日本型イネ由来の新規除草剤抵抗性遺伝子を発見2019年8月5日
埼玉大学大学院理工学研究科の戸澤譲教授と農研機構らの共同研究グループは、「コシヒカリ」などの日本型イネが有する除草剤抵抗性遺伝子を発見。その遺伝子にコードされるタンパク質が複数の除草剤を不活性化する仕組みを分子レベルで解明した。この成果は7月26日、アメリカの科学雑誌「Science」で公開された。
同研究グループは、飼料用イネなど一部の稲品種が、トリケトン系除草剤処理により苗が枯死することが問題になったことを契機に、日本型イネからトリケトン系除草剤を不活性化する酵素をコードするHIS1遺伝子を発見した。
さらに、試験管内および植物体での実験により、この遺伝子が作り出すHIS1タンパク質が、トリケトン系除草剤を水酸化し、除草剤としての機能を失わせることにより、日本型イネは除草剤で枯れなくなることを明らかにした。
一方、除草剤に弱い飼料イネなどの一部の稲品種では、HIS1遺伝子が機能を失っていることと、この機能欠損型HIS1遺伝子が東南アジアの稲品種に由来することを突き止めた。
単一の除草剤とその抵抗性遺伝子の組み合わせに依存する作物栽培は、その除草剤に抵抗性を持つ雑草の繁茂につながる。ところが、除草剤と抵抗性遺伝子の組み合わせを増やすことで、より多種類の雑草を対象に、水田での繁茂を有効に抑制できる。
同研究グループが見つけた遺伝子HIS1は、交配育種により、抵抗性のないイネ品種に導入することが可能。さらに、各々の作物に固有なHIS1に類似のHIS1-LIKE (HSL) 遺伝子の情報を利用し、幅広い作物への展開も期待される。
この研究成果は、世界中に存在する膨大な数のイネ系統の中に、今後の育種に有用な遺伝子資源がまだまだ多く眠っていることも示唆している。今後、この研究で明らかになった知見を活かして、より有効な雑草管理が可能になると期待されている。
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