【森島 賢・正義派の農政論】外交は内政の延長2019年9月24日
安倍晋三首相は、明日、日米貿易交渉の最終合意書に署名するようだ。合意内容は、今朝の報道各社が速報で伝えているが、日本は、米国へ輸出する自動車への追加関税を免れるために、米国から牛肉などの農産物を大量に輸入する、というものだという。自動車産業のために農業を犠牲にするのである。
「外交は内政の延長線上にある」というが、ここに安倍政権の内政・外交の首尾一貫した基本姿勢が見える。農業を犠牲にするという姿勢である。それは農村を犠牲にする、という姿勢でもある。
安倍政権は、内政では農業を重視しているようにいう。しかし、米国との外交交渉の中で、止むを得ず農業に辛抱してもらうのだという。これは、内政・外交での農業軽視を隠すための、しかし見え透いた、そして醜い言い訳である。
外交は内政の延長線...という言葉は、もしも外交を内政から乖離させれば、国内から反発を受けて政権を失う、ということを意味している。
つまり安倍首相は、外交でも内政でも、農業を犠牲にしなければ政権を失う、という事情を表している。そのことが、こんどの日米交渉で明らかになった。
では、その事情とは何か。
◇
日本が民主主義の国家なら、政権を維持するには、国民の支持が不可欠である。支持がなければ、政権を維持できない。つまり、農業・農村を振興すべきだ、という大多数の国民の要求に従わなければ、政権を維持できない筈である。
しかし残念なことに、いまの日本のばあい、それだけではない。安倍政権は、もっと重要なことがある、と考えている。それは、政権を維持するにはカネが不可欠だ、という事情にかかわっている。安倍政権のばあい、それを財界に依存している。
こうなると、財界の主張を重視し、首尾一貫して、内政・外交に反映させることになる。財界の意向を忖度して、内政・外交を行うことにもなる。つまり、自動車産業を振興するために、農業・農村は犠牲にせよ、という財界の要求に従わなければ、政権を維持できなくなる。
◇
これは、民主主義にとって重大な問題である。民主主義に反している。これでは、日本は民主主義国家ではない。他国に対して民主主義を説教するなど、笑止千万である。
ここで、あらためて憲法を持ち出すまでもないが、日本国の主権は国民にあって、財界にはない。財界の大金持ちも、非正規労働者の弱者も、同じ1人分の主権しか持っていない。金持ちだからといって弱者よりも多い主権、つまり、強い政治的影響力を持っているわけではない。だから民主憲法といわれている。
このように、日本は、憲法上は民主主義国家だが、しかし実際は非民主主義国家になっている。
これでいいのか。
◇
このような汚名を拭うためには、政府に対する憲法遵守の要求を強めるしかない。それを拒否するなら、政権の維持を断念してもらうしかない。
主権者である国民は、主権を持っていない、そして主権を侵害している財界の要求に従って、農業に犠牲を強いる対米従属外交を続ける安倍政権に対して、退陣を迫るしかない。
それは、天から与えられ、先人たちの血と汗で勝ち取った主権を持つ国民が果たすべき、崇高な使命である。
(2019.09.24)
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