原告の口頭弁論認めず TPP違憲訴訟公判で2015年11月18日
TPP交渉差止・違憲訴訟の第2回口頭弁論が11月16日に東京地裁103号法廷で行われた。原告側弁護団は2人の原告の意見陳述を求めていたが裁判長は原告の意見陳述は認めず、原告代理人である弁護士の弁論のみで閉廷した。ただし、来年2月22日の第3回続き、4月にも第4回公判を行うことを決めた。
◆裁判の原則を無視
TPP交渉差止・違憲訴訟の会(代表・原中勝征前日本医師会会長)は、5月21日(第1次)と8月21日(第2次)の2回にわたり東京地方裁判所に1582名の原告団として提訴を行い9月7日に第1回口頭弁論が行われた。 この日は第2回口頭弁論で、元外務省国際情報局長の孫崎享氏がISD条項の問題点について、NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長の赤城智子氏がアレルギー成分など食品表示制度への懸念についてなど、準備書面を用意して意見陳述する予定だった。 開廷後、原告側の辻恵弁護士が事前の裁判進行協議のなかで、提出書面による審理を基本とし原告人の意見陳述は認めないと裁判所が判断したことは問題だとして、訴訟進行に関する申し入れを行った。
内容は▽毎回の法廷で原告人3名の各10分間の意見陳述を保証すること、▽原告代理人(弁護団)の意見陳述は30分間を保証すること。
辻氏は、裁判における口頭弁論主義は常識であり、不正確な情報を排除するための書面採用はあくまで口頭弁論の補完であって「その逆転はおかしい」と主張。こうした裁判の口頭主義に加え、民事訴訟では口頭弁論を行った裁判官しか判決を下せない直接主義も原則だとして「前回も1時間で終えた。今後も裁判所の訴訟指揮は尊重する。しかし、原則を否定するのは民事裁判ではなくなる」と強く主張した。
山田正彦氏も「今日も地裁前に400~500人集まった。みなさん国の主権や基本的人権は大丈夫かとの思いを持ち本当は1人づつ意見陳述を求めている」と指摘、岩月浩二氏も「当事者の声を裁判所が受け止めるかどうかが重要」と主張したが、裁判長は「(原告)本人はやめてください」の一点張り。被告である「国」も意見陳述に反対だと意向を示した。
◆粘り強い運動として
結局、裁判長は「今日は原告代理人のみ認める。次回以降は次回から考える」と不明確な指示。
原告側は代理人として岩月氏がISD条項についてこれが司法権を侵害するなど憲法秩序を壊すものであり、米韓FTAで韓国大法院も憲法違反の恐れを指摘せざるを得なかったと同じように「TPPは経済だけでなくすぐれて法的な問題。むしろ裁判所自体が問われる問題だ」と裁判官たちに訴えた。
食品表示についてもアレルギー表示の基準が緩和されるなどの事態となれば、情報不足の食品選択によってアナフィラキーショックなど重篤な症状を招くリスクが高まり、大きな精神的苦痛になることなどを母親たちは訴えていることなどが強調された。いずれも問題点を明らかしたものだが、原告となった当事者たちの声ではない。裁判は法廷での生の声による「弁論」こそが重要で、それを法律家たちによる「理論」が裏付け、さらにその訴えを広めて「世論」をつくるという「3つの論」で裁判を運動にしていくことが重要だとされる。
公判後の報告集会で参加者からこれからが戦いだとの声があがった。
第3回口頭弁論は来年2月22日。さらに第4回口頭弁論を4月11日に開くこともこの日決まった。
(写真)東京地裁前で集会を開くTPP違憲訴訟の会
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