【森島 賢・正義派の農政論】食糧安保政策を検証せよ2019年3月25日
いまは、ほとんど全ての政党が、食糧安保政策を掲げている。しかし、空念仏のように唱えているだけで、政策の具体的な成果を検証しようとしない。いったいヤル気があるのか。食糧を野放図に輸入して、食糧自給率を下げる政治を臆面もなく続けている。
ふだんは、自由貿易で外国と仲良くしておけば、イザという時になっても、食糧を売ってくれるだろう、と呑気に考えている。しかし、そんな国は、どこにもない。
日本を除く全ての国は、食糧を戦略物資と考えている。イザという時に、自国の食糧を外国へ売って儲けようとする人は、国賊として指弾される。食糧は、そうなる前の重要な外交手段である。
だから、日本を除く全ての国では、食糧は、ふだんから国内で充分に生産し、イザという時に備えている。そうして、食糧安全保障の基本になる、食糧自給率の向上に努めている。
日本の食糧自給率は、戦後、下げ続け、ここ20年間、40%程度で低迷している。最近は38%にまで下がってしまった。
いっぽう、世論だが、内閣府の最新の「食料の供給に関する特別世論調査」(2014年)をみると、食料自給力の向上が必要だ、とする回答は、実に95.6%にまでなっている。不必要とする回答は2.2%だから、23人のうちで1人しかいないことになる。
なお、この内閣府調査は、これまで2006年、2010年と、4年ごとに定期的に行われてきて、昨年は調査年にあたるが、行われていない。調査結果が政府にとって不都合だったのか、と思うのは邪推だろうか。これこそ重大な「統計不正」ではないか。
◇
このように、国民のほとんど全部が、食糧自給の必要性を痛感しているのに、そのための政治が行われていない。
政治家は次の選挙を考えるから、世論に敏感だ。上の世論調査の結果も知っているに違いない。しかし、それに応える政策を考えていない。与党も野党も、考えていない。
政府と与党は、それらしい政策を立ててはいるが、実効性がない。自給率が下がり続けていることが実績である。政治は実績で評価するしかない。だから、政策がないのと同じだ。
一方、野党も食糧自給は重要だ、と口先ではいうが、いまの政策を追及しない。もう少し真剣に考えたらどうか。95.6%の国民の心を揺さぶるような政策を考えるべきである。そして、いまの食糧自給政策の成果を、具体的に検証して追及すべきである。
◇
なぜ、自給率が下がるのか。答えは単純である。輸入の野放図な自由化である。輸入に押されて国内生産量が減るからである。
今後、日欧EPAで輸入量は増えるし、日米FTAで、さらに増えるだろう。それにつれて、国内生産量は減るだろう。食糧自給率は、ますます下がるしかない。
野党が、この問題の追及に成功すれば、95.6%の国民の支持を得るに違いない。参議院選挙が4か月後に迫っている。政権奪取の好機である。
農業者の社会的責任は、いうまでもなく食糧の安定的な供給である。いまの食糧政策は、それに反することばかりである。大多数の農業者は、その転換を願っている。
選挙で示された自国の弱者を大事にするトランプ大統領や、国民投票で示された世論を重視するメイ首相のように、日本でも95.6%の世論を裏切らない政治家が出現することを期待している。
(2019.03.25)
(前回 愚民化政治の跋扈)
(前々回 野党の統計問題にのぞむ姿勢)
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