◆機能の選択と再編を
厚生連病院は全国で113(24年4月1日)。人口10万人未満の地域で運営している病院が約6割を占めており、農村地域医療を担っている。市町村内で唯一の医療機関という病院は21、自治体病院の撤退や行政からの要請を受けて厚生連が開設、運営している病院も10あるなど、地域に果たす役割は大きい。健康診断活動に力を入れてきたのも大きな特徴だ。
しかし、今回の長期ビジョンでは「人口減少や人的資源に限りがあることからも、厚生連病院・施設においても集約化は避けられない」との厳しい認識を示した。そのうえで都道府県が策定する地域医療計画や介護保険事業計画を見ながら「それぞれの病院・施設にどのような問題があり、解決に向けて何をふまえていくかが課題となる」とした。
具体的には、少子高齢化の進展で「介護サービスの提供体制の構築・強化が必要」とする一方、診療科の特化や急性期病院か、療養型かなどの医療機能の選択と再編、さらに施設機能の縮小、高齢化施設への転換までを検討する必要があるとしている。さらに、どうしても困難な場合には「統合・廃止も視野に入れる」ことも明記した。
◆JAと連携した福祉サービス対応も
個別課題としては▽医師・看護師確保、▽健康増進事業の展開、▽スケールメリットを発揮した材料費の削減スキームの構築によるコスト削減がある。とくに重視する対応が福祉サービスだ。
これまで各厚生連は、JAが実施する介護保険事業への支援と協力を行うなかで、医学的管理を必要とする居宅サービスや介護老人保健施設、特別養護老人ホームの提供というかたちによる施設サービスを提供することにし、JAと連携を図りその充実をめざしてきた。
ただし、JAと厚生連では法制度で営むことができる事業の制限に違いがある。たとえばサービス付き高齢者向け住宅や障害者福祉への対応などには応えられないケースがある。そのため今後は、たとえばサービス付き高齢者向け住宅などの運営ができるよう、医療・保健・高齢者福祉の一体的サービスを推進するための事業範囲を広げる法改正も働きかけていく方針だ。
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