◆外資参入も着々
農政ジャーナリストの会が特別研究会として講師に招いた。
韓国では今年1月からKBS(日本のNHKにあたる公共放送)とMBSの2大放送局やニュース専門チャンネル、通信社などの経営陣が政府寄りの報道統制を現場に強いているとして編集権の独立という「公正報道」をめざして労組が抗議ストを続けている。
国内の報道は「いかに物価が下がるかなど表面的なことばかりで構造的な問題に触れていない」という。李氏によると米国企業に対する韓国企業のライセンス料支払いが急増したり薬価が上昇したりしているという。ただ、これらはISD条項による提訴を恐れた“前払い”的な動きだという。
同時に韓国の新幹線、KTXの民営化の動きも出てきた。競争原理を導入することで運賃を下げるのが狙いだが、外資の参入、不採算路線の廃止などとつながる懸念もあると指摘、ほかにもインチョン空港、電気、ガス、水道まで民営化が検討されているという。
韓米FTA発効で自動車メーカー、ヒュンダイなど輸出産業の業績は伸びるかもしれないが「それは稼働率が上がるだけ。雇用なき成長、増えたとしても非正規雇用」と実態を話した。
(写真)KBSのプロデューサーで全国労働言論労働組合委員長の李康澤(イ・ガンテク)氏
◆日本がモデル示して
一方、昨年秋から国民的な反対運動が報じられたが3月15日の発効以降は「運動はないに等しい状態」。その理由として、センセーショナルに盛り上がったものの政府のウソを見抜き本質を暴いて人々が理解することにつながらなかったことや、農村部など地域がすでに衰弱していること、さらに輸出依存度が高い経済構造の韓国で代案を打ち出せていないことなどを挙げた。こうしたなか12月の大統領選挙でも争点になりにくくなっているのが現状だという。
ただ、李氏は「東アジアでの互恵的な関係をいかにつくるか」など代案を構想していくことが大事で、日本のTPP反対運動を地域中心で進めていることに着目、「さらにフクシマ後の脱原発運動の広がりなど社会の根本的な問題を問う運動とも連携し、新たなモデルをつくることを日本に期待したい」などと語った。
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