日常的に行われていた偽装表示 雪印種苗2018年5月10日
「種苗法に違反する表示による牧草種子等の販売」があったとして農林水産省が雪印種苗(株)(雪印メグミルク(株)の連結子会社)に対して、同法第65条に基づいて報告を求めていたが、同社は4月27日に調査結果を農水省に報告した。報告にあたっては「第三者委員会」を設置し、「客観的かつ徹底的な調査を実施」したとしている。その第三者委の「報告書(概要)」を中心にこの問題を考えてみる。
第三者委は「現存する4252件の包装全てを調査」し、その結果以下のような種苗法違反事例を確認している。
(1)牧草・飼料作物、植生作物の種子について、登録品種名を表示して販売しなければならないが、登録品種名を表示せず「普通種」・「緑肥用」とのみ表示して販売した「22条違反関係」が、普通種で11品種、緑肥用で1品種確認された。
また、野菜の種子1品種についても「特定の販売先」に販売する際、品種登録後も当該登録品種名を表示せず、試作系統名を表示して販売していた(販売先の希望を受け入れたもの。なお、平成17 年頃に社内で当該問題が指摘されたこともあったが、その後も違反表示は改善されなかった)。
その原因について「報告書」は、「牧草・飼料作物、植生作物の種子については、法22条1項の表示義務の観点の欠落及び理解不足、野菜の種子については、法22条1項よりも顧客の希望を優先するという種苗法の重要性を理解していない遵法意識の低さである」と指摘している。
(2)牧草・飼料作物、植生作物の種子で、登録品種であったが「育成者権消滅後も品種登録表示をして販売」していた「56条違反」関係事例が8品種、OECD登録表示の誤記による品種登録表示が1品種確認された。
その原因は、「存続期間満了等による育成者権消滅の有無について、管理担当者を定める等により適切な管理が行われていなかったこと及び種苗法についての理解不足若しくは印字の確認不足である」という。
(3)作物名や品種を証票に表示させず種子を販売していた「59条違反」のうち「種類」非表示が2品種、「品種」非表示が12 品種、「品種」の打消し表示(「-」表示)による非表示が10 品種確認された。また、大麦について、耐病性の表示欠落や栽培適地等の誤表示・非表示が3品種、野菜についても表示事項全般の非表示が1品種確認された。
その原因は「表示義務の内容の理解又は表示の確認が不足していたこと」だという。
その上で、「違反表示を生んだ原因」について「雪印種苗の経営陣が種苗法及びその表示義務の重要性を真の意味では理解しておらず、種苗法の表示問題を、真に自らが正面から取り組むべき会社の重要課題であると認識し、行動してこなかった」からだと指摘。その結果として、
▽従業員に対し、種苗法の重要性を理解させるために、意を用い、具体的な行動を行っていなかった。▽従業員が種苗法を正確に理解し、必要知識を習得する適切な機会(社内規程・マニュアル等の整備、研修等)を十分に提供していなかった。▽表示内容の決定に関して権限と責任を持つ責任部署を定め、統一的な運用ができる体制を構築していなかった。ことや▽種苗法の表示義務に関わる諸問題に対し、(外部の専門知識を有する者に相談する等の)客観的な観点を取り入れて対応することを推奨し、求めていなかったことを挙げている。
◆長期にわたって行われていた品種偽装
現存の包装された商品の調査のほかに第三者委は、雪印種苗と雪印メグミルクの役員・従業員・元役員、関係機関へのヒヤリング、関係者のメールサーバーなどのデータの調査。さらに現・元役員・従業員対象のアンケート調査を実施し、合計549名から回答を得ているが、これらの調査をもとに、「品種偽装」の歴史的経過についてもまとめている。
それによると、「平成26年に内部者と思われるものからの告発を受けた新聞記者の来訪を端緒として」調査が実施されていることが判明したが、この調査では
▽過去13年分のデータの存在を承知しながら、10年を超える記録は存在しないとの虚偽の前提をとり、過去の品種偽装行為を裏付ける客観的・具体的なデータの存在が隠された。
▽過去10年以内に品種偽装が疑われる事例が発見されていたにもかかわらず、その調査・確認をしないまま品種偽装はなかったと結論付けた。
▽調査に際し、一部経営幹部を含む社内関係者により、証拠隠滅、ヒアリング記録の改ざんなど不適切な行為が行われた。複数の関係者によって事実・認識と異なる供述がされ、誤った事実認定に至った。
▽適格性を欠く者が社内委員や検証担当者となっていたとしたとした。
その結果、今回の調査では、26年社内調査の結果には依拠することができないと判断し、第三者委として改めて事実関係の解明を行うこととしたという。
そこで明らかになったのは、
▽平成14年1月以前は、北海道・府県のいずれにおいても、組織的・恒常的に品種偽装行為が行われていた。
▽グループ会社雪印食品による牛肉偽装事件の発覚後、14年2月には種苗部内で品種偽装行為を取りやめる旨が決定されたが、それまでの品種偽装の事実や内容を社外に公表・説明せず、顧客への謝罪などの対応はとられず、過去の品種偽装行為を隠蔽するため 、新品種を新たに発売する旨を「偽装」し、顧客に案内していた。
また平成14年1月以前においても、不正の3要素である▽商品の不足や在庫処理といった「動機」、▽関係者が少数・類似品種の存在により発覚の可能性が少ないという「機会」、▽従前からの行為であり顧客に不利益がないという「行為を正当化する理屈」が、「品種偽装行為」の原因となっていたものと認められ、「平成14 年2月以降もそのような偽装行為の原因が完全に解決される事は無く残存した」と指摘している。
またその後、同社取締役会などで「業務プロセス」の改善などが策定されるが、社内関係者に送付されなかったり、「自社内での品種偽装の事実や内部告発の事実を真剣に受け止めず、『事を大きくしないこと』にばかり意が払われ、取締役会での決議内容を実行する決意や責任感が欠けていた」という。
そして今後の再発防止策として
▽偽装・隠ぺい体質を根絶するチャンスは少なくともこれまで2回あったが、いずれの機会も生かされなかった。親会社の関与もありながら、結果的に適切な調査が実施されず、自浄作用が発揮されなかったことは深刻な問題である。今回こそが、最後のチャンスというべきであり、まず経営トップから、今回の事態への「深い反省」と「企業風土の改革」に向けた「強い決意とメッセージ」の宣言をすることを求めている。
その上で、「ガバナンス体制の抜本的な改善・再構築」と「違反表示を予防する」ため、「品種偽装行為を予防する」ための具体的で不断な取り組みが必要だと指摘した。
農水省ではこれらの報告を受け、5月2日に「法第65条の規定に基づき、その実施状況を定期的に報告することと」とし、その第1回目を7月31日までに行うよう命じた。
◆さらに根が深いのか?
第三者委員会の報告をもとに、この問題をかなり詳細に見てきたが、4月27日の雪印種苗の農水省への報告後の5月4日付の「北海道新聞」電子版では「雪印種苗偽装新たに10品種 元幹部証言 73年から」の見出しで、同紙が入手した「内部資料」で判明したことを報じている。同様の内容が「毎日新聞」(5月4日付web版)でも報じられており、同社の「偽装とその隠蔽」体質問題の根は想像以上に深いといえる。北海道の酪農家から大きな信頼を得ていた雪印メググループのこうした行為が今後どのようなことを引き起こすのか注意が必要だといえる。
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