コメは受難の道を歩んでいる。減反を始めて40余年、失われた水田は100万ヘクタール、国土を守るべき地域に住んでいる林業、漁業、農業だが、衰退の道を辿っている。受難の道を辿っているのはコメそのものだけではなく、耕作に従事してきた農業者であった。
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封建時代の年貢、小作制度が黒い影を落としていた。終戦を機に断行された「農地改革」は日本社会に二つの大きな意義のある変革をもたらした。明治開国以来、農業の分野では地主対小作という根拠のない封建的な主従関係が残されていた。農地改革を機に新たに誕生した自作農階層は近代的国民国家としての日本を支える基盤となった。
さらに、経済的には自作農階層は消費者として高度成長を支えた。小作として貧困な立場から農地改革により自作農として充分な可処分所得を持つことになり、大きな需要の源泉となり経済高度成長に寄与した。
しかも、農業は単なる一つの産業ではない。地域の最末端のコミュニティを支えているのは水田と畑で汗を流す農業者である。生産力は、一農業者で10町は可能な状況、日本の稲作は大規模農法だけでなく、中山間地に切り開かれた小規模の農家も無視しては語れない。そこに展開している水田は客土を重ねた作土の賜物であり、日本の貴重な財産である。農業者はコメを作りたい。日本の農業は水田なくして語れない。
農業は産業として捉えるだけでなく、地域コミュニティ、安全安心な食料、地域景観、国土保全を必須のツールとして維持していくことを目標とする農政こそ必要ではなかろうか。農業者は家族農法で地域の特性、得意分野を活かした農業で国民の負託にこたえる農法が国民のコンセンサスであろう。
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特に日本の農産物はクオリティが高く、自然のちからを生かした農法は営農指導のお蔭もあり、海外の評価は高い。世界の食市場は40兆円H32年には680兆円の市場予測、特にアッパーミドル層の拡大は安全安心、クオリティそして量を求める声は、高まる一方である。日本農業は新しい時代を迎えようとしている。多面的機能を持つ農業は、各分野の人々と交流し、開かれた農業界をコンセンサスとする時代が来ている。
戦略的コスト、戦略的ヴィジョンを認識すべきであろう。
この政策を実行するにはJAグループが組織を挙げて取組まねばならない。特に農協中央会は農業の経団連、政治的、経済的、組織力、動員力は全国津々浦々に、農業者との結びつきも深い、農業者のために、そして国民のためにこの農業政策を実行して頂くことを提起致します。