JAの活動:第28回JA全国大会特集「農業新時代・JAグループが目指すもの」
組合員の「声」起点に事業転換 第28回JA全国大会2019年3月8日
第28回JA全国大会が3月7日、東京都港区芝公園のザ・プリンスパークタワーで開かれ、2019年度から22年度の3か年のJA運動の方向を決めた。特に今回は、5年間の「農協改革集中推進期間」の最終年に当たり、各都道府県大会を先行させ、各JAが取り組んだ改革の成果を確認し、さらに前進させることを確認した。そのため(1)組合員の声を起点として事業・活動に取り組む、(2)自ら不断の改革に挑み続ける、(3)急速に変化する農業生産構造に対応し、事業モデルの転換等を果たす、(4)多様な組織と連携して地域の活性化に貢献する、などを決議した。全国のJA関係者ら約1600人が参加した。
(写真)一層の改革前進を確認した第28回JA全国大会
大会では、主催者のJA全中の中家徹会長が「組合員の声を起点に、多様な農業や地域の実態に応じて創意工夫を活かし、自ら不断の改革に挑み続けることで、農業と地域の未来を拓いていく」と決意を述べた。
来賓として出席した安倍晋三首相は、農業産出額や農産物輸出の拡大、就農する若者の増加などをJA自己改革の成果として挙げ、「さらに自己改革を促進し、若者が夢と希望を持って飛び込むような活力ある農業を共に展開して行こう」と、JAの自己改革を評価した。
また国際協同組合同盟(ICA)のアリエル・グアルコ会長はビデオメッセージで、世界的に価値観が多様化するなかで、より包摂的な社会を実現するため、多元的な協同組合構築の必要性を指摘し、「日本の協同組合が世界の見本となることを期待する」と、日本の農協に期待を込めた。このほか吉川貴盛農水大臣(高野光二郎政務官代読)、二田孝治全国農業会議所会長がそれぞれあいさつした。
JA改革の取り組みでは、各都道府県の成果を報告。さらにJAグループへのメッセージとして、小売り、惣菜、食品、コンビニエンスストア、外食、消費者、PR、労働力支援、ITの各業界などの関係者10人のビデオメッセージを披露した。JA全国大会では初めての試みで、JA改革で取り組んでいるマーケットインの販売・生産へ対応したもので、生活者の購買行動、食品製造業への向き合い方、海外での和食・日本食ニーズなどについて、それぞれ提案・注文を述べた。
大会議案では、「創造的自己改革の実践~組合員とともに農業・地域の未来を拓く~」のスローガンのもと、引き続き「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を重点課題として取り組む。そのためJAグループの実践方針として、「組合員の声にも基づく運営を徹底する」ことを基本に、「地域の活性化への貢献」「自己改革を支える経営基盤強化」「アクティブメンバーシップの確立」「国民理解の醸成」に努めることなどを提案し、決定した。議案に対して3人が意見表明した。
(写真)アリエル・グアルコ氏
【意見表明】
新たな協同組合拓く
北海道農協青年部協議会・今野邦仁会長
地域住民みんなを「食べるサポーター」、「利用するサポーター」、「参加するサポーター」、それに「新たに関係交流するサポーター」として捉え、新たな協同組合の姿を創っていきたい。これからのJAを担うわれわれ青年部員が長期展望を持って営農できるように、総合事業を基軸にしたJAの事業運営の転換を進めたい。そのため全てのJAに青年部組織をつくり、経営に参加していきたい。このためポリシーブックで青年部員の思いを取り組みのほか政策提言してきた。6万人の盟友とともに自己改革に邁進したい
(写真)今野邦仁氏
50万パワーの発揮で
宮城県JAみやぎ女性組織協議会・佐々木美和子会長
農業者としての喜びを実感しているが、2つの不安がある。一つは頻発する自然災害、もう一つは自由貿易の影響。次々と農産物が輸入されるが、だれがどうやって国民の食料の安全を保証するのか。安全で安心できる食料をわが子の時代につなげられるか心配している。JAは幾多の困難を協同の力で乗り越えてきた。これからも地域で欠かせない取り組みが不可欠。全国のJA女性組織は3か年計画で「地域で輝け50万パワー」のスローガンをか掲げ、国連のSDGsに照らし合わせ、地域での繋がりを強めている。
(写真)佐々木美和子氏
「意見を耕す」精神を
岐阜県JAにしみの・小林徹代表理事組合長
4万人余りの正・准組合員のアンケート調査を行い、また集落座談会などを通じた対話活動を展開している。農協運動は組合員の声を聞いて耕すこと、この精神で取り組んでいる。協同組合は組織活動である。生産部会や青年部等、組合員の組織を強化し、それぞれの組織から役員が出るようになど、幅広い意見が聞かれるようになった。その声をしっかり耕して行きたい。これからの3年間、「耕す」のは当然だが、総合事業で行く必要性をしっかり出し、准組とともにやっていく姿勢を明確にして、この節目を乗り越えたい。
(写真)小林徹氏
◆改革の成果展示
JAグループの自己改革の成果の確認・共有と一層の前進のため、展示会場を設け、JAの取り組み事例などを紹介した。各JAの取り組みはパネルで、各全国組織はブースを設け、現物や映像で取り組みを説明した。
ほ場情報をインターネットの電子地図と関連付け営農管理するJA全農の「Z-GIS」や養液栽培システム「うぃずOne」、米の業務用向け契約栽培、JA全中の地域農業振興につながる体験型農園の取り組みのほかJA青年部、女性部のブースも含め、23の展示があった。
◆8割のJAが担い手に個別対応
JA全国大会で報告のあった全国各JAの2018年度までの改革への取り組み状況は次の通り。
「農業の担い手のニーズに応じた個別対応に取り組んだ」JAは約80%、「マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換」約60%、「付加価値の増大と新たな需要開拓への挑戦」約70%、「生産価格の引き下げと低コスト生産技術の確立・普及」約90%、「新たな担い手の育成や担い手レベルアップ対策」約80%。こうした取り組みの結果、JAにおける販売品販売高は2014年度の4兆3300億円から16年度4兆6900億円(108.4%)になった。
また「農家の担い手に出向く専任部署を設置した」JAは84%。マーケットインへの取り組みでは、「加工・業務用需要に対応した契約栽培」のJAが54.8%、「実需者ニーズに応じた出荷規格・数量設定」50.8%、「JA指定品目の作付け奨励」59.9%、「組合員からの買取販売」48.6%、「ネットを利用した消費者への直接販売」46.9%だった。
生産コスト低減では、「競合他社の価格を調査し分析した」JAが86.2%、「低コスト技術の普及」86.3%、「取扱商品の集約」77.7%。この結果1JA当たりの平均価格低減率は、肥料で6.9%、農薬が4.3%だった。また、全農等のJAグループを通じて輸出に取り組んだのは206JA(31,9%)で、JAが携わった地理的表示保護制度(GI)は48品目(全GI品目は73品目)となっている。
この他、組合員への訪問では正組合員が96.9%、准組合員が90.1%のJAで実施。「介護予防運動を行っているのは184JA、子育て支援76JA、子ども食堂へ食材提供37JA、農福連携の取り組み48JAなどのほか、消防団に加入しているJA職員は2万人超となっている。
(写真)自己改革の成果を展示
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