◆農薬事故の多くは保管管理の不手際
「農薬危害防止運動」は水稲害虫のニカメイチュウに高い効果を示した殺虫剤「パラチオン」による中毒事故などが増えた昭和28年から始まった。
同年には年間1800件ほどの中毒事故が起きたが、その後の安全指導の徹底や、農薬自体が人畜・環境に対する安全性を飛躍的に高めたことで、今では人への被害は40件以下、農産物や家畜への被害も50件ほどと非常に少なくなっている。
人への危害の多くは、使用者の保管管理の不手際や不十分な装備などによるものであり、農水省では農薬の取り扱いに対する正しい知識と事故防止の意識を高めるよう指導している。また、近年の運動の重点取り組み事項として、地方都市でも宅地開発などが進み農地と住宅地が近くなったことから、ドリフト(農薬飛散)対策や近隣住民への説明など、使用者本人だけでなく周辺住民の健康被害への配慮を強化することとしている。
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会場の様子
◆農産物の「安心」をどう客観化するか
講演会で発表した住友化学の古津氏は実際の問い合わせ例をいくつかあげ、現在のメーカーや販売点が抱える課題などについて意見を述べた。
同室にかかってくる問い合わせでもっとも多いのは商品情報についてだ。特に「インターネットで調べた情報とラベルの情報が違う」、「希釈倍率が重さなのか量なのかわからない。計り方や計量道具を記すべきでは」などラベルについての問い合わせが多く、「ラベルの見やすさ、適用拡大などへの対応はメーカーとしての今後の課題だろう」と述べた。
シンジェンタの今瀧氏は「GAPを巡る話題」をテーマに、農業で安心、安全を確保するにはどうすればよいかについて話した。
香川県のとあるイチゴ産地でGAPを導入するため果実の生菌数とその汚染源を調査したところ、施設の床壁や通い容器などよりも農家・作業者の手指からの感染が圧倒的に多いことがわかり、それに基づいて管理プランを作成した事例を紹介。「GAPは、単に管理プランをつくることではなく、リスクを分析し管理するという考え方を導入するのが狙い」であり、そうした第三者による認証が「安心を客観化するために必要だ」とした。
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上:住友化学・古津氏
下:シンジェンタジャパン・今瀧氏
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