台風19号の農業被害は30都府県で600億円超 2019年10月24日
令和元年台風第19号による農業関係の被害額は、30都府県の合計で616億4000万円となっている(10月24日8時現在)。なお、都道府県が農水省への報告したものには、被害数の報告のみで被害額は調査中のものがあり、今後とも被害額は増える見通し。
台風19号で那珂川が氾濫し浸水した水戸市飯富地区
(10月14日13時、水戸市役所提供)
台風19号は、10月6日マリアナ諸島の東海上で発生し、12日に日本に上陸した。関東地方や甲信地方、東北地方などで記録的な大雨となり、甚大な被害が発生した。
この台風の特徴は、北上しても中心気圧が低く、勢力を保ったままであったことと、強風域が本州の半分以上を覆うほどの大型で、勢力も強かったため、大雨に加えて暴風、高潮などで広範囲に被害が発生した。台風の接近により、関東甲信地方、静岡県、新潟県、東北地方では、記録的な大雨となった。台風が上陸する前から活発な雨雲がかかり続け、これまでにない極めて広い範囲で同時に強い雨が長時間降り続いた。神奈川県箱根町では、降り始めからの降水量が1000ミリを超えた。
こうした中で、阿武隈川や千曲川、秋山川、越辺川、那珂川などの堤防が決壊するなど、河川の氾濫、決壊が相次いだ。国土交通省によると、浸水面積は2万5000haを超え、平成30年7月の西日本豪雨の約1万8500haを上回っている。
10月12日14時50分現在の台風19号の衛星写真(気象庁ホームページから)
農林水産省によると、台風19号による農業関係の被害額は、10月24日午前8時の時点で30都府県の合計で616億4000万円となっている(10月24日8時現在)。
これは、千葉県を中心に6都県で大きな被害をもたらした先月の台風15号による農業関係の被害額462億7000万円をすでに上回っており、なお、現時点で都道府県が農水省への報告したものには、被害数の報告のみで被害額は調査中のものがあり、今後とも被害額は増える見通しだ。
被害の内訳を見ると、「農地・農業用施設関係」の被害が全国で7308か所で380億円超となっている。「農作物等」の被害は水稲やリンゴ、イチゴなど農作物被害が85億円、農業用ハウスなどが15億円など106億8000万円となっている。
台風19号では、河川の堤防が決壊するなど浸水被害が広範囲に及んでおり、河川流域における被害は、信濃川水系の千曲川では、被害の大きい長野県長野市などでリンゴ、利根川水系の秋山川では栃木県佐野市で水稲、ハウスイチゴ、荒川水系の越辺川では川越市で水稲、ホウレンソウ、那珂川水系の那珂川では、茨城県那珂市、常陸大宮市で特に水稲などに大きな被害が生じている。
農水省がホームページで公表した10月24日8時現在の農業関係被害の概要は次のとおり。
◆農業関係被害の概要(10月24日8時現在)
(注)被害額については、現時点で都道府県から農水省に報告があったもので、引き続き調査中。なお、報告には被害数の報告のみで被害額は調査中のものも含まれる。
▽農作物など<被害額106億8000万円>
〇農作物など(※1)被害数1万3307.2ha、被害額85億円(被害地域 岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、新潟、富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、高知(29府県))
〇樹体(※2)同116.1ha、同4億円(同 山形、福島、長野、京都(4府県))
〇家畜 同21万9759頭羽、同8000万円(同 岩手、宮城、福島、栃木、埼玉、千葉、長野、新潟(8県))
〇畜産物(生乳など)同23.4㌧、同0.0億円(同 岩手、栃木、千葉、神奈川、長野(5県))
〇農業用ハウスなど 同2791件、同15億円(同 岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、新潟、富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、奈良、和歌山、島根、島根、岡山、高知、長崎(30府県))
〇畜産用施設 同231件、同1億3000万円(岩手、宮城、山形、福島、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、新潟、富山、岐阜、愛知、三重、京都、鳥取(17府県))
〇共同利用施設 同102件、同1000万円(福島、千葉、新潟、滋賀、鳥取、島根(6県))
〇農業・畜産用機械 同178件、同5000万円(宮城、栃木、埼玉(3県))
〇その他施設 同2件、同0.0億円(栃木)
(※1)水稲、大豆、ソバ、ダイコン、ニンジン、ハクサイ、アスパラガス、キャベツ、レタス、キュウリ、ブロッコリー、セロリ、ネギ、ニラ、ホウレンソウ、トマト、ナス、イチゴ、キウイ、ブドウ、イチジク、ミカン、カキ、リンゴ、ナシ、リンドウ、葉ボタン、食用菊など
(※2)リンゴ、モモ、ブドウ、茶
▽農地・農業用施設関係<被害額509億6000万円>
〇農地の損壊 被害数5585箇所、被害額128億9000万円(被害地域 青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、静岡、新潟、富山、石川、三重、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取(25都府県))
〇農業用施設など 同7308箇所、同380億7000万円(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、静岡、新潟、富山、石川、愛知、三重、滋賀、大阪、奈良、和歌山、鳥取、島根(27都府県))
◆河川流域における被害概況
▽千曲川(信濃川水系) 被害の大きい長野県長野市の耕地面積は約8000haで、リンゴ、コメの栽培が中心であり、これらに大きな被害が生じている。
▽秋山川(利根川水系) 被害の大きい栃木県佐野市の耕地面積は約4000haで、コメ、ハウスイチゴの栽培が中心、コメ、ハウスイチゴに大きな被害が生じている。
▽越辺川(荒川水系) 被害の大きい埼玉県川越市の耕地面積は約3000haで、コメ、ホウレンソウの栽培が中心で、コメ、ホウレンソウに大きな被害が生じている。
▽那珂川(那珂川水系) 被害の大きい茨城県那珂市、常陸大宮市の耕地面積は計約8000haで、肉用牛の飼育、コメの栽培が中心。このうち、特にコメなどに大きな被害が生じている。
台風19号の進路図(気象庁ホームページから)
(関連記事)
・若い就農者に希望を 水害被災地の水戸 営農意欲の減退を懸念(2019.10.24)
・500人規模の職員ボランティアで千葉の産地を支援 コーフ?デリ(2019.10.24)
・生産者の背中押す支援策を-水戸市長が農相に要請(2019.10.24)
重要な記事
最新の記事
-
【令和6年度 鳥インフルエンザまとめ】2025年1月22日
-
【特殊報】チャ、植木類、果樹類にチュウゴクアミガサハゴロモ 農業被害を初めて確認 東京都2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(1)どうする?この国の進路2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(2) どうする?この国の進路2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(3) どうする?この国の進路2025年1月22日
-
【新年特集】2025国際協同組合年座談会「協同組合が築く持続可能な社会」(4) どうする?この国の進路2025年1月22日
-
禍禍(まがまが)しいMAGA【小松泰信・地方の眼力】2025年1月22日
-
鳥インフル 英イースト・サセックス州など4州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月22日
-
【JAトップ提言2025】消費者巻き込み前進を JAぎふ組合長 岩佐哲司氏2025年1月22日
-
【JAトップ提言2025】米も「三方よし」精神で JAグリーン近江組合長 大林 茂松氏2025年1月22日
-
京都府産食材にこだわった新メニュー、みのりカフェ京都ポルタ店がリニューアル JA全農京都2025年1月22日
-
ポンカンの出荷が最盛を迎える JA本渡五和2025年1月22日
-
【地域を診る】地域再生は資金循環策が筋 新たな発想での世代間、産業間の共同 京都橘大学教授 岡田知弘氏2025年1月22日
-
「全日本卓球選手権大会」開幕「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年1月22日
-
焼き芋ブームの火付け役・茨城県行方市で初の「焼き芋サミット」2025年1月22日
-
農のあるくらし日野のエリアマネジメント「令和6年度現地研修会」開催2025年1月22日
-
1月の「ショートケーキの日」岐阜県産いちご「華かがり」登場 カフェコムサ2025年1月22日
-
「知識を育て、未来を耕す」自社メディア『そだてる。』運用開始 唐沢農機サービス2025年1月22日
-
「埼玉県農商工連携フェア」2月5日に開催 埼玉県2025年1月22日
-
「エネルギー基本計画」案で政府へ意見 省エネと再エネで脱炭素加速を パルシステム連合会2025年1月22日