◆前年上回る新契約、過去最高の共済金支払額
JA共済連は、7月28日の総代会で16年度の業務報告および決算を承認した。
この決算を一言でいえば「厳しい環境の中で健全性を保てた決算」といえるだろう。
16年度は「No.1の安心と満足の提供のために」をスローガンとする「JA共済3か年計画」の初年度だったが、既報の通り、長期共済新契約高は保障共済金額で31兆7691億円と前年度を5.4%上回る実績をあげた。
また、これも既報の通り、共済金支払額は、自然災害の多発によって建更の自然災害共済金が前年度比627.9%と大幅増の2472億円となり、これを含む事故共済金が1兆2142億円(前年度比120.3%)、満期共済金が2兆4467億円(同96.7%)、総額で3兆6609億円となり、これまでの最高額である15年度の3兆5391億円を上回る過去最高の支払共済金となった。
また、複数の共済契約をJA共済フォルダーにまとめて登録する「JA共済しあわせ夢くらぶ」の登録者数が、累計で855万人となり、次世代対策として進めているニューパートナーの獲得実績は43万人だった。そしてLAを主体とした推進体制の強化・生産性向上に取り組んだ結果、16年度末でのLA数は2万560人となり、長期共済新契約に占めるLA実績占率は59.2%と60%に迫る実績となった。
◆総合保障の強みを活かして課題克服を
しかし、推進面で課題がないわけではない。表は大手・中堅生保9社とJA共済の16年度実績の主な指標をまとめたものだが、新契約高をみると、少子高齢化の進展などによる死亡保障ニーズの低下による影響を受け、9社の新契約高は前年比12.6%減と大幅に減少した。JA共済は5.4%増となっているが、自然災害多発による建更ニーズによるもので、生命共済だけをみれば27%の減となっており、生保各社と同じ傾向にあるといえる。
生保各社の新契約高の減少は、解約・失効率が改善され「平常時に戻った」にもかかわらず保有契約高のさらなる減少に歯止めをかける力にはならなかった。そのため、生保の保有契約高は8期連続して減少。生保39社ベースの保有契約高は、平成9年3月末の1496兆円をピークに8年間で4分の1を失った。JA共済は2%減と健闘しているが、生命共済だけをみれば4%減とほぼ生保と同じ傾向を示している。
JA共済は、生保・損保を合わせて行なえる事業形態をとっており、生命共済が苦戦していても建更でカバーできるという良さをもっている。16年度の業績をみると正にこの利点が有効に活かされているといえるだろう。
あと1〜2年はこの傾向が続くのではないかと予想される。しかし、トップLAであるJAみっかびの縣さんや清水さんが本紙に語ったように、建更には限界があり、いずれ“ひと”を中心とした推進をせざるをえなくなるのではないだろうか。
既存契約者との“絆の強化”は、3か年計画の大きなテーマだが、「JA共済しあわせ夢くらぶ」登録者のうち、「ひと・いえ・くるま」の総合保障を受けているのは2割に過ぎないという。あとの8割の人は、1つまたは2つしかJA共済を利用していないことになる。この8割の人に、いま利用していない共済をどう推進していくのか。
次世代対策としてニューパートナーの獲得も、これからの重要な課題だが、生保各社が力を入れ始めている第3分野に、新たな仕組み開発も含めて、どう取り組んで行くのか。さらには2年後に全面解禁される「窓販」にどう対応するのかなどが、これからの大きな課題となるのではないだろうか。
◆組合員の信頼に応えた健全な経営
総資産は、前年度末より5637億円増え、42兆7047億円(前年度比101.3%)となり、日本生命に次ぐ規模となっている。また、共済事業本体の期間損益をあらわす基礎利益は、主に自然災害の多発によって建更の危険差益が減少したことから、前年度より800億円減少し3343億円となった。
基礎利益のうち、利差損(逆ざや)は132億円減少し5692億円となった。生保各社に比べて高い水準にあるが、見方を変えれば、共済契約は30年前後の長期にわたるものであり、高い予定利率時代の契約が解約されず継続していることであり、これはJA共済への信頼が高いことのあらわれだともいえる。
実際に表の解約・失効率をみると、生保各社は改善されたとはいえ依然、8%前後から10%を超えるところもある。それに比べればJA共済の解約・失効率は非常に低いといえる。
実質的な債務超過かどうかを判定する基準である実質純資産額は、4750億円増加して6兆6512億円となり、総資産に占める割合も0.9%増加して15.6%という高水準を維持している。
16年度決算では、自然災害多発による支払共済金の大幅な増加に対応するために、共済事故リスクに備える異常危険準備金を280億円取り崩したが、一方で、将来の巨大災害に対する担保力の確保をはかるために668億円を新たに積み立てた。また、依然として利差損が高水準で推移しているため、予定利率リスクに備える異常危険準備金の造成を行い、1289億円を新規で積み立てた。
このように、厳しい環境下でいくつかの課題はあるものの、16年度決算は「経営の健全性の維持・向上と強固な経営基盤の確立をはかる」決算となったといる。
なお、経営の健全性をみる指標である支払余力(ソルベンシーマージン)比率は、53.6ポイント増加の883.1%と極めて高い水準にある。
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