◆あくまでも管理のための値
原発事故による放射性物質の放出で昨年3月17日、厚生労働省は食品からの被ばく線量の許容量を年間5ミリシーベルトとして暫定規制値を設定した。
根拠は原子力安全委員会が原発事故などを想定して決めていた指標。この年間許容量5ミリシーベルトを食品に割り振り、米や野菜、肉などは1kgあたり500ベクレル、飲料水、牛乳・乳製品は200ベクレルとされ、その後、この規制値を超える放射性セシウムがいくつもの農産物から検出されたことから出荷制限を受けた。
つまり、暫定規制値とは、政府が放射性物質を管理し低減対策をとるべき基準(=介入線量レベル)であり、その具体策が出荷制限をかけるということである。これによって規制値を超えた食品が流通し人の口に入ることを防止することができるが、同時に出荷制限とは、こうした農産物を生み出してしまった事態について政府が対策をとるべき状況にあることをも意味するといえる。現に出荷制限は原子力災害対策本部長である総理大臣が指示を出す。
もちろんこの暫定規制値は食品安全委員会でも審議され、規制値以下の食品であれば健康への影響はないと安全性を担保するものと評価されてきた。
しかしながら、昨年10月、小宮山洋子厚労大臣が年間許容量を1ミリシーベルトに引き下げる方向で規制値を見直すことを表明した。その理由は、これまでも安全は確保されていたが「より一層、食品の安全と安心を確保する観点から」と説明された。これを受け厚労省や文科省などの審議会での検討を経て新基準値が策定され、この4月から施行されることになったのである。
◆なぜ、5分の1に引き下げ?
しかし、なぜいきなり厳しく5分の1に引き下げるのか?
厚労省は年間許容量を1ミリシーベルトとする理由について、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会が「年間1ミリシーベルトを超えないこと」と決めているからと説明している。つまり、国際基準に合わせるということである。 また、これまでのモニタリング検査の結果から時間の経過とともに検出濃度が低下傾向にあることも引き下げの理由とした。
新基準の策定にあたっては、特別な配慮が必要と考えられる「飲料水」、「乳児用食品」、「牛乳」を区分し、その他を「一般食品」とする4つの区分とした。ここでいう「牛乳」とは牛乳、低脂肪乳、加工乳と乳飲料(コーヒー牛乳など)で、ヨーグルトやチーズなど乳製品は「一般食品」の区分に含めた。
乳児用食品は粉ミルクやおやつ、ベビーフードなど消費者が表示などで乳児向けであると認識する可能性が高いものを対象とした。
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