意見交換の前にJAおきなわの普天間朝重常務と十勝農業協同組合連合会の高橋敏電算事業部長から報告があり、普天間常務は県単一JAに至った経緯を踏まえながら今後の人づくりについて話した。
JAおきなわは平成9年以降の金融機関に関する早期是正措置やペイオフ解禁といった背景のなかで、多くの県内JAが多額の不良債権を抱えていたことから単一JAにせざるをえず平成14年に合併。合併後は信用事業再構築計画を策定し、5年間で職員689人、信用・購買店舗92店舗の削減を進めてきた。
しかし人材を失うことでこれまでのノウハウも同時に失ってしまったとの反省をふまえ、合併10周年を迎えた今年度を「教育元年」として人材育成の強化に努めていくことを決めた。
とくに離島が多い沖縄は支店での活動が中心となる。そのため重要となるのは支店長の存在だ。以前の組合長のような力量を持つ支店長や副支店長の存在の重要性が合併によってクローズアップされたことで、「支店長の復権」を今後の目標としている。
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あいさつする今村代表
◆支店長の力量が要
組織の中核となる人材の育成は、全国的にJA合併がすすむなかでのJA共通の課題といえる。また現在議論されている第26回JA全国大会議案で「JA支店を拠点とした」活動の重要性が戦略の柱の一つであることからも、いかに支店長が組合員や地域住民のニーズを汲み取れるかが重要となる。
意見交換のなかでも「強いJA組織にするには職員のやる気と役員の判断、この2つの『点』が『線』としてつながらなければいけない」(JA全農千葉県本部・加藤浩生営農担い手対策課長)との指摘があり、普天間常務は、かつて宮古島でカボチャの生産量は増えているのに取扱量が業者にとられ激減した際、業者がやっていた現金での買取り、畑丸ごと全量買取り、無償での種の提供を営農指導員に指示したところ、一気に集荷量が回復したという事例を挙げ、「現場の問題を権限のある人が拾い、つなげてあげることが大事」だと述べた。
◆専門家をどう育てるか
十勝農業協同組合連合会の高橋敏電算事業部長は十勝地域にある24JAが「ネットワーク」として組織する「JA十勝ネットワーク」の取り組みを報告。
同ネットワークは個々のJAの特色が失われることや組合員に密着した活動の停滞を懸念し、合併というかたちではなく、各JAの経営基盤の強化と協同事業による農業生産の向上、コスト低減による効率化を目標に平成13年に発足した。
結成から11年たち、財務強化の成果や資材・施設の共同化が進んできたなかで、今後の課題は「十勝ブランド」の構築だという。
ネットワークでは品目ごとに決めた「幹事JA」が各JAの野菜を結集して調整から販売までを担う広域販売体制を敷いているが、今後は高付加価値化をめざし、営農指導の強化を意識した協同事業の推進に力を入れていきたいとする。
高品質で安定的な供給に信頼がある十勝の農産物にブランド力をつけ消費者にPRしていくことが今後JA職員に必要だという。
こうした課題に取り組むことが求められているが、現在JA共通の悩みといえるのは「新入職員が2、3年で退職していくという現状やコンプライアンス上、3〜4年で部署異動があるため、その分野に特化した『専門家』が育たない」(JAさが・原壽男常務)ことだ。
その中で「40歳までの職員に管理職か専任職どちらの道を希望するか3年ごとにアンケートをとっている」(JAあつぎ・佐藤和彦常務)といった対策もある。
普天間常務は県内でカボチャの指導力に長けたスペシャリストが1人おり、各地で普及に貢献しているとして、今後は「JAの中にあたかも専門JAがあるかのようにするべき。人事異動もそのなかで行うことべき」だとして、今後は「○○バカ」というような職員を増やしていきたいという。
◆見せて育てる
営農活動を強化していくうえで重要となることのひとつとしてTACの育成も議論された。
普天間常務は「役員もTAC担当職員に同行して現場を回り、農家に叱られているところをTACに見せ、“怒られてもいいんだ”と思ってもらうことで活動がしやすくなる」。
また「送られてくるTACの日報メールには必ず目を通し、気になる農家のコメントはTACに『もっと踏み込んでほしい』と声を掛けたり、月1回信用事業担当との議論もしている。こういった姿勢がTAC自身のやりがいや農家の信頼につながる」として、ここでも役員の積極的な働きかけが重要であるとした。
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