◆増加する認知症への対応
市民後見人のおおもととなっているのは2000年の介護保険法の施行で始まった「成人後見制度」。認知症や知的障害などの理由で判断能力が十分でない人の財産管理などを行い、被後見人を保護・支援する制度だ。
本人や家族、市町村長などからの申し立てに対し、家庭裁判所が後見人を選定する。これまで後見人には親族のほか、弁護士や社会福祉士といった専門家がなるケースが多かった。しかし、加速する高齢化によって現在300万人いるといわれる認知症患者は2025年には470万人に、独居高齢者は2010年推計の466万人から2025年には673万人に増加すると推定されている。
こういったことから後見人の不足はこの先避けれらない課題であるとして、高齢化社会に対応していくためには第3者を後見人として育成する必要がでてきた。それが今回、「市民後見人」の養成を努力義務に規定する法改正となった背景である。
◆身上監護に高まる需要
成人後見人の役割は被後見人の財産管理のほか、介護施設や介護サービスの利用手続きなど介護保険の契約を行う「身上監護」となるが、今後は身上監護に関わる業務の増大が見込まれる。
「実際ふたをあけてみると財産管理よりも身上監護の支援が大部分になっている」(厚労省・老健局高齢者支援課)といい、見守り的な役割を含む支援の重要性が高まっているといえる。
こういった点からすれば、これまで女性組織や助け合い組織などを中心として高齢者のくらしを支えてきたJAの活動の延長にあるのが「市民後見人」に求められている役割ともいえるだろう。
また、今瀬氏は「資産管理や金融、相続などに関わる事業を行うJAとして、市民後見人に対応できる職員をおく必要が出てくる」との考えも述べ、くらしの活動を担う組合員と地域に根ざし総合事業を行うJA役職員も研修に参加するなど「市民後見人」についての認識を深めていくことが今後必要となりそうだ。
(表)厚労省ホームページより
◆自治体と連携した取り組みとして
国は23年度から市民後見人の養成を推進するための補助事業として「市民後見推進事業」を導入しており、同事業を活用する自治体は昨年の37市区町から今年は87市区町に増えており、独自のカリキュラムで研修を開くなど、今年4月の改正法施行とあわせて市民後見人の養成に向けた取り組みが各自治体で動き出している。
JAは第26回大会で決議した「地域くらし戦略」の中で、地域の中核となり行政や地域の産学官・NPOとの協力で「JA版地域包括ケアシステム」の構築をめざしていくことを決めた。市民後見人の育成に向けた全国的な取り組みは今年から本格的に始まったところだが、これが自治体と連携した取り組みのひとつの例となることがこの分科会の中で示された。
(表)家庭裁判所「成人後見制度―詳しく知っていただくために―」のパンフレットより
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