◆トウモロコシ、大豆粕は史上最高値を更新
日本の配合飼料原料の最大の輸入相手国である米国は、1956年以来の最悪の大干ばつに見舞われ、シカゴ相場が急騰。トウモロコシ、大豆粕の価格はともにこの夏、08年の史上最高値を更新した。
相場の高騰は、欧州金融不安の長期化などにより行き場を失った投機マネーが再び穀物市場に流入しているとの見方もある。
トウモロコシは、6月中旬まで1ブッシェル(約25.4kg)6ドルセント前後だったが、8月21日には史上最高値となる8.31ドルを記録。9月20日現在でも、7.46ドルの高値を付けた。
大豆粕は、中国需要ののびと南米での減産なども手伝い5月上旬から値上がり始め、8月30日に史上最高値となる1トン548ドルを記録。9月20日現在は482ドルと08年を上回っている。
こうした原料価格の高騰を受けて、10〜12月期の配合飼料価格は全畜種平均で1トンあたり6万3250円(推定、農水省調べ)となった。
原料価格が史上最高値をつけたにもかかわらず、配合飼料価格が過去最高だった08年10〜12月期の6万7600円より若干低く抑えられているのは、米国・日本間のパナマックス型海上運賃が1トン50ドル以下で当時に比べて3分の1、為替レートも当時に比べて1ドルあたり約40円の円高になっているためだ。
配合飼料価格急騰などへの激変緩和措置として、国が定めた配合飼料価格安定制度がある。
◆補てん金1トンあたり5450円
これは飼料価格が直近1カ年の平均を上回った時、その差額を補てんするため生産者と飼料メーカーが積み立てる通常補てん基金と、輸入原料価格の値上げが直近1カ年平均の15%以上になった時、その上昇分をカバーして生産者負担を軽減させるため、国と飼料メーカーが積み立てる異常補てん基金の2段階で成り立っている(図参照)。
10〜12月期の補てん金は1トンあたり5450円と値上げ幅より大きく、生産者の実質負担は250円の軽減となる。これは直近1カ年の平均価格が、7〜9月期のそれより安くなったためで、それだけ穀物価格の乱高下が激しくなっていることを示している。
この5450円を満額補てんすると総額327億円になる見込みだ。
このうち、異常補てん基金からいくら補われるかは輸入原料価格が確定する11月半ばに決まる。
◆異常補てん発動基準、2.5%引き下げ
JA全中では、異常補てん基金の発動基準引き下げを要望してきた。なぜなら、通常補てん基金からの拠出を抑制することが生産者負担の軽減につながるからだ。農水省ではこの要請を受けて、緊急支援対策で10〜12月期と13年1〜3月期に限り発動基準を15%から12.5%へと引き下げた。
農水省の試算では、この引き下げにより、異常補てん金からの拠出が40億円ほど増えるという。
ただし、図でも示したように、通常補てん基金の残高はすでに170億円程度しかなく、この措置を受けても資金が枯渇する恐れがある。
さらに、通常補てん基金は08年の飼料価格高騰の際、資金が枯渇し市中銀行などから総額1192億円を借り入れた。この負債がいまだ742億円も残っている。
こうした経緯から、緊急対策で異常補てん基金から通常補てん基金への無利子貸し付けを行うことにしたが、異常補てん基金の残高も310億円しかなく、今後も原料価格の高騰が続けば、制度全体の資金がなくなることも懸念される。
◆原料を小麦に、調達先を南米・東欧に
今回の緊急対策では、こうした価格安定制度での対応以外にも、[1]飼料需給計画の期中改定、[2]飼料穀物備蓄対策事業の運用の弾力化、を行う。
[1]では、飼料メーカーが原料の一部をトウモロコシから小麦へと切り替える動きが加速していることに対応し、飼料需給安定法に基づいて策定している「飼料需給計画」を期中改定し、飼料用小麦の年間輸入予定数量を当初予定の76.4万トンから大幅に増やし121万トンにする。
[2]では、飼料メーカーが原料の調達先を米国から南米や東欧などに切り替える動きに伴い輸送遅延リスクが発生する恐れがあることから、備蓄穀物の貸付限度数量を、前期より25万トン増やして、35万トンに拡大する。
農水省では、畜産・酪農経営の安定のためには輸入飼料から国産飼料への転換が必須だとして、エコフィードの活用や飼料用米の増産などの取り組み強化を強く求めていく考えだ。
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