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JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー

機能を絞りモデル農機 「所有」から共同利用へ【冨田健司・JA全農生産資材部長】2018年6月27日

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 生産資材のコスト低減はJA改革の大きな課題の一つ。JA全農は肥料銘柄の絞り込み、ジェネリック農薬の普及、低価格農機の開発など、着実に進めています。6月19日に行われた新世紀JA研究会第19回課題別セミナーから、今回は農機の取り組みをJA全農の冨田健司生産資材部長より報告します。

◆取り巻く情勢

(1)農機が果たしてきた役割と課題
 農機の普及は、生産者を重労働から解放するとともに、労働時間を大幅に削減し生産コスト低減、および適期作業・作業精度の向上(収量増と品質向上)に貢献してきました。
 しかしながら、米生産費に占める農機具費に占める割合は約20%と依然高く、生産者の経営に与える影響は大きいという実態にあります。

(2)農機の需要動向
 農家数の減少に伴い、国内農機需要は減少し、トラクタ・コンバイン・田植機の主要3機種では、平成2年25万3000台から平成28年7万3000台へと7割減少しています。
 一方で、1経営体あたりの経営規模拡大や法人化が進んでおり、これに伴い、農機の大型化が進んでいます。

(3)米生産費に占める農機コスト
 作付け規模別の米生産費をみると、労働費は経営規模拡大にともなって農機導入がすすみ、労働時間が短縮されるため減少しています。その一方で、経営規模が拡大すると農機の所有台数が増加することから、農機具費の負担は変わらず生産費の2割を占める実態にあります。
 この背景には、個人所有が中心で共同利用が少ないため、機械1台当たりの利用面積が小さく、これがコスト高の要因になっています。

 

◆農業機械の資材コスト低減の取り組み

冨田健司・JA全農生産資材部長 JAグループでは、生産者の所得向上に向け、<1>物財費の削減、<2>労働費の低減、<3>生産性向上に資する技術普及の3つの柱でトータル生産コストの低減に取り組んできています。「農林水産業・地域の活力創造プラン」に係る農機事業の対応として、「農機コスト低減の3原則」に沿った実施具体策を策定して自己改革を実践しています。

(1)機能を絞った低価格モデル農機(大型トラクター)の共同購入
 生産現場の声を反映した「低価格モデル農機(大型トラクター)」仕様を決定し、メーカーに開発要求し、全国の生産者から積み上げた台数をもとに、全農が最も有利な条件で大量・一括購入します。

(2)「所有」から「共同利用」への転換
 農機シェアリース(大型コンバインの共同利用)と野菜作機械レンタル事業を拡大し、共同利用への転換を進めます。

(3)生産者を支援する修理・アフターサービス体制の整備
 生産者によるセルフメンテナンスの促進や部品の共通化・規格統一等による機械の維持コスト削減を進めます。
 また、中古農機査定士の育成やインターネット活用により中古農機の流通促進を進めます。
 迅速な部品配送、修理・整備対応をおこなうJAグループのアフターサービス体制を整備します。

 

◆農機コスト低減に向けた具体策と取り組み状況

(1)低価格モデル農機の共同購入
 低価格モデル農機の共同購入にあたり、まず第1弾として、汎用性が高く、機能簡素化の要望が強かった大型トラクターより着手することとしました。
 国内におけるトラクターの市場規模は年間約4万台。50~70馬力クラスの大型トラクターが年間約4000台、450型式あるなか、生産現場の声を反映した大型トラクター(60馬力クラス)1~2型式に絞り込み、メーカーに開発要求をおこないました。
 共同購入の目標台数は全国1000台(平成30~32年の3か年)とし、TAC・県域担い手サポートセンターとも連携をはかり、提案先の生産者をリストアップ(1万3461名)、共同購入の提案と購入意向の確認をおこない、全国で約2500名の生産者が3年以内に購入を希望しています。
 30年6月、メーカー各社から提示されたトラクターの仕様・見積を確認のうえ、仕入価格が最も有利な型式を選定し、7月より購入を希望した生産者へ製品・価格を案内、10月より納品を開始します。

(2)「所有」から「共同利用」への転換
 コンバインなど年間1~2週間程度しか使わない季節性の高い機種は、「所有」するより複数農家での「共同利用」をすすめ、経営規模拡大、複合経営推進等のための機械投資を抑制します。
 ア.大型コンバインのシェアリース(収穫時期が異なる4名程度の生産者を1チームとして1台の機械を共同利用)
 29年度・10チーム(37経営体)組成、利用結果は565日/10台(1経営体あたり約15日・15㌶)となり、購入した場合と比較し2割程度コスト低減を実現しました。
 イ.野菜作機械レンタル
 タマネギ・白ネギ用機械15台を11県で広域活用し、延べ193日稼動しました。

(3)生産者を支援するアフターサービス体制の整備
 ア.生産者によるセルフメンテナンスの促進
 セルフメンテナンス講習は県域農機展示会や、JA農機センター等を活用して実施し、担い手から好評を得ています。
 イ.中古農機の流通促進
 平成29年12月に関東4県でネット掲載を開始しました。また、中古農機査定士を年間317名(累計820名)養成しました。
 ウ.アフターサービス体制の整備
 JA職員の経験年数に応じたスキルアップのため、JAグループ農業機械検定を実施し、1級ならびに2級合格者を累計244名育成しました。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

 

(関連記事)
生産者の声反映した共同購入大型トラクター決定 JA全農(18.06.29)
JA全農が農機メーカーに開発要求(17.10.02)

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