◆減少一途の都市農地
都市農地は毎年大きく減少し続けている。
「市街化区域」内の農地のうち、都市環境の保全などを目的として将来的に農地・緑地として残すべきだと指定された「生産緑地」は、それが制定された平成5年に1万5164haだったが、21年でも1万4339haとほぼ変わらない。一方、それらも含む市街化区域内農地面積は、5年に14万3258haだったものが21年には8万8741haと、毎年平均で3500haほど減っている。
日本全国の農地面積減少率は、ここ10年間は0.4〜0.6%ほどで推移しているが、都市農地の減少率はそれをはるかに上回る4〜6%ほどだ。
減り続ける都市農地だが、一方で新鮮な農産物の供給源、都市部での農業体験や自然と触れ合える場所、高い保水機能やCO2削減といった多面的機能、などの点で評価する声は年々高まっており、21年に東京都が行ったアンケートでは85%の都民が「東京に農業・農地を残したい」と答えている。
農水省では、こういった背景を受けて今後の都市農業の振興や保全について幅広い視点で話し合おうとこの検討会を設置した。
◆「農地だけでは農業はできない」
検討会でまず話題になったのは税制だ。
農水省が先日発表した「都市農業実態調査」によると、農業を続けていく上での支障として6割以上が「相続税・固定資産税の負担」を挙げ、8割がこれらの軽減を求めている。検討会でも改めてこれらの改善を要望する意見が出た。
さらに安藤委員は農地の相続税猶予制度について、「農業を守るための必要条件にはなり得ていない。農地を守るという点では有効だが、農業者の住居なども守らなければ農業は続けられない」と指摘した。
ほかには、「都市住民や市民らがもっと主体的に都市農業の保全にかかわれるような施策が必要だ」(矢野委員)、「市民に理解を得られるよう、都市農業の多面的機能や防災機能などの経済効果を示してほしい」(野岸委員)などの意見もあった。
二村委員の代理で出席した寺西正文・JAなごや常務理事は「(都市農業に対する)住民の評価や期待は確実に高まっているのに施策が古いまま」だと批判。オブザーバーとして出席していた国交省職員は「農業を都市化に対応させるような従来の施策ではなく、根本的に考え方を変える必要があると思う」などと述べた。
検討会は今後月1回のペースで会合を開き、24年夏頃までに中間とりまとめを行う予定。
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委員は次の12人(五十音順、敬称略)。
▽安藤光義(東大大学院農学生命科学研究科准教授)
▽加藤篤司(JA東京青壮年組織協議会顧問)
▽加藤義松(全国農業体験農園協会理事長)
▽後藤光蔵(武蔵大学経済学部教授)
▽小林辰男(東京都農業共済組合組合長理事)
▽榊田みどり(農業ジャーナリスト)
▽中井検裕(東工大工学部教授)
▽沼尾波子(日大経済学部教授)
▽野岸嘉和(寝屋川市市民生活部産業振興室課長兼農業委員会事務局長代理)
▽野島五兵衛(農園 杉・五兵衛代表)
▽二村利久(JAなごや代表理事組合長)
▽矢野洋子(東京消費者団体連絡センター事務局長)
※野島氏の「野」は正式には旧字体です。左に田、右に又、下に土を書く。
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