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第47回JA全国青年大会特集
農業再建・地域営農確立と大規模専業農家のために活動するJAグループの挑戦

座談会 「WTO農業交渉 10の争点」 「多様な農業の共存」の時代をどう実現するのか

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2ページ : 「国境措置」の争点−(争点@、A、B、C)
3ページ : 「国内支持」の争点−(争点D、E、F)
4ページ : 「輸出入規律」をめぐって−(争点G、H、I)

国境措置の争点
@ 「改革過程の継続」を前提とすれば、関税率については"引き下げ交渉"となるがどう対応するべきか。
A 米の高関税率は維持できるのか。
B ミニマム・アクセス機会(3%〜5%)の提供制度についてどう改善交渉をするのか。また、ミニマム・アクセスの拡大を求められたらどうするのか。
C 特別セーフガードの維持、及び一般品目への拡大は可能か。

 並河 では、論点の議論に入りますが、まず関税の問題をめぐってご意見を聞かせてください。

 服部 先ほども説明しましたように、EUは、関税の削減はUR方式で行うべきだという主張をはっきり出しました。EUはアジェンダ2000で穀物の支持価格を15%下げたわけですね。だから、6年間から7年間で平均15%程度、関税を削減するという方向を考えているといってもいいと思います。

 若林 そうなると、WTO農業交渉では、関税の引き下げが前提で、元には戻らないということでしょうか。

 服部 もとに戻すことはできないでしょう。UR合意で各国が各品目の関税についてWTOに「譲許」したということは引き上げないという約束のもとに行ったことですから。

 並河 UR合意では、6年間平均で36%の削減目標でしたから、日本はバナナのような品目の関税を大きく削減し、肉類などは最低レベルの15%削減品目としたわけですね。ただ、今回もUR方式になったとしても、日本はこの種のカードは使い切った面があるんじゃないでしょうか。

 服部 そういうことはないと思います。EUがUR方式をとるべきだと主張しているのは、今回も前回のような対応が可能と考えているからです。この問題はあくまでも削減率の話です。5%の関税を2.5%に引き下げても、削減率では50%ですね。
 わが国としては、もちろん現在の関税水準が維持できればいちばんいいのですが、「漸進的削減」という協定20条の路線がありますから、できるだけ削減率を少なくするような方法を考えるべきで、私はUR方式は柔軟な方法だと思います。日本は漸進的削減という立場で、高関税の大幅引き下げや最高関税率の設定といった大幅削減路線にいかに対抗するかだと思いますね。

 並河 滝沢先生は、とくに米の関税についていかがお考えですか。

 滝沢 米は関税化で1`c341円という従量税にしました。今度の交渉はこの水準を前提にしてスタートするわけですね。
 ただ、この水準そのものが、すでにカリフォルニア米などに対する実効税率としては、想定を下回っているともいわれています。もちろん従量税は、従価税に直して考えると、安い米に対しては高関税率になるし、高い米に対しては低関税率になるという関係がありますが、もともと私は米の関税化で従量税を選択した段階で問題だと考えていました。

 服部 そこは私の理解とはかなり違います。もし従量税ではなく率(%)の従価税だったら、国境措置として不十分になります。とくに国際価格が下がったときに、従価税であれば国境措置として機能が不全になってくる。従量税であれば国際価格の影響を受けません。

 滝沢 ただ、下がるといっても、今までの米の国際価格をみると、たとえば、タイ米のFOBの価格が1d3万円以下ということはあまりないわけですから。

 服部 しかし、高値にくらべると3割ぐらいは下がっていますよ。それから、1`c341円の従量税は、1986年から1988年の輸入価格と国内の代表的な卸売価格で決められたものです。その数字を従価税にすれば1000%以上の高い関税率です。非常に高いわけで、そこから下がったといっても現在でもこの関税を乗り越えて米が輸入されることはないわけでしょう。
 だから、問題は関税をある程度下げても、国際価格にその関税を加えれば日本の国内価格よりも十分高いという、そういう高い水準にするためにどういう方式がいいかということだと思います。

 若林 基本的には、輸入されないほうがいいわけですが、それはまず無理でしょうから、われわれとしてもできるだけ現状維持をすべきだと考えています。
 ただ、前回のように日本だけが孤立してしまってはいけませんから、あまり強い主張も難しいということはわれわれも認識しています。

 服部 私は、UR方式というのは決して弱い主張だとは考えていません。

米のミニマム・アクセスは、どう改善すべきなのか

 並河 ミニマム・アクセスの問題では、若林会長からは、スタンダードの基準に戻すべきだというお話がありました。つまり、本来なら6年間で3%から5%というミニマム・アクセス数量でよかったのに、特例措置を選択し、その後に関税化したために、その影響が残って7.2%になった。その差をもとに戻すべきだということですね。
 もうひとつは、6年間で3%から5%という基準そのものも問題になると思いますが、その点についてはいかがですか。

 若林 その点についてのわれわれの要求は、米の国内消費量が減少していることから、国内消費量を算出する基準期間を見直すべきだということです。

 並河 そうすると、スタンダードの基準に戻すことは要求しても、5%というミニマム・アクセス数量の数字そのものは認めるということですか。

 若林 日本は、米も関税化したのだから、本来の水準と同じにすべきではないかというのが基本的な考え方なんです。

 並河 滝沢先生はどうでしょうか。

 滝沢 5%でいいのかという議論をする前に、ミニマム・アクセスを拡大すべきだと主張している国もあるわけですね。
 これに対してどうすべきかですが、そもそも特例措置を延長した場合には、他国が納得するような新たな譲歩を与えなければならないから、そうならないように関税化したわけです。ですから、関税化したのにさらにミニマム・アクセス枠の拡大を求めるというような要求は、最初から約束にないことだと突っぱねるべきだと思います。
 その際、どこまで突っぱねるのかということですが、現状ですでに7.2%輸入されるというなかで、国内の米市場は混乱状態になっているわけです。ですから、この状況をこれ以上悪化させないためにどういう方法があるかということでいえば、関税化した以上、ミニマム・アクセス数量は3%から5%という本来の枠にすべきだと要求することが第1段階だと思います。

 服部 ただ、ここでわれわれが前提にしておかなければならないのは、ウルグアイ・ラウンド合意においてコメの関税化猶予の代償としてミニマム・アクセス数量を8%(関税化への前倒し移行によって7.2%)に設定したということは、これは国際的には関税の設定と同じように譲許、つまり約束なんだということです。だから、これをもとに戻すのは大変なことなのです。

 若林 もちろんその大変さは分かりますが、7.2%を5%に戻せといっても5%以下にとは考えていません。5%以下にしろ、という主張はWTO協定から抜けるという話になりますからそれはできないことは分かっています。ただ、先ほども言いましたが米も例外なき関税化というルールに従ったわけですから、それなら本来の水準と同じであるべきではないかということです。

 服部 気持ちはよく分かります。日本の農業者の願いだと思います。ただ、交渉の場で、具体的に7.2%になっている米のミニマム・アクセス数量を5%に下げるべきだと主張することは、ただちに代償を求められることになるのです。

 若林 そこで、われわれが言っているのは、その点を交渉しながらも、一方では国による一元的な輸入、マークアップの水準、二次関税の維持という問題も見据えながら、どちらが農業者の利益になるか考えて交渉して下さいということなんです。

 服部 それが現実的だと思います。代償措置ということになれば、輸出国は、関税の大幅引き下げを要求してくるに決まっていますから。

 滝沢 今、農家がいちばん困っているのは国内で100万fを超える減反をさせられて、一方でミニマム・アクセス米がどんどん入ってくることに対して、ものすごい不満と危機感を持っているわけですよ。
 したがって、私としては、もういちど米のミニマム・アクセスについては、UR合意時に選択した特例措置のような仕組みがつくれないのか、こうした点を交渉できないのかと思います。

 服部 もう一度輸入数量制限をするということですか。

 滝沢 米のミニマム・アクセス数量の7.2%を5%に戻すことは難しいということですよね。それならば、現在の日本の米生産の現状をふまえて、前回、関税化を猶予する選択肢として特例措置を設定したのと同じ理由で、今回はそれをミニマム・アクセス数量の制限のための条件とすることはできないか、ということです。輸入制限と言われればそういうことになりますが。

 服部 その問題を日本提案では制度自体の改革として追求していこうとしているわけです。たとえば、基準年(1986〜88年)を現在に変えれば、5万トン程度減りますよね。
 また、国際貿易のなかに占める割合が、米は小麦やとうもろこしとは違うということを考えて改善していくべきではないかという提案もしているわけです。
 具体的に米のミニマム・アクセス数量の削減を主張すれば、ただちに代償の問題になりますから、そういうことを避けて制度の改革一般として提案をしているのが今回の特徴なのです。

 若林 われわれが米の問題を話し合うと、米の価格を維持すればいいのか、農家の所得が守られればいいのかという議論になるんですね。たしかに、生産調整をしながらミニマム・アクセス米が輸入されるという矛盾はありますが、現実的に輸入阻止ができないとするならば、農家の所得確保の点から今回の交渉はがんばらなければいけないというのがわれわれの主張です。

 服部 前回のウルグアイ・ラウンドの最大の失敗は、日本はコメの関税化を強く拒否するあまり、コメのミニマム・アクセスを5%から8%に引き上げるという代償を払ったということなのです。その反省に立てば、いかに代償問題を出さないかということになると思います。

新たな「セーフガードの実現」は切実な願い

 並河 国境措置の問題ではセーフガードの問題もあります。今、輸入野菜が急増し全国でセーフガードの発動を求めていますが、この点については特別セーフガードは維持していくというのが日本の要求の第一点だと思います。同時に特別セーフガードを他の品目にも広げていくということも論点になると思いますが、全青協ではどう考えていますか。

 若林 セーフガードについては、まず国内的な手続きの迅速化を求める運動をしています。それから、セーフガードの発動は工業製品と農産物は別にして制度を考えるべきだとも主張しています。野菜の場合は、たとえば調査してから1年後に発動するなどというのでは意味がありませんからね。

 滝沢 そうですね。機動的に発動できるようなシステムにしておかないと意味がありません。

 服部 日本提案は、腐敗しやすいという農産物の特性を踏まえて、特別セーフガードと同じ制度を農産物にも作るべきだということを言っているわけですね。特別セーフガードとは、輸入量増大や価格低下の程度が基準となる数値を満たせば自動的に関税水準を上げることができるという制度です。

 並河 輸出国と輸入国のバランスをとるという問題もここにあると思いますね。輸入国に同等な権利を持たせる観点から特別セーフガードのような仕組みがもっとほかの農産物に広げられるとすれば、それが輸出国と輸入国の権利義務のバランスになるという主張をして各国に理解を得るべきだと思います。

 服部 ただ、この問題で難しいのは、輸出国といってもそれは米国やケアンズグループではないことですね。中国なんですね。しかも中国で野菜を生産しているのは日本の商社やメーカーなわけでしょう。つまり、最終的には輸出国との問題というよりは、国内問題としての面が強いのです。

 若林 われわれの地域にも途上国から研修で農業者が来ますが、途上国の自給率を上げるために技術を教えるなどの協力をしてきたわけですね。ところが、そのことがわれわれに打撃を与えるという結果になっているわけですから、何とかならないかと思いますね。
 野菜や果樹は、3年に1回儲かれば、経営が維持できるという世界でした。しかし、現在は価格が上がったときには、輸入が増えますから、生産者としては見通しが立たない。このままでは、だんだん産地がなくなっていくと思います。

 並河 この問題は、食の安全性の点からも、安全性が確認できなければ輸入しないというアプローチも必要だと思いますね。

 若林 検疫の強化ということもわれわれは主張しました。それから表示の徹底、強化という問題もあると思います。そこを強化して消費者にもっと国内農産物を買ってもらう運動も必要になると思いますね。


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