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【米生産・流通最前線2018】三澤正博・木徳神糧(株)取締役専務執行役員インタビュー2018年11月30日

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 30年産米の主食用米生産量は733万tが見込まれ販売はこれから本格化する。米の需要量の減退が懸念されるが、主要食糧としての重要性は変わらない。どう需要を見極め生産、販売するかは産地も問われる。今回は大手卸の立場から木徳神糧の三澤専務に米需要の現状と課題について聞いた。

◆高米価が消費減に

 ―30年産米の作柄と、当面の需給、価格についてどう考えていますか。

 

三澤正博・木徳神糧(株)取締役専務執行役員 食味は昨年にくらべて落ちているということはないと思いますが、産地からは整粒歩合が落ちているということは聞いていますから、29年産にくらべて30年産の生産量は少ないと思っています。地域によっては降水量が少なかったり、あるいは気温は高かったけれども日照が不足したりなど、県内でも地域差があると思います。
 こうした天候の結果、銘柄のなかには、たとえば、その銘柄の基準タンパク値を満たすのは3割程度しかないというものもあり、どう販売するかなど課題も出てきました。また、代わりにどういう米を手当てできるのか、補てん対策も考えていかなくてはなりません。そういう調整も必要になっています。
 ただ、価格は量販店を見ても昨年と横並びで、店頭販売価格が上がったところはないと思います。実際、価格は、これ以上上がったら誰も買わないという状況です。たしかに今年も新品種が登場し高価格帯の米も販売されて売れているものもありますが、それを求める人たちはたくさん量を買うわけではありません。一方で特売の米を探しながら買っているような人は多い。今は5kg2000円ではなく1500円、1600円がリーズナブルということだと思います。米が余ったときはそれより安いものも出ていました。
 こういうなかで業務用米については高すぎるというのが実需者です。業務用米で価格が昨年より下がっているものは何ひとつありませんから、価格交渉はかなり苦労しています。
 実需者から産地に向かって、米を将来も売っていくつもりがあるのか、という声が出るほど、もう米を使用する側は疲弊しています。だから使う量を減らしたり、輸入米に目を向けたりしているわけです。
 このように中食・外食は使用する米を減らすという状況ですから、消費減です。輸入米を使うとなればその分、国産米は使われなくなる。実際、TPP11発効で、これまでの10万tのSBS輸入米に加えて、来年は2000tプラス、4月以降の6000t、計8000tの豪州産枠ができる。
 さらに日本の人口は昨年30万人ほど減っているわけで、今年も同じように減ります。それらを考えると米の消費が増えることはない。生産量は昨年より極端に減っているというわけではありませんし、むしろ備蓄米も予定の20万tは契約されず12万t程度でしたから、残り7万t強が主食用に入ってきます。そういうことを考えると地域によってはたしかに不作の地域もありますが、全体の量としては心配はないと見ています。ただ、銘柄ごと、産地ごとの量の凹凸はあるだろうということです。
 その点で店頭販売は銘柄をやり繰りして品揃えをすることになるだろうと思います。特定の銘柄でなければならないという消費者もいないわけではありませんが、多くはそれがなければ他の銘柄を選ぶでしょう。

 

◆面積あたりの所得の意識を

 ―問題は業務用米への対応でしょうか。

 

 中食、外食といった原料として米を使っているところでは、必要な価格と必要な量があるわけで、それが満たされるかどうかが問題になります。
 量と価格の掛け算で原料原価が出ますから、その原料原価以上には出せないとすれば、価格を下げてもらうか、価格が下がらないのであれば量を減らすか、という話になります。ここで使用する量を減らせば、さらに消費量を減らすことになるという心配をしています。というのも以前に価格上昇で使用量を減らした分が戻っているわけではありませんから、ずっと減らし続けることになるのではないかということです。消費者も店で出されるごはんの量が減ったことに対して文句言っている人はいません。むしろ中食や外食の末端価格を上げたら売れなくなります。
 こういう状況のなか、30年産米は主産地でふるい下米が多いという話もあり、そうした中米を使う実需者が出てくればますます末端の商品価格を上げるなどということはできません。
 家庭用向けが減り業務用米とほぼ半々になるなか、中食・外食ががんばって米の消費につなげているのに、使う量を減らさざるを得ないという状況を産地側も考えていただければと思います。

 

 ―同じ米に携わっているのに産地と実需者がかい離してしまっているということでしょうか。

 

 国内の生産側に歩み寄った政策だけであって、米を使ってもらおうという考えがないのですか、という感覚を持ちます。作る側と使用する側は両輪だと思いますが、使用する側から毎年、これでは疲弊するという話が出ているにも関わらず、米価を上げるという意識はどこから来るのかと思います。
 店頭販売でも米の値段が上がれば家計費が増えない限り、米を減らすなり、ほかの食べ物に移るなりしていくはずです。今は家庭で炊飯すること自体が労力の無駄と捉える向きもあって、炊くこと自体も減らしており、あるいは小ロットになっています。また炊飯した米を買ってきて家庭で食べるということもありますから、家庭でも米の消費は減っています。
 米の消費減にさらに影響しかねないのが炭水化物抜きダイエットです。米が悪者にされるような風潮です。そういうなかで外食などの企業努力としては米以外の材料に代えるという動きも出てきています。このように米を使わない方向に発想を変えられたら産地も困るのではないか。
 もちろん最近は経営感覚を持った農業者も増えてきており実需に即した生産をしようという経営者も少しずつ増えています。また米の消費拡大についても、もっとともに考えていかなくてはなりません。

 

 ―産地には例えば多収米への取り組みが必要ですね。

 

 そうですね。ただ、多収米生産は1俵いくらではなく、10aあたりの手取りがどうかという考え方が必要です。そこは一緒に考えていかないと実需者が国産米を使用するということにつながっていきません。
 長いスパンで考えるとこうした考え方に変える必要もありますし、消費が減少しているなかで、米をもっと作っていきたいという人たちはコストを下げて生産し、日本の安全・安心な米で海外に打って出るということも必要だと思います。
 本当に国産米を使うことができる価格帯を検討してもらって作付けも考えていただく必要があると思います。複数の銘柄を作期分散して作付けするなどで、コストダウンとともに実需者が使用できる米を減らさないようにするなどの取り組みをしていただきたいです。
 TPP枠で主食用の輸入米枠がさらに増えるなか、外食産業が輸入米でいい、ということにでもなれば、本当に国産米と輸入米の住み分けということになってしまう。そうならないよう将来を見据えていく必要があると思います。流通業界のわれわれだけでは到底無理な話で産地の対応が求められると思います。

 

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