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JAの活動:JA全中 営農担い手支援事業特集

【第3回JA営農・経済フォーラム】自己改革の「見える化」を2017年10月2日

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組合員からの評価が最重要

 JA全中は自己改革を加速させるためJAの営農・経済担当常勤役員と幹部職員を対象にした第3回JA営農・経済フォーラムを8月から9月にかけて全国3か所で開いた。このフォーラムは自己改革の最大目的である「農業者の所得増大」、「農業生産の増大」の実現に向けた取り組みのための研修会で一昨年から始まった。改革を実践し組合員から「なくてはならない組織」として評価されるための販売・購買事業と組織基盤強化をめざし識者の講演や実践報告、分科会で議論した。全国で500名のJA担当役職員が参加した。報告や講演の全体を集約した。〈東日本地区=8月24日~25日(横浜市)、中日本地区=9月4日~5日(大阪市)、西日本地区=9月13日~14日(福岡市)〉

営農経済フォーラム会場DSC_0060(写真)ディスカッションのようす

組合員の願い実現が基本
JA全中 肱岡 弘典 常務理事

 JA全中の肱岡弘典常務はあいさつで「組合員のニーズや願いを実現することはそもそも協同組合の目的。危機感をもって実践を」など以下のように呼びかけた。

◆   ◆

肱岡弘典・JA全中常務理事 政府が定めた農協改革集中推進期間は平成31年5月まで。残り2年を切っている。担い手農業者や組合員との関係をもう一度強化する組織基盤強化も重要であることを肝に銘じて取り組み、結果として組合員から「JAはなくてはならない組織である」という高い評価を獲得しなればならない。
 そもそもJAの自己改革は政府・与党による協同組合を否定するような「農協改革」が発端となっているが、組合員のニーズや願いに応えること、JAへの積極的な参加と連帯により協同の成果を実現するのはわれわれ協同組合の本来の使命だ。
 しかし、状況は決してよくない。農水省が実施したJA自己改革評価アンケートでJAの8割は自己改革に取り組んでいると回答しているが、その取り組みを認知している担い手農家は3割にとどまっている。認識に大きなかい離がみられる。担い手農家とのコミュニケーションが不足しており、JAの真摯な努力が伝わっていないことを示している。われわれは全国の正・准組合員1000万人を対象に平成31年4月に独自調査を実施する。営農経済事業改革と組織基盤強化を合わせて進めるという、組合員と一体となった自己改革の実現が何よりも重要であることを共通認識としたい。

(写真)肱岡弘典・JA全中常務理事

情勢報告
担い手に応える事業再構築
JA全中JA支援部 元広 雅樹 次長

 フォーラムではJA全中JA支援部の元広雅樹次長が「JA営農・経済事業をめぐる情勢と今後の取り組み方向について」をテーマに情勢報告をした。

◆   ◆

元広雅樹・JA全中JA支援部次長 平成29年の基幹的農業従事者数は150万人。年間12万人がリタイアしている。農業就業者人口は200万人を下回り181万人となった。世代交代の時期にあり若い農業者の確保が課題だ。
 担い手の利用面積は235万haと全耕地面積の52%を占める。政府は平成35年までに担い手への集積率を8割とする方針だ。利用集積面積のうち集落営農は49万haから伸び悩んでおりJAとして組織化を再検討する必要がある。また、農業経営体のうち販売金額1000万円以上層ではJAの事業シェアが平均以下であることも課題だ。
 一方、農業産出額は26年度の8.4兆円が27年度に8.8兆円と増加に転じた。ただ、JAの取扱高は5割のまま横ばいであり、担い手のニーズへの対応と事業提案がJAに求められている。こうしたなか施行された改正農協法ではJAの経営目的として「農業所得の増大に最大限配慮する」ことが明確化され、改正監督指針には所得向上に向けた経済活動を積極的に行う組織となることを明記、改革実施状況は調査されることになった。 
 しかし、JAグループとしては、自主・自立の協同組合として組合員の願いの実現に軸足を置いた創造的自己改革に挑戦し十分な成果をあげていくことにしている。国に言われて取り組むのではなく農業者が世代交代にあるなか、自らの事業を見直そうという運動であり、その成果が組合員から評価されなければ組織解体につながるという危機感をわれわれは持たなければならない。
 自己改革の重点実施分野に「営農・経済事業への経営資源のシフト」があるが、これに取り組むJAは4割にとどまっている。TACを含む担い手経営体に出向く専任部署を設置しているJAは約半数となっている。
 28年度の取り組みを総括すると優良事例はみられるが、全体として組合員を巻き込んだ具体的な行動につながっていない状況だ。
 今後のポイントは、平成31年4月実施の組合員1000万人アンケートで高い評価を実現するため、農業者の所得増大に向けて「販売事業を中心とした事業伸張とリスク管理の強化、生産性向上による部門収支改善」が必要である。また、JA・経済連・全農の機能分担の見直しを含め、グループ全体の営農経済事業の再構築への取り組みも必要だが、組合員の満足度向上と納得感がなければならず、出向く活動で理解を得る必要がある。

(写真)元広 雅樹・JA全中JA支援部 次長

基調講演Ⅰ
挑戦する文化を創ろう
日本大学商学部 川野 克典 教授

 3会場共通の基調講演として日大の川野克典教授が「JA自己改革の戦略的展開」について話した。川野教授は「組合員、利用者のニーズの変化に対応して変化を繰り返さなければ恐竜と同じくJA、日本農業は滅びてしまう」と指摘し、失敗を恐れず挑戦する文化を創ることの大切さなどを呼びかけた。

◆   ◆

川野克典・日本大学商学部教授 「創造的」とは天地創造に近いぐらい、すべてをゼロから新しいJA、農業を創る決意を意味する。この言葉は重い。
 「自己」とは「自我」や「自分」とは異なり、客観的、他から意識されるという意味が含まれる。JA自ら意思決定し、そして他からの評価に責任を負うことを意味する。しかし、自己満足、自己中心になっていないか。
 「改革」とは、社会変動や危機に対応、適合するように制度、組織、政策、人の意識、情報システムを統合的かつ大胆に変更することだ。改善は日常的に少しづつよくしていくことを指すが改革は違う。
 「戦略的展開」とは、全体的、長期的な視点から見て、押し進めるべきこと、追加すべきこと、止めるべきことをはっきりさせて次の段階に進むことを言う。JA自己改革も1年半を経過して次の段階に入ったのではないか。
 スマートフォンや宅配便サービスなどは顧客の声から生まれたものではない。その意味で組合員の期待に応えるのではなく、期待を超えなければ評価されないだろう。しかしJAの取り組みはまだ期待に応える水準にも達していないのではないか。利用者の期待は時間とともに増大する。期待水準が上がっていることを理解する必要がある。
 JAが取り組むべきことは7つ。(1)農業技術指導員から農業販売指導員へと人財を集約、(2)担い手や新技術・品種を生み出す「マザーファーム」をJAがつくる、(3)直売所モデルも見直すなど取引、販売の全面的見直しを図る、(4)差別化され経済性を追求した6次産業化、(5)部門の壁を壊し真の総合事業体へ・自前主義を脱却して他JA、企業との連携を、(6)ICTから逃げず科学としての農業へ、(7)徹底した業務見直しによる「人財」の捻出、である。
 とくに「部門の壁」はJA職員の意欲がないと崩壊しない。JAの存在意義を職員に教育することが必要ではないか。また、体質的に公務員と同じになっていないか。失敗を恐れず挑戦する文化を創るべきだ。経営計画は仮説であり、成果が出ない計画は見直しを。他の組織は変わった。JAも変われるはず。言い訳するなら行動してほしい。

(写真)川野克典・日本大学商学部教授

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