規制改革会議が生産資材価格形成を議論-TPP関連対策2016年1月25日
政府は第18回農林水産業・地域の活力創造本部会合を1月22日に開き、TPP関連対策のうち、攻めの農林水産業へ転換する政策として検討を継続することになっていた項目についての検討の進め方を決めた。生産資材と流通・加工関係については他の産業と関わりが深いとして産業競争力会議と規制改革会議が検討することになった。
「輸出力強化」については同本部のもとに「輸出力強化ワーキングチーム」(WG)を設置し推進方策をまとめる。
WGは経済再生担当相が座長。副座長を官房長官、農相、経産相が務める。構成員は内閣官房副長官、外務省経済局長、農水省総括審議官・食料産業局長、経産省通商政策局長ら。ほかに有識者も構成員となる(文末参照)。
また、「生産資材及び流通・加工関係」については産業競争力会議と規制改革会議で検討を進める。生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し、生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立を検討する。
その他、人材力強化、土地改良制度のあり方、原料原産地表示などの検討項目については農水省で検討を進める。
2月から検討を開始し6月にWGや規制改革会議などから報告を受け「農林水産業・地域の活力創造本部」で中間とりまとめを行い、秋をめどにとりまとめる。
自民党では農業骨太方針策定プロジェクトチームが議論を始めているが、与党と連携していくことも確認された。
会合では 森山農相「政府関係部局と連携して検討を進めていきたい」と述べ、閣僚などから次のような発言があった。
○林経済産業相
「海外市場の動向を深く把握したうえで、コンビニエンスストアやスーパーなど小売流通業の販売力、保冷技術などの技術力、クールジャパンに見られるブランド力を含めてわが国の総合力を発揮して取り組むことが重要だ。
経済産業省としてもこれまでのジェトロによる輸出促進や農商工連携の取り組みなどをふまえワーキンググループにおける検討に積極的に貢献したい」。
○河野規制改革担当相
「有利な条件のもとでの資材調達や農産物販売は農林水産業の体質強化に不可欠であるが、現場の農業者からはそのための環境が必ずしも整っていないという話も聞いている。これらの声をふまえて規制改革会議では、産業競争力会議と連携しつつ、有利な資材調達や農産物販売を妨げている要因を明らかにし解決に向けた対策を早急に取りまとめていただくべく努力する」。
○石井国土交通相
「日本の食や食文化をテーマとした海外での訪日プロモーションの推進、食・農業体験等の観光資源を活用した観光ルートの形成、これらに引き続き取り組んでいく。
また、輸送時の鮮度保持や輸送コストなどの課題を克服するため技術開発や関係者連携による物流効率化も積極的に促進していく」。
○稲田自民党政調会長
「党の農林水産業骨太方針策定PTを中心に議論を開始した。小泉部会長を中心に熱心に議論を行っており、政調会としても全面的にバックアップしていく。TPP協定に対する現場の不安を払拭するためには政府・与党一体となって未来の農林水産業、食料政策についての姿を明確に示すことが何よりも大切であり、緊密に連携をとっていきたい。政府も協力を」。
○甘利経済再生担当相
「新たに設置されるワーキンググループでは農業界と経済界で先駆的な取り組みをしている方に参加してもらい、実践的な輸出戦略を作りあげたい。 生産資材や流通・加工の問題については産業競争力会議と規制改革会議で検討を進めることとなるが、これらの課題は複数の省庁と関連があり、実効性の高い施策が具体化できるよう関係大臣の協力を」。
○高木復興相
「輸出促進をはかるうえで原発事故後の諸外国の輸入規制が大きな課題。被災地での風評被害払しょくに向け関係省庁が連携して輸入規制の緩和、撤廃の取り組みを行っていることもふまえ輸出促進のための方策について幅広く検討いただきたい」。
○高市総務相
「放送コンテンツの海外展開や、ICTを活用して日本各地の食品や農林水産物の紹介を強化していく」。
○安倍総理
「輸出促進は農政新時代の一丁目一番地である。おいしくて安全な日本の農産物にとってTPPは世界に売り込む大きなチャンスである。第二次安倍内閣の発足以降、日本の農林水産物・食品の輸出は着実に増加し、過去最高輸出実績を上げている。この流れを加速する。平成32年1兆円の目標は可能な限り早期に達成する。これを通過点としてさらに輸出を拡大させていく。輸出力強化ワーキンググループでそのための具体的な戦略を精力的に議論を。生産資材の価格形成や流通・加工の業界構造の見直しなど農林水産業の体質強化策を本日決定した役割分担のもと、与党とも緊密に連携しつつ6月の中間とりまとめに向けた検討を進めてほしい。農林水産業の成長産業化を実現し若者が自らの情熱で新たな地平を切りひらいていける、そういう分野にしていく」。
(輸出力強化WGの有識者 五十音順)
▽大西洋・(株)三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長
▽岡田晃・(株)ANA Cargo代表取締役社長
▽木村敬・JA全農ミートフーズ(株)代表取締役社長
▽小島順彦・三菱商事(株)取締役会長
▽齋藤一志(株)庄内こめ工房代表取締役社長
▽長尾裕・ヤマト運輸(株)代表取締役社長
▽中山勇・(株)ファミリーマート代表取締役社長
▽西英司・北海道漁業協同組合連合会代表理事副会長
▽深澤守・(一社)青森県りんご輸出協会事務局長
▽茂木友三郎・キッコーマン(株)取締役名誉会長
(関連記事)
・【TPP対策本部】生産現場との意思疎通の仕組み検討を指示-森山農相 (16.01.22)
・【TPP関連】生産者・消費者視点で原料原産地表示を-NPOが学習会 (16.01.22)
・TPP反対で国際シンポ開催 (16.01.21)
・【TPP】2月4日に署名式-ニュージーランド政府発表 (16.01.21)
・【TPP】「米」も1100億円減少-鈴木教授が独自試算 (16.01.15)
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
変革恐れずチャレンジを JA共済連入会式2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
姿かたちは美しく味はピカイチ 砂地のやわらかさがおいしさの秘密 JAあいち中央2025年4月2日
-
県産コシヒカリとわかめ使った「非常時持出米」 防災備蓄はもちろん、キャンプやピクニックにも JAみえきた2025年4月2日
-
霊峰・早池峰の恵みが熟成 ワイン「五月長根」は神秘の味わい JA全農いわて2025年4月2日
-
JA農業機械大展示会 6月27、28日にツインメッセ静岡で開催 静岡県下農業協同組合と静岡県経済農業協同組合連合会2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
「八百結びの作物」が「マタニティフード認定」取得 壌結合同会社2025年4月2日
-
全国産直食材アワードを発表 消費者の高評価を受けた生産者を選出 「産直アウル」2025年4月2日
-
九州農業ウィーク(ジェイアグリ九州)5月28~30日に開催 RXジャパン2025年4月2日