重要なのは、国会外での組織的な反対運動である。
安倍首相が最も恐れているのは、世論の離反である。冒頭に示したような、マスコミの世論調査による内閣支持率の、さらなる下落である。
官邸農政に痛めつけられている農業者をはじめ多くの国民は、強権的な官邸の解体的な刷新と、官邸の横暴を許している安倍一強政治の破壊的な打撃を、心底から待ち望んでいる。
◇
最後に、愚者のたわ言を1つ。
いま理財局は、ダラダラと公文書改竄の犯人さがしをしているようだが、理財局には隠蔽の才能に長けた人物が多い。証拠隠滅をさせないために、全員を逮捕して身柄を拘束し、理財局の全体を、国際的に悪名の高い、しかし日本では合法的な代用監獄に仕立てて、司法から刑務官を派遣してもらい、彼らの監視のもとで、迅速に犯人さがしをさせたらどうだろうか。
(2018.04.02)
(前回 森友問題追及の本丸)
(前々回 森友問題の闇にみる政治機構の劣化)
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