現在、牛肉の放射性セシウムの検査はと畜後にゲルマニウム半導体検出器を使って行われているが、と畜前の農場段階で汚染度合が確認できれば牛の出荷調整ができる。このためJA全農は(独)農研機構畜産草地研究所、福島県畜産研究所、北大、(株)富士電機の協力を得て、昨年8月から牛の体表から筋肉中のセシウム濃度を測定する方法を開発してきた。
開発したのは、測定器(ヨウ化ナトリウムシンチレーション・サーベイメーター)を牛の腰角後方の平らな部分の左右2か所に起き、放射性セシウムによるガンマ線量を計るという方法。ただし、測定時には周辺から飛来する放射線を遮断するため、鉛の遮蔽リングをあらかじめ体表に置いて、それに測定器を挿入するかたちで行う。計測時間は左右それぞれ5分。
一方で畜舎の地面からの放射線の影響を計測値から差し引くことも必要なため、蒸留水を満たしたポリタンク(20リットル)4つを地面に重ねて置き牛の体表での測定法と同じ方法で5分間、2回測定する。 こうして得られた外部環境中の線量を牛体表の計測値から差し引く。さらに、これにゲルマニウム半導体検出器によってこれまでに得られた肉の測定値との相関関係から算出した係数をかけて換算値を出す。この方法での検出限界値は50ベクレル/kgだという。
放射性セシウムの測定機器は電池式で1台約50万円。重さは1.3kg。鉛の遮蔽リングは
約7kgで業者に依頼すると13万円前後になるが自ら鉛の板を加工するなどで割安に製造することもできる。
牛肉の放射性物質の新基準は4月から1kgあたり100ベクレルに引き下げられる。JA全農では短時間で計測できるこの方法によって、食肉センターなどへ農場から出荷する際に、事前に肉の放射性セシウム量を確認することができ出荷の判断に活用することができるとして、今後も情報提供していく方針だ。
(写真)
上:測定器(ヨウ化ナトリウムシンチレーション・サーベイメーター)
下:牛から放射性セシウムを測定する作業員
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