組合員視点で存在感を 家の光文化賞JAトップフォーラム2017年8月3日
家の光文化賞農協懇話会と(一社)家の光協会は8月1、2日横浜市で、家の光文化賞JAトップフォーラム2017」を行った。今年度の文化賞を受賞したJAあいち尾東(愛知県)とJAしまね(島根県)、JA延岡(宮崎県)の3JAの教育文化活動への取り組み報告をもとにパネルディスカッションを行ない、組合員のアクティブ・メンバーシップ確立に基づいた組織基盤の強化策を探った。全国のJAから常勤役員ら約430人が参加した。
フォーラムのテーマは「創造的自己改革に果たす教育文化活動の役割~多様化する組合員の参加・参画促進と役職員の意識改革~」。テーマを解題した増田佳昭・滋賀県立大学教授は、今日のJAを巡る状況について、農協法改正による制度の危機とともに、「直視すべきは組織の危機」を強調。
(写真上)常勤役員ら430人が参加した家の光文化賞JAトップフォーラム2017の会場
つまり組合員の世代交代、JA離れのスピードが速くなっている中で組合員のJAに対する期待が高まっているものの、不満が高じて、極端な変革を求める〝劇薬〟を期待する声もあることを危惧する。そこで組織の危機を克服するには、JAはしっかりと組合員と地域に向き合う、組合員目線でJAの必要性を確認する、目に見える改革をすすめる、の3つの取り組むべき対策を挙げる。
その上で、JAの教育文化活動の役割を、(1)組合員のニーズにもとづく学びと活動の場、(2)役職員と組合員が目線を共有する協働と気づきの場、(3)協同組合らしさを再認識し、JAの活力を生み出す場、と位置づける。
(写真左から)石黒秀一・JAあいち尾東代表理事組合長、竹下正幸・JAしまね代表理事組合長、山本照弘・JA延岡代表理事組合長
文化賞受賞のJAあいち尾東は、支店協同活動、組合員の参加・参画、女性部活動、フレッシュミズ活動、『家の光』事業の4つの面で、教育文化活動を展開。支店では「ふれあい朝市」や「こども農園」の取り組みがある。このほか相続セミナーや女性部の芸能大会、『家の光』記事活用教室など、多様な活動を行なっている。こうした活動を通じて、同JAの石黒秀一・代表理事組合長は「健康で豊かな地域づくりに努め、地域になくてはならないJAをめざす」と話した。
JAしまねは、合併して1県1JAになり3年目。地域密着型の教育文化活動に取り組み、組合員とともに、JA女子大学やシニア向け講座、「組合員学びのひろば」などさまざまな協同活動を展開。旧JA間の教育文化活動の高位平準化をめざし活動を展開している。同JAの竹下正幸代表理事組合長は「受賞を契機に、より一層総合事業のメリットを活かし、信用されるJAに向け、役職員一体となって取り組みたい」と、意欲を示した。
(写真)増田佳昭・滋賀県立大学教授
JA延岡は昨年、アグリスクールやクッキングスタジオとコミュニティホールを建設し、料理教室やクッキングフェスタ活動などを充実させた。また農業伝承文化活動による「麦ふみ大会」、地域の環境保全活動など、ユニークで幅広い教育文化活動を展開している。山本照弘代表理事組合長は「あとから来る者のため、田畑を耕し、種を用意しておく、山や川や海をきれいにしておくのである。私たちはそのタスキを次世代へ渡さなければならない」と現世代が取り組むべき役割を強調した。
このほか北川太一・福井県立大学教授が「共感から感動へ 組合員一人ひとりが主人公になるJAめざして」で特別講演。「創造的自己改革は、何も新しいことではない。長年、こつこつ取り組んで来たことに、もう一度光りを与え、自分たちの力で考えていこうということだ」として、JAの存在の証(あかし)であるアイデンティティはなにかということをもう一度考えてみる必要があると言う。また、農業専門事業体化論に対して、食と農に関心を持つ者の組織であるという対抗軸を明確にすることが「長い目でみて力になる」と指摘した。
2日目は、3JAの報告をもとにパネルディスカッションを行ない、金子勝・慶應大学教授が「アベノミクスと地域衰退~農と食から立て直す~」のテーマで記念講演した。
(写真)北川太一・福井県立大学教授
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