ツマジロクサヨトウ新たに愛媛、山口でも 各県の発生状況2019年9月3日
トウモロコシなどを食害する害虫、ツマジロクサヨトウが、7月3日に国内で最初に鹿児島県で確認されてから2か月。農林水産省は9月2日、新たに山口県と愛媛県で確認されたと発表した。これで、発生県は九州全県と沖縄、高知、茨城、岡山、千葉に続き14県に拡大。日本政府はこの被害で飼料用トウモロコシが不足するかもしれないとして米国から270万tものトウモロコシを輸入することにしたという。実際の被害状況などについて各県に聞いた。
直近の9月2日に発生が確認された山口県は、7月の鹿児島での発生を受け、農水省の指示のもと月に40ほ場に対して調査を行ってきた。飼料用トウモロコシに食害が発見されたのは山口市内にある30aの2ほ場の約1割にあたり、8月中に種を播いた若い芽への加害で、さっそく農薬による防除を指示した。現時点では収量を左右するような大きな被害は出ていないという。
(写真)山口市で確認されたツマジロクサヨトウの幼虫
愛媛県では8月29日、生産者からの連絡で、西予市の飼料用トウモロコシほ場で見つかった。神戸植物防疫所で9月2日にツマジロクサヨトウと確認され、農薬による防除を指示した。引き続き現在、調査中だが何か所かのほ場で幼虫が確認されているという。
9月2日は、福岡県でも新たに4市町村目が確認された。県内では8月22日に朝倉市の飼料用トウモロコシのほ場で最初に確認された。いずれも7月下旬から8月上旬に2回目の播種を行ったほ場で見つかり、ほ場全体の1~2割に当たる。
ツマジロクサヨトウはこの時期、食欲が旺盛で柔らかく若い芽は食い尽くされる可能性もある。県の担当者は、「万が一ハウスに飛び込んで越冬する可能性もあるため予断は許さない」と話した。
◆食害があったという程度 収量減はない 鹿児島
国内で初めて7月3日に確認された鹿児島県は、9月2日時点で25市町村で発生を確認。直近では8月28日に徳之島町の飼料用ソルガムで確認された。県内のトウモロコシほ場は、夏作と秋作合わせて2000ha。現時点での収量への影響について、鹿児島県経営技術課は、「食害があった程度でとりたてて収量が減ったという報告はない」という。同県は、8月中旬に秋作で2期目の種を播いたほ場では早期発見、早期防除を呼びかけており、背丈が高くなった作物については早期の刈り取りによるサイレージを促していく。
沖縄県は、7月11日に沖縄本島北部の恩名村の飼料用トウモロコシで見つかってから、8月23日までに4市町村で確認。トウモロコシの収穫はほぼ終了したが、8月に植えたサトウキビや防風用ソルボの新芽が食害される可能性があるという。
(写真)飼料用トウモロコシの被害
◆被害は軽微 千葉県
首都圏にも被害が広がった。千葉県で8月27日、香取市の飼料用トウモロコシのほ場で確認。農水省の指示に沿って行っていた調査とは別に、農家から直接相談が入り、農業改良普及指導員に虫が持ち込まれて発覚。同県は農薬による早期防除と早期に刈り入れするサイレージを呼びかけた。
酪農県の同県は、平成30年に青刈りトウモロコシを962haで栽培。担当者は、「今回の被害確率は1%未満と被害は軽微で現時点で目立った被害はないが、引き続き調査を続けていく」と話した。
◆影響は少ない 大分県、宮崎県
大分県では、豊後大野市で7月12日の発生確認後、各地域で1週間ごとに調査を行っているが新たな発生は確認されていない。飼料用トウモロコシは8月15日前後で収穫を予定していたが現在遅れている。担当者は、「足りなくなることはない。そうならないように仕事をしている。広げないように徹底した対策を考えている」と話した。
宮崎県では、飼料用トウモロコシのほ場で7月12日に、ソルガムのほ場で7月23日確認された後、正確な発生調査をしていないが、9月5日から10日ごろまで主要産地で調査を行う予定。
これまでも穂が出るまでの生育ステージで食害があり、穂が出てからの食害はなかったことから、現時点では、8月中に種を播いた新芽を食害されるる可能性がある。
7月12日に確認されたのは1期目の播種の分にあたるが、収量が極端に減るなど影響は出ていないという。
このほか、長崎県は、7月12日に確認されて以降、県内で1か月80ほ場を目視で調査しており、現在のところ新たな発生地域はない。
岡山県は、8月19日県南部の飼料用トウモロコシのほ場で発見され、同22日に確認。これを受けて9月4日に県内の状況を把握するための説明会の開催を予定している。
(写真)逆V字が特徴的なツマジロクサヨトウの頭部
(写真提供:山口県病害虫防除所)
(関連記事)
・米国産トウモロコシ 275万tの保管料を支援-吉川農相(19.09.03)
・【 クローズアップ 日米FTA】決定版!やはり「失うだけの日米FTA」【 東京大学教授・鈴木宣弘】(19.09.02)
・病害虫のツマジロクサヨトウ 茨城、高知でも発見(19.08.21)
・病害虫のガ「ツマジロクサヨトウ」蔓延防止で全国対策 農林水産省(19.07.19)
・病害虫「ツマジロクサヨトウ」九州6県で発生を確認 農林水産省(19.07.18)
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日