医師の大都市集中打開を 地域医療を守る病院協が要望2018年5月8日
地域医療を守る病院協議会(五病協、議長・雨宮勇厚生連会長)は4月27日、日本専門医機構に対して「新専門医制度に関する要望書」を提出した。
今年4月から総合診療領域を加えた新専門医制度が新たに始まった。新制度ではこれまで18領域あった専門医に加えて、
基本領域の専門医となる「総合診療専門医」が19番目として創設された。
厚生労働省の定義によると、総合診療専門医とは「それぞれの診療領域で十分な知識と経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師である」とされている。そして、その総合的な能力により、特に地域での医療や介護、保健などの分野でリーダーシップを発揮し、多様な医療サービスを提供できる医師としての役割が期待されている。
しかし、制度の中心を担い、専門医を養成する日本専門医機構(吉村博邦理事長)によれば、新制度の下で4月1日付けで19領域8378名の専攻医が採用されたが、そのうち「総合診療専門医」として採用・登録されたのは全体の約2.2%の184名に過ぎない。しかも、従来の18領域でも東京などの大都市に集中し、診療科によっては、登録数がゼロ、もしくは1名か2名程度の道県が多数存在している。
地域を守る病院協議会は、こうした医師の大都市集中の現状打開とその是正を求めて、機構に対して要望書を提出したもの。協議会は厚生連をはじめ、全国自治体病院協議会、全国国民健康保険診療施設協議会、日本慢性期医療協会、地域包括ケア病棟協会で組織され、要望書は各会長名で出された。
協議会では、都道府県別の人口比に対する専門医の応募登録者数などを独自に調べた。それによると、東京の人口は日本の人口の10.6%だが、専門医の登録数は全体の21.5%と人口比率を大きく上回っている。また診療科によっては異なるが、内科や外科、小児科など主要な診療科では19%から30%程度となっており、協議会はこの数字を「集中と言わざるを得ない」と指摘し、是正を求めている。
そして、このまま現状を放置すれば、現在も問題となっている「地域偏在と診療科偏在」がますます拡大するだけではなく、地方の基幹病院や大学病院においても医師不足によって「立ちいかなくなる」との危惧感を示した。協議会はその上で、機構の中に新設される「総合診療専門医に関する運営委員会」での議論深化と課題解決に向けた協議の加速化を求めている。
協議会は機構の組織運営のあり方についても触れ、特に機構のホームページにおいて、(1)新制度についての情報発信不足、(2)専門医の応募状況や理事会などの動きが適時適正に情報提供されていない、(3)機構の中で決定されたことの経緯が不透明だとして、その改善を強く求めた。
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