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【原田 康・目明き千人】卸売市場は観光のスポットではない2018年10月28日

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【原田 康】

 築地から豊洲への移転のNHKをはじめマスコミの報道は、マグロのセリを観光客が写真に撮る場所が移転したという程度であった。卸売市場の機能が豊洲市場でさらに拡大することを期待する旨の解説がマスコミの役割であろう。
 マグロは何故1頭づつセリにかけるのか。高品質のマグロは同じ海域で大きさも同じであっても肉質は大きく異なる。マグロのプロの卸売業者が現物を見て品質に見合った価格を付ける。大勢の買い手が公開の場で競争による競売方式・セリが最も公平でフエアーな取引方法である。プロの売り手と買い手の真剣勝負の場である。高品質のマスクメロンも同様にセリで販売されている。
 東京や大阪など大都市の中央卸売市場は全国の卸売市場への集散機能も果たしている。特定な需要のある高級品は地方の市場も品揃えが必要であるが、産地から直接の出荷ではトラック単位となってさばききれない。東京や大阪の中央卸売市場から必要なものだけを仕入れることでケース単位の品揃えが出来る。
 生鮮食料品はその日の天候で売れ行きと出荷量の両方が大きく変わり、需給のバランスが逆になるのを全国の中央・地方卸売市場の集散機能によって調整を行っている。
 買い手は、卸売市場に行けば価格はその日の需給で動くがともかく必要な品質のものを必要な量を揃えることが出来る。出荷者はここへ出せば全量が販売でき、代金も安心だ。
 取引は公開で市場法のルールに従って行われ価格も公表される。卸売市場の、流通量全体に占めるシェアが下がっており時代に合わなくなってきているとの意見もがあるが、シェアの低下の要因は輸入が増えたことにある。国産の青果物は現在でも全国の流通量の86%のシェアである。生産者はインターネットの時代で販売方法の選択肢が大幅に増えているが、卸売市場に出荷をする選択が86%という数字となっている。このことが出荷者である農家や買い手の卸、小売等の流通の関係者からも高い評価を受けている証拠である。
 豊洲市場は観光客相手にマグロのセリを写真に撮ってお寿司を食べるところではない。

 

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