農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
TAGという欺瞞と暴挙を許してはならない【加藤好一・生活クラブ連合会会長】2018年10月10日
日米物品貿易協定(TAG)はまぎれもなく自由貿易協定(FTA)そのものである。今回の日米共同声明(9/26)後に、本紙をはじめ各所で語られている心ある論者の皆さんのこのようなご意見は、大いにわが意を強くしている。安倍首相や政府関係者がごまかしを重ね、いかに強弁しようともそれは明らかである。
現にトランプ大統領はもとより、ライトハイザー通商代表、パーデュー農務長官、ペンス副大統領等の発言は、この「交渉の目標がTPP以上のFTA」であることを明瞭かつ公然と語っている。「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領が、TPPからの離脱を決めて以降、二国間交渉によってTPP以上を獲得目標としてくるであろうことは離脱の直後から必至であった。それは今回の北米自由貿易協定(NAFTA)の交渉過程を見ても明らかだ。このNAFTA再交渉を受け、ライトハイザー通商代表は会見で次のように語ったという。
「(NAFTA再交渉後の)新協定は政権の将来の通商交渉のひな型となる」。そして(1)米国での自動車生産増・米農業の輸出拡大、(2)知的財産権保護、(3)不公正な貿易慣行を防ぐ ― という三つの柱で、「パラダイム(枠組み)の転換」をもたらすと(朝日新聞 10/3)。たいへんな決意で交渉に臨むだろう。
それにしてもまた農業を差し出す形で譲歩し、TAG交渉が始まることについては憤りを禁じえず、あらためて怒りがたぎる。そもそも貿易不均衡の是正は「自動車関連の分野を中心に解決すべき」なのだ。昨年の日本農業新聞のある論説は(4/17)、次のように主張していたが同感である。
「米国が問題視する日本との貿易不均衡は、モノの貿易で米国が約7.6兆円(2016年)の赤字になっていることに基づく」。「ただ、日本の場合、(米国の)赤字の8割弱の5.8兆円は自動車関連が占める」。一方「日米間の農林水産物貿易は、日本が1.7兆円(15年)の赤字である」。つまり農業が犠牲になることなどもってのほかなのである。
最後に一般社団法人 日本飼料用米振興協会の副理事長という立場で一言述べておきたい。いまわが国は米政策の大転換期にあり、きわめてデリケートな状況にある。そのなかにあって、飼料用米は未来を展望する一筋の光としてあり、この助成制度の恒久化(もちろん多収やコスト削減の努力を伴いつつ)などが求められるはずだ。
しかし今回のTAG交渉開始にあたって、米国農業団体が一斉に歓迎の意向を示し、なかでも米国食肉輸出連合会は米国の牛肉・豚肉の輸出を拡大する好機ととらえているようだ。そうなれば、米国の食肉類が洪水のごとくわが国に押し寄せることになりかねず、これがわが国の畜産業に打撃を与え、ひいては飼料用米の生産にも影響が出てこよう。
来年2019年は統一地方選や参議院選など政治の年となる。来年は沖縄県知事選で示されたような、良識ある民意を示したいものである。
(関連記事)
・書き替え」 ついに共同声明も【立憲民主党代表代行・長妻昭衆議院議員】(18.10.10)
・SDGs重視の貿易秩序への大転換を目指す日米交渉に【白石正彦・東京農業大学名誉教授】(18.10.10)
・史上最悪の協定に歯止めを【北海道大学農学研究院・東山寛准教授】(18.10.10)
・世界の流れに逆行【八木岡努・JA水戸代表理事組合長(茨城県)】(18.10.10)
重要な記事
最新の記事
-
【第45回農協人文化賞】人との出会いに感謝 福島県・会津よつば農協組合長 原喜代志氏2024年8月14日
-
【第45回農協人文化賞】努力する人は希望を語る 共済事業部門 鳥取県・JA鳥取西部前代表理事専務 植田秋博氏2024年8月14日
-
【第45回農協人文化賞】「なくてはならない」組織に 経済事業部門 JA岡山会長 宮武博氏2024年8月13日
-
【第45回農協人文化賞】全ては組合員のために 経済事業部門・JA全農ぐんま 前副会長 大澤孝志氏2024年8月13日
-
関東早場米も店頭5㌔2500円以上が売価に【熊野孝文・米マーケット情報】2024年8月13日
-
【第45回農協人文化賞】きのこが健康けん引確信 営農経済部門・日本きのこマイスター協会理事長 前澤憲雄氏(長野県)2024年8月10日
-
【第45回農協人文化賞】土づくりへのこだわり 営農経済部門 秋田県・JA秋田しんせい前常務 高橋徹氏2024年8月10日
-
シンとんぼ(105) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(15)-2024年8月10日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(22)【防除学習帖】 第261回2024年8月10日
-
土壌診断の基礎知識(31)【今さら聞けない営農情報】第261回2024年8月10日
-
【第45回農協人文化賞】「小さな協同」の実践を目指して 一般文化部門 長野・JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年8月9日
-
【第45回農協人文化賞】「草の根運動」とともに 一般文化部門・JA広島中央会元専務 坂本和博氏2024年8月9日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 香川県2024年8月9日
-
【注意報】果樹カメムシ類急増で被害多発のおそれ 滋賀県2024年8月9日
-
【注意報】ミニトマト、トマトにトマト黄化葉巻病 県中部で多発のおそれ 和歌山県2024年8月9日
-
【注意報】ネギ、ブロッコリー、ダイズにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年8月9日
-
(396)首都の場所:赤道ギニア共和国【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年8月9日
-
【'24新組合長に聞く】JA碓氷安中(群馬県)戸塚勉組合長 野菜のブランド産地へ (5/31就任)2024年8月9日
-
米の品種や食味などを分析 米品質診断パッケージ、キャンペーンを実施中 サタケ2024年8月9日
-
北海道産赤肉メロンのパフェとかき氷 期間限定で登場 銀座コージーコーナー2024年8月9日