JAの活動:農業新時代 なくてはならないJAめざして
【座談会】「よい農協」めざし議論できる組織へ(1)2019年4月10日
【出席者】
JAぎふ代表理事専務岩佐哲司氏
JA十和田おいらせ代表理事専務小林光浩氏
文芸アナリスト大金義昭氏
JA全国大会を経て、JAグループは新たな3年に向けたスタートを切った。どのような組織も、時代・社会の変化に対応し、常に改革していかないと取り残される。日本の農協は、いま大きな転換期にある。これからの農協をリードする立場にあるJA十和田おいらせの小林光浩専務、JAぎふの岩佐哲司専務に農協への思い、これから向かうべき道を聞いた。司会・進行は文芸アナリストの大金義昭氏。
1:「JA綱領」の原点に帰れ
JAぎふ代表理事専務 岩佐 哲司 氏
大金 季節は春の盛りですが、国内の農業や農業協同組合は「冬の時代」のただ中にあるとも言えますね。JAが協同組合として生き残れるかどうかの正念場とも言い換えられます。そんな時代の最先端でリーダーシップを発揮しておられるお二人に、JA運動についての考え方や取り組みを聞かせていただき、全国の皆さんの参考になればと思います。去る3月のJA全国大会でも「ピンチをチャンスにする」基本姿勢が窺えました。大会の決議内容も含め、お二人の協同組合への思いを伺えれば幸いです。まずはJAとの出会いから、お話を聞かせてください。
岩佐 1960年生まれで、「新人類」と言われている世代です。何も知らずに農協に入りましたが、最初に農協のことを学んだのは、中央会での1か月の泊まり込み研修です。そこでロッチデールに始まる協同組合の歴史と役割について学びました。いまこの研修はありませんが、そのような研修は必要ですね。入組後は、営業店を皮切りに金融、企画畑を歩んできました。
JAぎふは来年度で合併11年目になります。正・准合わせて10万3000人の組合員がいます。県都にあるJAといっても、面積では中山間地域が多く、耕地整理が進んでいない農地も少なくありません。JAでの仕事を通じ、「農協人」として、また社会人として、どう仕事に向き合うべきかについて教えられました。
小林 1957年生まれです。農村なので農協、役場はあるものとして育ち、農家の長男だったので、仕事をするなら農協に、と考えていました。協同組合のことは農協学園で教えられ、株式会社との違いなどに興味を持ちました。
当時学園長だった秋田義信先生に教えられ、いまだに答えは出ていませんが「よい農協とは何か」を常に考えてきました。中央会では教育部門以外、一通りやり、コンサル担当として破綻状態のJAに2回出向もしました。57歳の役職定年後、地元JAから声がかかり、「よい農協とは」を実践しようとの思いで引き受けました。
◆日本国憲法にも匹敵
大金 先のJA全国大会は「自己改革」の一環として位置付けられましたが、どのように受け止めていますか。
岩佐 JAは一番悪いところというか、組織風土として「知らしむべからず、依らしむべし」といった傾向があるのではないでしょうか。これまでは、指導してあげようという中央会の親心が強かったと思います。その反省から、今回は県大会からの積み上げ方式になったと思いますが、それは新しい試みとしてよかったのではないでしょうか。決議された「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」の3大目標の背景には、これまで3年間の自己改革は一定のところまでできたので、後は組合員とともに自ら考えようということだと思います。
JA綱領は6つの取り組み課題を掲げていますが、大事なのは冒頭の部分の「わたしたちJAの組合員・役職員は、協同組合運動の基本的な定義・価値・原則に基づき行動します」です。この趣旨が今回の決議に入っているのは評価できます。JA綱領は日本国憲法にも匹敵する内容だと思います。職員にも「協同組合はこれがすべてだ」と話しています。
◆自ら種をまき続ける
大金 JAcom3月6日付【提言 農協改革の真の目的】農業者と共に国民に目を向け食料自給率の向上を目標に(田代洋一・横浜国立大学・大妻女子大学名誉教授)に寄稿された田代洋一さんの分析を借りれば、「農業者と共に国民に目を向け」主体的に時代を切り開くということでした。そのもくろみは大会で共有されたと思いたい。そのためにも、大会決議の3つの目標やアクティブメンバーシップの取り組みが、国民的な課題である食料自給率の向上や農業の多面的機能などに結びつく積極果敢な運動が欠かせませんが、いかがですか。
小林 JA大会で疑問に思うのは、目的と手段とをはき違えているのではないかということです。組合員と共に協同活動と言いますが、それは当たり前のこと。あえて決議するようなことかということです。もう一つ、内外へのアピールについてですが、農協は何をしようとしているのかということです。それがしっかり見えません。
5年間地元の農協にいて、経営理念に「種をまき続けます」を掲げてきました。これは「自己改革」を続けようという意味です。しかし、JA綱領に基づき、経営理念について話し合うことは大事ですが、これが自分の身になっていないのではないでしょうか。念仏になっては組合員の心に浸み込みません。自ら種子をまくには、問題意識が必要です。それを持つためにも、職員全員に新聞の切り抜きを推奨。それをもとに感想文を書き、職場や朝礼で話題にするようにしています。
大金 JA全国大会は、いわば「協同組合の原点」に立ち返ったということでしょうかね。3年に1度の大会ですから、広く国民に訴える構えも欲しかった。
小林 私も国民にしっかりとアピールする大会であるべきだと考えます。一つは、JAはわが国の課題である食料自給率の向上を、農業生産者と「地産地消」の消費者が組合員としての協同組合活動を通じて実現しようという取り組みです。もう一つは、JAは高齢社会の中、地方や農村における経済難民問題を協同組合活動によって救済しようという取り組みです。
岩佐 JA自己改革で3年間突っ走ってきました。資本主義社会の中で、協同組合とは何かが問われた改革だったと思います。大会はその全国段階の発信だったといえますが、JAぎふにとっては十分な問題提起だったと考えています。農協は、ピラミッド型でなく、構成員の一人ひとりが力をつけて支えるエンパワーメント組織が馴染みます。そうでないと「自己改革」の組織にはなりません。
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