◆協同組合関係者ら1000名が参加
会場には、全国からJAグループをはじめ生協・漁業・森林組合など協同組合関係者約1000名が参加した。
集会ではまず萬歳章JJC委員長・IYC全国実行委員会副代表(JA全中会長)が、
「協同組合が社会、経済に貢献していることについての国民への認知度向上に貢献していきたい」と開会のあいさつをしたあと、7月16日に炎天下で開催された「脱原発集会」とその後のパレードに参加して、日焼けをし「黒くなった」という内橋克人IYC全国実行委員会代表がおおよそ次のように「課題提起」した。
◆よりよい社会をつくるために何をするのか
内橋氏はまず、大きく3つの課題があると指摘。それはまず「よりよい社会をつくります」と協同組合はいっているが、「よりよい社会」とは何かということを明らかにしなければならない。
2番目に、その姿に近づかせるために、同じ時代を生きるものとして、どのような信念、思想、明快な思潮を一人ひとりが持ち、運動を巻き起こすこと。
3番目に、そのためには、政治のあり方を含めて何をどう変えるべきを、遠慮なく声をあげること。
つまり、「よりよい社会をつくる」ためには、よりよい社会とは何か、その姿に近づくためにはどのような実践が行われているのか、そのためには、足元にある日本をどう変えていくのか考えなければならないと提起した。
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いまこそ協同組合の使命と力を発揮するときと課題提起する内橋克人国際協同組合年全国実行委代表
◆政治的であることを恐れてはいけない
この3点を掘り下げて、人真似ではない、言葉の羅列ではない、自らの心のうちからわいてくることを、いまの時代のあり方を正すメッセージとして掲げ、それをさらに奮い立たせる。そして、自らが新たな社会を示すときに、政治的であることを恐れてはならない、怯んではならないと強調した。つまり、政治的であってはならないと自らを自戒し、なるべく政治批判をやめておこう、なるべき波風をたてないように恐る恐る運動をしている姿勢こそが、政治的だといえる。
いまの政治に対して口を閉じること自体がその政治を実際には認めることになり、それ自体が極めて政治的であると内橋氏は指摘する。
だから、現在の政治に対しても勇気をもって言葉をあげるべきときにはあげるという賢さをもたなければいけない。そうした態度を協同組合のなかにもってほしいと強調した。
◆協同組合は目的を同じくする「使命共同体」
さらに何よりも「協同の協同」、協同組合同士が連携することで、きわめて機能的にスムースに力をもっていくことができるので、協同の協同を各地域で実現させる、そのことが社会をよくする基本的な大きな力になると信じていると内橋氏はいう。
内橋氏は協同組合とは第3の共同体だと考えている。つまり、第1の共同体は地縁とか血縁による家族とか地域社会。第2の共同体は、会社とか営利を追求する利益共同体である。それに対して第3の共同体は「使命共同体」である。「使命」とはミッションであり、果たすべき役割を果たす、目的を同じくする、使命を同じくする共同体が協同組合だと指摘する。
そうした視点からみるといまの労働組合は利益共同体になってしまったといえる。そして現在の世界は巨大な企業が政治を動かしている。
そうしたなかで人間が人間らしく生きていく社会を誰が回復するのかが問われている。
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内橋代表の話を熱心に聞く参加者
◆基本的な生存を守るFEC自給圏の確立を
よりよい社会をつくるためには、3つの基礎的な条件を自給しなければならない。それは
F:フーズ、食料そして農業
E:エネルギーの自給
C:ケアー、福祉とか介護、コミュニティー
の3つだ。
人間の基本的な生存を守るには、このFEC自給圏を確立しなければならないと自論を述べ、衰退、停滞する日本社会に協同組合の道しるべを明快に示して、協同組合の社会的な役割を、毎日毎日実践を重ねながら、声をあげることを恐れてはいけない。自分が正しいと思うことを人々に伝え、使命と力を発揮して、危機に瀕した日本社会を救ってほしいと結んだ。
◆佐賀県協同組合女性連絡会など4組織が最優秀賞に
協同組合地域貢献コンテスト
その後、IYCを契機に改めて協同組合の存在意義や社会的な役割について論議を深めあうことや、IYCの目的の一つである協同組合の社会的認知度の向上をはかることを目的に実施された「協同組合地域貢献コンテスト」の表彰が行われた。
コンテストには、国内協同組合組織から215件の応募があり、審査員の審査の結果、別掲のように最優秀賞4件、優秀賞が選出され、最優秀賞受賞の4組織が表彰された。
× × ×
その後、小林正弥千葉大学大学院教授をファシリテーターに、シンポジウム「協同組白熱教室」が行われ、壇上には各協同組合の若手職員20数名があがり、協同組合のあり方について意見を述べ、会場からも多くの発言があった。
県域や地域では協同組合間での交流・議論が行なわれているが、全国レベルでもこうした試みが今後も継続されることが大事ではないだろうか。
(写真)
「白熱教室」で意見を述べる若手職員たち
協同組合地域貢献コンテスト
最優秀賞
▽野付漁業協同組合(北海道)
植樹を通じた環境保全活動と生協との産直交流
▽ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン(東京)
ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパンに参画するワーカーズ・コレクティブが各地で展開している実践
▽佐賀県協同組合女性連合会(佐賀)
佐賀県協同組合女性連合会の20年間継続してきた環境測定調査活動
▽生活協同組合コープおきなわ(沖縄)
地域の困りごとを地産地消で解決する「地域おこしプロジェクト
優秀賞
▽京都生協(京都)
「さくらこめたまご」の取組み、「援農隊」の取組み
▽あづみ農協(長野)
くらしの助け合いネットワーク“あんしん”と「生き活き塾」の活動
▽福井県民生協(福井)
地域のつながりを大切に 移動店舗(ハーツ便)の取組み
▽近畿労金(大阪)
「グッドマネーバンク」に向けた近畿ろうきんの共生事業(共生プロジェクト)
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