【TPP関連】生産者・消費者視点で原料原産地表示を-NPOが学習会2016年1月22日
NPO法人食品安全グローバルネットワークは1月21日に学習会「TPPでどうなる食品表示」を参議院議員会館で開いた。学習会ではJA全農の立石幸一食品品質・表示管理コンプライアンス部長が「原料原産地表示」について講演した。
政府が昨年11月に決めた総合的なTPP関連政策大綱では、「TPP協定によりわが国の食の安全・安心が脅かされることはないが、わが国への海外からの輸入食品の増加が見込まれる」として食の安全・安心確保に必要な措置を適切に実施すると明記している。そのうえで「原料原産地表示について実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行う」と決めた。
これをふまえて農水省と消費者庁は加工食品の原料原産地表示に関する検討会を設置することに決めた。第1回会合を1月29日に開く。
こうした動きについて立石部長は「本来、(食品表示法は)TPPを進めるための対策でなく、消費者基本計画や食料・農業・農村基本計画にも掲げられてきた継続的な課題だ」と指摘。食品表示法が消費者の権利だと位置づけ、自主的な選択の機会を確保するための必要な情報提供として原料原産地表示が実施されるべきだと主張した。
消費者の間にわが国の食料自給率が低いことへの懸念は高いが、原料原産地表示がないために、たとえば大豆の用途別輸入割合の実態などがほとんど知られていない。輸入割合は豆腐で77%、醤油・味噌で89%、納豆で75%となっている。「国産大豆使用」と強調表示した大豆食品が目立つが、実際は大豆の自給率は7%、うち食用大豆自給率は21%にすぎない。
一方、原産地表示をすることによって国産農産物が消費者に選択されるようになった例がある。
生シイタケは平成10年ごろに中国産の輸入量が急増し、ネギや畳表とともにセーフガード発動が検討されたが、一方で12年のJAS法改正で生鮮品全般への原産地表示が義務化された。その結果、平成12年に中国産生シイタケは流通量の38%まで増えたが、平成26年にはわずか4%となった。国産原木シイタケの生産量は減少したが、それに代わって国産菌床シイタケが流通の大半を占めている。
しかし、加工食品の原料原産地表示の拡大に向けて議論は消費者基本計画が閣議決定された平成22年以降も進んでいない。今回のTPP対策でも「実行可能性を確保しつつ検討を行う」とされた。
立石部長はこれまでの検討について「行政側が表示拡大に向けてのたたき台を示さず、消極的な事業者の声に押されて結論の先送りを繰り返してきた」と批判した。
今回の検討会も農業団体、食品業界など幅広い委員から構成されているが、立石部長は「『品質の差異』を条件とした表示ルールではなく、消費者の知る権利に基づく新たなルールのたたき台を行政が用意して議論すべきだ」と話した。
原料原産地表示の拡大が先送りされてきたことや、事業者間で取り引きされる原料に関する情報伝達も義務化されていないことから、レストランなどで食品偽装が相次ぐなど「消費者の視点に立った必要な規制が導入できず、食に関する品質管理レベルは国際水準から取り残される結果となった」などと指摘、EUや米国、韓国などでは食品行政に強力な権限を集中しており「TPPでわが国の食の安全が脅かされると心配する国民が多いが、実は日本の食品行政のレベルは決して高くないことも知るべき」などと指摘した。
(関連記事)
・【TPP対策本部】生産現場との意思疎通の仕組み検討を指示-森山農相 (16.01.22)
・TPP反対で国際シンポ開催 (16.01.21)
・【TPP】2月4日に署名式-ニュージーランド政府発表 (16.01.21)
・【TPP】「米」も1100億円減少-鈴木教授が独自試算 (16.01.15)
・TPP「腰を据えて検証」 奥野JA全中会長 (16.01.15)
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(2)病理検査で家畜を守る 研究開発室 中村素直さん2025年9月17日
-
9月最需要期の生乳需給 北海道増産で混乱回避2025年9月17日
-
営農指導員 経営分析でスキルアップ JA上伊那【JA営農・経済フォーラム】(2)2025年9月17日
-
能登に一度は行きまっし 【小松泰信・地方の眼力】2025年9月17日
-
【石破首相退陣に思う】しがらみ断ち切るには野党と協力を 日本維新の会 池畑浩太朗衆議院議員2025年9月17日
-
米価 5kg4000円台に 13週ぶり2025年9月17日
-
飼料用米、WCS用稲、飼料作物の生産・利用に関するアンケート実施 農水省2025年9月17日
-
「第11回全国小学生一輪車大会」に協賛「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年9月17日
-
みやぎの新米販売開始セレモニー プレゼントキャンペーンも実施 JA全農みやぎ2025年9月17日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」ダイニング札幌ステラプレイスで北海道産食材の料理を堪能 JAタウン2025年9月17日
-
JAグループ「実りの秋!国消国産 JA直売所キャンペーン2025」10月スタート2025年9月17日
-
【消費者の目・花ちゃん】スマホ置く余裕を2025年9月17日
-
日越農業協力対話官民フォーラムに参加 農業環境研究所と覚書を締結 Green Carbon2025年9月17日
-
安全性検査クリアの農業機械 1機種8型式を公表 農研機構2025年9月17日
-
生乳によるまろやかな味わい「農協 生乳たっぷり」コーヒーミルクといちごミルク新発売 協同乳業2025年9月17日
-
【役員人事】マルトモ(10月1日付)2025年9月17日
-
無人自動運転コンバイン、農業食料工学会「開発特別賞」を受賞 クボタ2025年9月17日
-
厄介な雑草に対処 栽培アシストAIに「雑草画像診断」追加 AgriweB2025年9月17日
-
「果房 メロンとロマン」秋の新作パフェ&デリパフェが登場 青森県つがる市2025年9月17日
-
木南晴夏セレクト冷凍パンも販売「パンフェス in ららぽーと横浜2025」に初出店 パンフォーユー2025年9月17日