座談会 「WTO農業交渉 10の争点」 「多様な農業の共存」の時代をどう実現するのか |
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1ページ 2ページ : 「国境措置」の争点−(争点@、A、B、C) 3ページ : 「国内支持」の争点−(争点D、E、F) 4ページ : 「輸出入規律」をめぐって−(争点G、H、I) |
並河 輸出補助金については日本は削減を求める立場を出しました。EUも削減の立場ですから、この点では共通ということになりますね。 若林 この問題では、われわれも以前からEUとの兼ね合いがあると考えていました。基本的には輸出補助金はなくすべきだとは思いますが、EUの農業者の意見を尊重しようということはわれわれも考えました。 滝沢 この件で指摘したいのは、米国が導入した市場価格の低下に対応する市場損失補償は、一種の輸出補助金ではないかということです。 服部 輸出に直接関係ないですから、輸出補助金とはいえませんが、これは「黄」の政策ですね。 並河 それについて日本はどう言っているのですか。 服部 日本は今のところ何も言っていません。しかし、今後、輸出規律の強化の問題として主張すべきでしょうね。 滝沢 先ほどの市場損失補償の場合も、米国の論理は、もともと固定支払いは「緑」の政策なのだから、追加支払いも緑だということでしょう。そこは問題にすべきだと思いますね。 並河 日本にとって重要なことは、食料援助の問題があります。たとえば、ミニマム・アクセス米をどんどん食料援助に回したいわけですが、全青協ではどんな議論になっていますか。 若林 これは実現が難しいことは分かっているんですが、食料援助についてはミニマム・アクセス米を国連機関などを通さず食料不足国に直接、食料を送れるような制度ができないかということです。輸入した安い米をそのまま送れば、経費もずいぶん下がると思いますが。 滝沢 食料援助については、被援助国がたとえば米国のマーケットだとすれば、日本の援助はマーケットを奪うものだという批判が出てくるわけですね。そういことについてEUはどう主張しているのですか。 服部 EUは、むしろ米国のほうがマーケットを奪うような援助をしているではないかという批判です。つまり、米国はまず食料援助として食料を出しておいて、すぐにそれを商業援助に切り換えると。だから、米国の食料援助は一種の輸出補助金ではないかというわけです。EUの主張は食料援助は人道援助に限るべきだとしています。 ●海外の農業者、消費者との連携が一層重要に 並河 最後に10の争点には入っていませんが、議論しておきたいのは遺伝子組み換え食品の扱いやそれにともなう表示の問題です。 若林 これはWTO交渉そのものとは別ですが、われわれは原産地表示をしっかりしてくれという運動をしています。
滝沢 安全性についてはどのレベルの安全性かという点も重要ですね。一回食べて安全だということと、長期毒性はどうなのかという問題があります。基本的に技術は進歩するものだから、いろいろな技術が登場すると思います。しかし、今の状況は米国内でさえも疑問が上がっているわけですし、スターリンク問題のように米国では混入されていないとして輸出されても、日本では混入が確認されたということもあります。そういう点では、きちんとした表示と同時に検査、検疫の体制の強化も必要だと思います。 服部 この点でもEU提案は大事だと思っています。EUは全食品についての原産地表示を国際的にも実施すべきと提言しています。それから安全性については予防原則に基づくべきだということです。 並河 この問題に対するEUの態度には学ぶべきことが多いと思いますね。たとえば、予防原則というのは、生産者と消費者にとってある意味ではセーフガードよりも強い措置になるかもしれないわけです。安全性に関するセーフガードですからこの点は国内でも消費者との連携を進めるべきでしょうね。 若林 われわれも3月ごろから各国の青年農業者と連帯を深める活動を始める予定です。 並河 ぜひがんばっていただきたいですね。今日はありがとうございました。 (了) |
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農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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