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JAの活動:体験型農園の魅力と可能性

【現地レポート・JAぎふ】都市農業が「農」あるくらしを身近な社会へ2017年3月31日

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都市農業から新たな風吹かせよう
【現地レポート・JAぎふ】農家の農園開設・運営JAが支援市民につなぐ

 JAグループは昨年9月に「体験型農園の普及に向けたJAグループの取組方針」を決めた。都市農業振興に向けたJAグループの基本的考え方(28年8月決定)において、都市農業の目指す姿を「農あるくらしを身近で気軽に楽しむ社会」とし、その実現に向けた重要な具体策として体験型農園を位置づけている。

都市住民を農協の応援団に。生協との連携もすすめる。作付を待つ体験農園 体験型農園は、▽農園側が作付計画を作成し、種苗や農機具など必要な資材等を用意、▽園主が栽培講習を行うほか、▽利用者同士の交流イベントなども行うといった地域住民、消費者参加型の農園だ。従来の区画貸しの市民農園と違い、利用者満足をいかに高めるかが重要となる。
 JAからすれば、農業とJAへの応援団づくり、農業者の所得増大、さらに新規就農者育成や食農教育などJAグループが創造的自己改革で掲げた目標実現のための実践でもある。市民農園より利用料は高価だが、国民の農への関心が高まるなか、多くの利用者が期待できる。
 都市農業から新しい価値観を社会に吹き込むJAの事業として、期待されるこの取り組みを特集する。

表 従来の市民農園と体験型農園の違い


【現地レポート・JAぎふ】農家の農園開設・運営 JAが支援 市民につなぐ

 JAぎふでは農家が園主となって利用者に作付けから収穫まで指導する体験型農園「マイ・ラーニング・ガーデン」の開設を本格化させる。開設のための農園整備、作付計画、収支試算などをJAが支援し、組合員農家の農地維持と都市農業の振興を図っていく方針だ。

◆   ◇

 JAぎふは、地域開発部が中心となり、今年(平成29年)2月に「都市農業に関するJAぎふの基本的考え方」を決めた。
 そこではJAぎふ管内の市街化区域における厳しい農業の実態を示した。もともと長良川の砂壌土を利用し多彩な野菜が生産できる環境にあり、特産品の大根は10aあたり70万円程度の販売収入となり経費を差し引いても手取りは残る。しかし、都市化が進み、今では固定資産税を差し引くと赤字になってしまう。枝豆栽培でかろうじて黒字になるが、それも数百円程度の水準、まして稲作では10aあたり20万円以上の赤字になるというのがJAの試算である。
 市街化区域では、産業としての農業は極めて厳しく都市農家は今、営農継続か離農か、選択を迫られているとの認識にJAは立つ。従来は、都市的活用をすすめてきたが、人口減少等によりそれも厳しい中でその発想を大きく転換し、市街化区域農地を農的に活用し、農地と農業を守っていく手法を検討し、そのひとつの手法として体験型農園を掲げた。

◆オールJAで向き合う

オープン間近の農園を整備する地域開発部資産相談課の村下直史主任(左)。右は野々村隆史部長 都市農業に関するJAとしての基本的考え方は、小規模兼業農家が大半の都市農家に対し、個々の組合員のライフサイクルや地域性に配慮して、まずは各支店で積極的に農家組合員と対話することを掲げた。その対話によってニーズを聞き取り、専門家を交えてオールJAでその課題に向き合うこととした。
 同JA地域開発部の野々村隆史部長は「課題は農業振興なのだから営農部、という考え方はしないということ。組合員には営農継続の悩みだけでなく、相続や生活面での資金などさまざまなニーズがある。それを聞き出すには、税務の知識がある資産管理部門が向いている。考えてみれば縦割りではなく、もともとの農協の姿を取り戻すということかもしれません」と話す。
 JAは、さまざまニーズを聞き取るために、職員教育の徹底に力を入れるとともに、組合員のニーズに的確に応えるために、税理士や弁護士などとの連携を強化するための会合を持つことにした。一方で、組合員自身が自らの課題に関する知識や情報が得られるよう、セミナーも計画的に開催している。
 こうしたオールJA体制のもとで組合員の課題に幅広く対応し、たとえば、営農支援であれば事業承継の手伝いや労働力の提供、生活支援であれば家族の認知症対策としての遺言・家族信託などのサポート、さらに資産相談支援であれば土地活用提案や相続支援などというように具体的対応をしていくのが同JAの方針である。さらに、営農継続希望者のため、岐阜版都市農業振興地方計画や生産緑地制度の導入を自治体に対して提案している。
 したがって、今回のテーマである体験農園の取り組みも、組合員のニーズを営農面、生活面、資産相談面からバランスを考慮したうえで、かけがえのない農地を少しでも守り都市農地の多様な機能発揮につなげる新たなビジネスモデルとして農家組合員に提案する選択肢のひとつと位置づけている。
 「かつてのように農地を手放して都市的活用をすればいいという時代ではない。全中の市民農園等研究会への参加等を通じて、市街化区域農地の農的な活用が選択肢となることに気付いた。バランスのとれた資産管理事業として取り組む必要があると考えています」と野々村部長は時代の変化に合わせて農家組合員に向き合う基本を強調する。

◆都市住民を担い手に

 同時に、農園関連事業についてもこれまでの取り組みをふまえて今後の取り組みを体系的に整理している。
 農業をしたいという地域住民に対して▽自分で行いたいという市民農園などの自己型、▽農業を勉強したいという体験型農園などの学習型、▽食農教育など青年部や支店が主催する農業体験などの教室型、そして▽農業公園構想などの地域貢献事業である。
 このうちの学習型として位置づけた取り組みのひとつがMLG(マイ・ラーニング・ガーデン)である。
 JAは▽農作業は今まで通り続けたいが高齢のため農地全体の管理が難しくなってきた、▽農地のままで土地活用がしたい、▽栽培技術の指導を通じて仲間づくりをしたいなどと考えている農家組合員に提案をしている。
 従来の市民農園と違うのは、利用者はあくまで体験が目的であり利用者と園主との間に農地の区画貸しの貸借関係はないこと、園主が作付け品目を決定しJAの支援を受けて指導すること、種苗や農機具などは園主が準備するが、利用者にとっては身体一つで参加することができて仲間づくり、健康促進の場として楽しむことができるなどである。同JAのMLGは一区画20平方mで年間2万8000円の利用料。利用契約は1年間としている。
 JAはこれを開設する場合は農家組合員に対して農地整備費用の一定額の助成や、農具や休憩施設の貸与などさまざまな支援を行うとともに収支計算を個別に提示し、開設から継続した運営までサポートする。28年からの3か年計画で管内に12か所の整備を予定している。
 この3月に開園した管内2番目となるMLGの園主はJAの直売所の出荷者が減少していることから、地域住民に自分の農園利用を呼びかけ、栽培指導をして直売所出荷を増やしていこうと意気込んでいるという。野々村部長は「単に所得の向上のためではなく、自らがリーダーになり地域住民を巻き込んで農業の担い手として育てていこうという組合員自らの取り組み。それをJAが支援するということです」と期待を寄せる。

◆協同の地域づくりにも

 JAぎふがMLGを開設し利用者を募集していることを「初めての農業体験してみませんか」とよびかけたのはコープぎふだ。コープぎふの組合員向けのパンフレットに掲載した。農作物を育てたいが何から始めていいか分からない人や子どもや仲間と農業体験したい人などに、農家による栽培指導と気軽に参加できることなどを伝えた。
 コープぎふの錦見泰治くらしの活動部部長によると組合員が生産者と交流する機会や、生協職員が農作業の手伝いをするなどの取り組みはあったが、「農家から栽培の知識や経験を教えてもらって農業体験することはなかなかないこと。JAのこうした取り組みをきっかけに農業の現場をもっと知りたいという組合員との橋渡しをしていければ」と話している。
 JAぎふは生協との連携で若年層が都市農業に関心を持ってもらえることに期待し「組合員農家の農地を守る事業が、農を基軸にした住民との触れあいにもつながっていく」と地域住民とのコミュニティづくりも重要な点だと指摘している。
(写真上から)都市住民を農協の応援団に。生協との連携もすすめる。作付を待つ体験農園
       オープン間近の農園を整備する地域開発部資産相談課の村下直史主任(左)。右は野々村隆史部長

・YouTubeのJAグループチャンネル:体験型農園の紹介は、簡約版はこちら、全体版はこちらから。

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