【TPP】安倍首相に自民議連の決議申し入れ2015年7月24日
自民党議連の「TPP交渉における国益を守り抜く会」は7月23日、同会の江藤拓会長らが「決議」を安倍総理に手渡した。
これに先立ち自民党本部で開かれた「国際交渉から国内畜産業を守り抜く緊急畜産代表者集会」であいさつした江藤拓会長は、安倍首相との面会について「お願いをしにいくつもりはない。何が何でも基本を守る、間違った判断をしないようきちっと話をしてくる」、「(今回で)まとめる必要なない」と強調した。 22日の会合で出された意見を反映させて決議文を修正し、重要5品目などへの懸念が払しょくされる交渉結果を勝ち取るまで、「政府を挙げて脱退も辞さない覚悟で交渉にあたることを強く求める」ことを盛り込んだ。
【決議】
本会は、平成22年11月4日、「TPP参加の即時撤回を求める会」として発足し、平成25年2月の安倍総理・オバマ大統領の首脳会談において、一定の農産品にはセンシティビティが存在し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことが確認されたため、平成25年3月15日、我が国は交渉参加を決定し、それ以降、累次の党の決議を守り抜くため、「TPP交渉における国益を守り抜く会」として再スタートした。
7月28日から米国・ハワイにおいて、12力国のTPP閣僚会合が開催され、交渉は山場となると言われているが、今一度、政府は、このセンシティビティの存在を明確にするため行われた党の決議、そして衆参農林水産委員会の決議の内容を遵守し、重要5品目など下記に関する懸念を払拭することが強く求められている。
(コメ)
一 コメについては、国民の主食であり、我が国の基幹作物であることは言うに及ばないが、現在、需給の緩和、そして価格の低迷に全国の生産者が苦しんでいる。このような中で、飼料用米の拡大などにより懸命に需給の安定に取り組んでいるところであり、コメの輸入拡大はこのような生産現場での努力が水泡に帰してしまう。
(麦)
二 麦については、重要な土地利用型作物であり、近年次々と新品種生産に取り組み、品質の向上に努めるなど自給率の低い国産麦の生産拡大を懸命に進めているところである。麦の輸入拡大は、このような生産者の頑張りに冷や水を浴びせてしまう。
(牛肉)
三 牛肉については、現行の関税水準が大幅に引き下げられてしまえば、輸入牛肉と品質格差がない乳用種や交雑種を中心に、国内産牛肉と競合し、肉用牛生産の意欲が失われ、肉用牛農家の営農継続がままならなくなる。(豚肉)
四 豚肉については、養豚農家が、国際競争の波にさらされて以米、規模拡大を必死の思いで進めてきた中で、差額関税制度の枠組みが崩壊し安価な輸入豚肉の大量輸入が防げなくなれば、これまでの努力を無にし、多くの国内産豚肉の価格が下落することとなり、さらなる経営発展に向けた投資意欲を大きく阻害することから、今後の養豚の経営展望が拓けない事態となる。
(乳製品)
五 乳製品については、国家貿易制度や関税割当等の基本的枠組みが崩れ、輸入が無秩序に拡大すれば、輸入バター・脱脂粉乳により容易に加工乳が生産されることとなるなど、国内の生乳需給のバランスが壊れてしまう。そうした場合、北海道を中心とする加工原料乳の生産はもちろんのこと、都道府県の飲用乳の生産も成り立たなくなることが避けられず、全国の酪農家が暗澹たる状況に陥る。
(甘味資源作物)
六 甘味資源作物については、北海道において、てん菜・でん粉原料用ばれいしょは輪作体系の中心を成す。また、九州、沖縄の離島では、さとうきび・でん粉原料用かんしょが地域になくてはならない基幹的作物であり、「さとうきびは島を守り、島は国土を守る」との言葉どおり、国土を守る観点からも主要な位置づけを有している。これらの市場開放は、地域の経済が成り立たなくなるのみならず、日本の国土保全をも損なう大きな問題となる。
(食の安全・安心)
七 食の安全・安心については、残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、輸入原材料の原産地表示等我が国の食の安全・安心に関する制度が損なわれれば、国民の食生活に重大な影響を及ぼす。
(漁業)
八 漁業補助金については、我が国の漁業補助金制度が維持できなくなれば、持続的漁業の発展や多面的機能の発揮、さらには震災復興にも影響が生じる。
(林業)
九 合板、製材については、これらの関税について最大限の配慮がなされなければ、国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備の推進に支障が生じる。
(ISD条項)
十 ISD条項については、濫訴防止策などが含まれなければ、国の主権が損なわれる。
TPP交渉に関する十分な情報がない中で、不安に駆られている全国の農業者に対し、このような重要5品目などについての懸念を払拭するとともに、将来にわたって希望を持って営農に取り組むことができる交渉結果を、それ以外の事項についても懸念が十分払拭される交渉結果を勝ち取るまで、政府を挙げて脱退も辞さない覚悟で交渉に当たることを強く求める。
以上、決議する。
平成27年7月22日
自由民主党
TPP交渉における国益を守り抜く会
(関連記事)
・【TPP】国会決議の完全履行を畜産緊急集会 (15.07.24)
・【TPP】国会決議の遵守を-27日に代表者集会(15.07.23)
・【TPP】交渉脱退覚悟も求め自民議連が決議 (15.07.21)
・【TPP】閣僚会合で政治判断へ (15.07.14)
・TPP参加国、厳しい交渉を想定 (15.07.06)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日