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第47回JA全国青年大会特集
農業再建・地域営農確立と大規模専業農家のために活動するJAグループの挑戦

座談会 「WTO農業交渉 10の争点」 「多様な農業の共存」の時代をどう実現するのか

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2ページ : 「国境措置」の争点−(争点@、A、B、C)
3ページ : 「国内支持」の争点−(争点D、E、F)
4ページ : 「輸出入規律」をめぐって−(争点G、H、I)

国内支持の争点 
D  価格支持などの「黄」の政策の削減についてどう交渉するのか。
E  「青」の政策についてどういう主張をするのか。
F  条件不利地域への直接支払いなどの「緑」の政策の維持、拡大をどう主張し、 交渉するのか。

 並河 次に国内支持をめぐって論議したいと思います。論点は、削減対象となる「黄」の政策への対応、生産調整のもとでの直接支払いとして保護削減が猶予された「青」の政策の維持、削減対象外の「緑」の政策の範囲拡大などですが、まず全青協の考えを聞かせてください。

 若林 国内支持については、その政策を「黄」、「青」、「緑」とする今の枠組みは維持してもらいたいということが基本的な主張です。

 並河 枠組みそのものは現行でいいということですか。つまり、UR合意では削減すべき政策を提示して「黄」の政策とし、それを一定のレベルで削減していくという枠組みですが、それが守られればいいということですね。

 若林 基本的にはそういうスタンスです。

 並河 服部先生、米国やケアンズ・グループの主張はどうなっているのでしょうか。

 服部 まず削減が暫定的に猶予されている「青」の政策はなくせということです。「黄」については日本やEUは漸進的に削減するということですが、ケアンズ・グループは撤廃すべきだと言っていますし、米国は算定基準の見直しを主張しています。

 滝沢 私が議論すべきだと思うのは、「緑」の政策に関係する多面的機能についてです。これは日本とEUの主張の内容は同じではありませんね。そこは今後どう影響してくるのかということです。
 これはオーストラリアに行ったときに感じたんですが、たとえば、水田の水源かん養とか、ダム機能などが理解されないんですね。なぜかといえば、オーストラリアでは水田はむしろ自然破壊だと思われている。水田が水を貯めるから、地下水、塩水が上昇して果樹などが枯れてしまうではないかという発想です。そもそも水田が自然保護のための手段として役立っているなんていうのは口実だというんですね。

 若林 その問題に関連するんですが、逆に米国では日本が多面的機能として挙げている個々の項目について、その重要性については認めていると聞きました。ただ、多面的機能と一括りにしてしまうことに抵抗があるということなんでしょうか。

 服部 日本が多面的機能として挙げている内容は、食料安全保障と国土・環境保護、地域社会の維持の3つです。EUはここに食品の安全性と動物愛護を加えているわけです。日本がこれらを加えるのかどうかということは別として、多面的機能というのは、結局、そこに工業とは違う農業の独自機能を認めろということなんですね。
 それをケアンズ・グループは認めない。彼らは農業の独自性を認めないという考え方ですからね。そこに多面的機能という言葉を使うことへの抵抗があると思う。

 また、多面的機能を考えればそれに対応した政策は、当然「緑」の政策となり保護削減対象外になるということに加えて、多面的機能を持っている農業を維持することにこそ意味があるのだから、国境措置、関税などの削減の問題でも考慮されるべきだということを日本やEUは主張することになるわけですが、その点で一般的な概念として多面的機能が使われることに対する輸出国の警戒があるわけです。
 しかし、ではこの主張はアメリカやケアンズが受け入れようとしないしなから意味がないかといえば、逆なのです。これは日本とEUの連携の軸なのですね。WTO全体のなかで、仮に多面的機能が認められなくても、日本とEUの連携の絆なのです。

 並河 「青」の政策(生産調整のもとでの直接支払い。保護削減対象外)については、日本はEUを支持していくということですか。

 服部 というよりも、日本が、初めて青の政策についての原則的な問題提起をしているのです。「黄」の政策から「緑」の政策には一気に移ることはできない。当然、中間段階がいる、そのために「青」の政策が必要だと原則的な提起をしています。
 そもそもUR合意では、アメリカとEUがEUの直接支払いと米国の当時の不足払いについて、これを保護削減対象外にしたいがために「青」の政策をつくったのです。実は、そのときは原則的な検討をしていない。それで今度、米国は不足払いをやめたから、「青」はなくせといっている。これは身勝手です。

 並河 途上国の考え方はどうでしょうか。

 服部 途上国の提案は極端です。「黄」も「青」もなくせ、です。つまり、先進国の国内支持はすべてなくせということです。途上国は先進国と社会の状況も違い財政的制約で国内支持ができないから、先進国も国内支持はやってはいけないということですが、これは言い過ぎだと思います。

 滝沢 先進国は途上国の特殊性を認めようといっているわけですが、途上国は「黄」も「青」も廃すべきだというわけですね。
 そもそもこのような国内支持に対する枠組みを作ったことが問題だといえるかもしれませんが、それは別として、日本として問題なのは「青」の政策があれば存続させることができる国内支持もあるのに、これを取り払われたら何もなくなってしまうことになってしまう。だからこの部分は重要ですね。

 並河 日本では、自給率の向上目標を掲げた基本計画を策定しましたが、個々の政策を「青」や「緑」に位置づけることが可能なんですか。

 服部 稲作経営安定対策をまず「青」としてWTOに通報しようということでしょう。稲経は98年度から始まりましたから、98年度の国内支持の実施状況について報告することになると思います。

 若林 それが認められれば、大豆の経営安定対策などこれまでに創設されたすべての経営安定対策も「青」として認められるということですか。

 服部 ただ、大豆と麦の経営安定対策は生産調整を前提にしていませんから「黄」の政策になると思います。もちろん「黄」といっても一定の保護水準は認められているわけですからそのなかに位置づければいいと思います。

稲作経営の安定をいかに図るか。国内対策も課題

 滝沢 私がいちばん気になるのは米ですが、米価のこの暴落状態をなんとかできる国内支持策として、稲作経営安定対策以外に可能なものはないのでしょうか。生産費を割り込むような現在の米価には大規模農家ほど大変になっています。たしかに転作奨励金は「緑」の政策とされていますが、国内の政策方向としては転作奨励金からの脱却といわれ、今回は転作への助成額は増えたにしても、長期的には減ってきていますね。

 服部 この問題は交渉の問題から離れますが、基本的に国内需給で価格が決まっているわけで、価格が下がるということは過剰だということだと思います。それならやはり米以外の作物を水田で作ろうということが大事だと思います。

 若林 食糧法になって米価が市場価格で決められることになったことは仕方がありません。
 ただ、制度の変化に対応して、稲作の規模拡大を進めてきても、大型機械の導入などにかかるコストを生産者は当時の米価で試算して計画を立てているわけです。ところが、今の米価では借金の返済ができないことになってしまう。与党や政府への要求でも、この点を何とかできないかと主張してきました。そういった問題を解決するのが今後検討される総合的な経営所得安定対策だということだと思っていますが。

 服部 どういう仕組みにするかは今後の課題ですが、その際、稲経などの品目別の経営安定対策は残し、その下に、なおかつ品目横断的な経営安定対策を仕組むという形にならなければいけないと思いますね。米価が大幅に下がっているのは事実ですから、そういう政策の組み合わせをせざるを得ないと思います。

 並河 次に輸出入問題について考えてみたいと思います。今回、日本は、輸入国の立場から輸出国の権利・義務について問題にしています。全青協としてはどのような主張をされていますか。

 若林 WTO自体が輸出国主導になっていると考えています。たとえば、輸出国が不作だったら輸出しなくてもよく、一方、輸入国にはミニマム・アクセスの機会を課せられているわけですね。これはあまりにバランスがとれていないわけですから、輸入国の権利も主張しながら交渉してもらいたいということです。

 滝沢 ただ、その主張する内容としては、たとえば、輸出国も義務を負って輸出禁止しないという約束をしろといってもあまり意味がないんじゃないかと思います。凶作のときに自分の国の国民を飢えさせても、輸出する国はないでしょうから。約束させないよりさせたほうがいいとは思いますが、あまり有効ではないような気もします。
 むしろ、そういう約束と引き替えに、さらにこちらに代償が求められるという可能性もあるのではないかということです。

 服部 その点は、日本提案ではこうなっています。前回のウルグアイ・ラウンドでは、輸入制限については原則関税化したにも関わらず、輸出国側の数量制限が残っているわけですね。そこで、日本提案では、輸出数量制限を関税化すべき、といっているわけです。すなわち、輸出税というものに置き換えるべきということです。
 これは、需給がひっ迫してきたら輸出税をかけてもいいですよということで、そのかわり、こういう幅で輸出税を設定すると譲許すべき、ということです。そうすれば輸入国にも輸出国の状況が分かる。しかも、日本提案では、輸出税を設定する場合でも、一定の数量については輸出税をかけずに必ず輸出するという枠を設定すべきと主張しています。いわば、輸入のミニマム・アクセスに対応した枠を輸出にも設定すべきだということです。


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